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大相撲初場所、声出し応援が解禁 「もぎり」も復活! 展望や運営の変化を芝田山親方が語る

飯塚さきスポーツライター
インタビューに応えていただいた芝田山親方(写真:日本相撲協会提供)

1月8日からスタートした大相撲初場所。新年最初の本場所は、新型コロナウイルス対策による規制も徐々に緩和されながら開催されている。土俵の見どころや運営の変化について、広報部長である元横綱・大乃国の芝田山親方に話を伺った。

今場所も「みんなにチャンスがある」

縁起物の初場所とあって、初日から両国国技館は大賑わい。コロナ前の2020年初場所以来、3年ぶりに満員御礼の垂れ幕が下がった。2022年はすべての場所で優勝力士が異なるという異例の1年となったが、今年はどんな年になるだろうか。芝田山親方も「誰が優勝してもまったくおかしくない」と語る。

「今場所に限っては、横綱・照ノ富士が休場。大関も貴景勝一人と寂しい限りですが、逆に言えば誰にでもチャンスがある。名前を挙げればキリがないけど、貴景勝を筆頭に新三役の若元春、琴ノ若、大関復帰を狙う高安、関脇の若隆景と豊昇龍。正代と御嶽海だってもう一度頑張らなきゃいけません。玉鷲もまだまだ元気だし、霧馬山も面白い。幕内は6割5分くらいの人が優勝候補で、そのなかで序盤の第1集団に誰が入るか。そしてそこから終盤にかけて誰が抜け出せるか。力量は横一線。精神面の戦いで、調子のいい力士が抜け出してくるでしょう」

親方が新入幕になったときは、「これで自分は幕内最高優勝ができる権利をもらえたんだ」と思ったのだそう。いまの幕内力士たちもきっと、全員がその夢を目標にして土俵に立っているはずだ。

一方で、昨今の力士たちは親方の現役時代に比べて稽古量が減っているとも指摘。稽古量の減少がケガにつながるとして、親方は警鐘を鳴らしている。

「昔は親方が檄を飛ばして、無理やりにでも稽古させられていましたが、いまはそういう時代じゃない。だからこそ、力士たちの自主性が問われています。教える側からしたら、いかに自主性をもたせるか。角界も、まさにそういったことを考えるべきときに来ているんだと思います」

掛け声が戻った Withコロナでも楽しい観戦を

観戦のルールに関しては新たな動きがあった。引き続き慎重に新型コロナウイルス対策を行いながらも、徐々に規制が緩和されている。今場所からは、マスク着用の上での声出し応援が解禁。四股名を呼んだり、「○○、がんばれ!」といった応援ができるようになった。スポーツ庁との会議をもってこうした方針が決定されたというが、これはファンにとってうれしいだけでなく、スポーツ界全体にとっても明るい変化である。

「もちろん、コロナが完全に収束したわけではありません。十分な感染対策を行いながら、“Withコロナ”でもファンの皆さんの安心安全な相撲観戦を楽しんでいただけるように我々も尽力していく所存です」(芝田山親方)

会場入り口では、親方衆による「もぎり」も復活。かつて土俵を沸かせた親方衆にチケットを切ってもらえるのは、昔からある大相撲ならではのファンサービスだ。

芝田山親方はというと、自身の名を冠した「スイーツ親方の店」で自らスイーツを売っている。親方からスイーツを買うために並ぶ人だけでなく、親方の写真を撮る人だかりが生まれるほどの人気ぶりだ。

会場で自らスイーツを販売する芝田山親方(写真:筆者撮影)
会場で自らスイーツを販売する芝田山親方(写真:筆者撮影)

また、コロナ禍で需要が高まった通販サイトは今年から新しいものを立ち上げた。その名も「SuMALL(すも~る)」。こうして毎場所新商品や新企画を練り、具現化していくのも広報部の仕事の一端である。協会員の尽力により、会場では多くのファンが国技館グルメやグッズを見て、買って楽しむ姿があちこちで見受けられた。

徐々に日常を取り戻しつつある大相撲。会場に足を運べば、楽しめることも増えてきた。一方で、芝田山親方も「一番は土俵の充実」と強調するように、今場所を盛り上げる力士は誰なのか、序盤から予想しながら土俵を見守っていこう。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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