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元幕内・蒼国来の断髪式はアットホームな雰囲気が魅力「荒汐部屋全体での断髪式にしたい」

飯塚さきスポーツライター
元幕内・蒼国来の荒汐親方(写真:日本相撲協会提供)

10月1日(土)の秀ノ山親方(元大関・琴奨菊)に続き、10月2日(日)に断髪式を控えるのは、元幕内・蒼国来の荒汐親方。中国・内モンゴル自治区出身初、荒汐部屋初の関取として活躍。決して大きくはない体で、動きのよさと右四つを中心とした多彩な相撲で見る者を魅了した。

2020年3月に引退し、史上初めて年寄襲名と同時に部屋持ち親方となった荒汐親方。常に穏やかで、周囲への優しさにあふれる親方が行う断髪式は、どんな内容になるのだろうか。断髪式への思いを伺った。

断髪式には部屋の現役力士たちも全面協力

中国内モンゴル自治区から角界の門をたたいた荒汐親方。2003年夏に来日してから、2020年1月場所の土俵を最後に3月で引退するまで、約17年間現役を務めた。

「言葉や文化も知らないなかで、よくここまでやれました。巡り会ったのがいい人々ばかりだったので、本当に感謝しています。引退して2年以上経ちますが、自分なりには精一杯やり切ったと思っています。いまは親方の仕事にも慣れてきて、コロナ禍でできる限りのことをしています」

先代の荒汐親方(元小結・大豊)の定年退職と時を同じくして引退し、年寄荒汐襲名と同時に部屋持ち親方になった。どんな思いで断髪式に臨むのか。

「引退していきなり部屋持ちになり、いいことも大変なこともありました。今回は私の引退相撲なんだけど、自分ばっかりじゃない、荒汐部屋全体でやれたらいいなと思っています。いままで相撲を見たことのないお客さんも多いので、荒汐部屋はじめ大相撲に興味をもってもらえたらと考えています」

具体的なプログラムについては、段階的に公開し、10月2日までにすべてを公表予定。引退相撲のホームページや部屋のホームページ等で発信していく。現段階で公表できるのは、「私個人が土俵に上がるのは、断髪と最後の挨拶だけ。現役力士たちにも協力してもらい、部屋全体で行う花相撲にしたい」ということ。グッズの目玉は今回のために作った反物で、これも荒汐部屋を全面に押し出したデザインになっている。引退相撲を通して、親方の部屋への強い思いを感じられる。

自身の髷は「役目の象徴」

引退し、断髪式を控えたいま、自身の髷への思いはどうなのか。「この髷は、いろんな意味で重かった」と語る。その真意は。

「内モンゴル自治区初の力士として現役を全うした私の役目が、親方という次の役目に引き渡されるような感覚です。力士になった私の人生が、次の世代につながっていく。大相撲の歴史1500年のうち、力士・親方として私が務めるのは40~50年ほどですが、その役目をきちんと果たせるように、いまは指導者としての責任の重みも同時に感じています」

ただ、現役生活はもう終わったので、自身の髷に対する寂しさはない。「それよりも、いま髷をつけている力士たちに、私が教えられることは一生懸命教えていきたいなという気持ちです」と、すでに前を向く。

(写真:日本相撲協会提供)
(写真:日本相撲協会提供)

新しいヘアスタイルについて特にこだわりはないが、先代がよくお世話になっていた床屋さんに整髪をお願いしたそうだ。コロナ禍で断髪式を開催した親方衆を見て、自身も気を引き締めた。

「鋏を入れてくれるのは、いままでお世話になった方々と、故郷からも50~60人来てくれますが、ほかの親方衆みたいに芸能人や政治家が来るわけではありません。でも、内モンゴルから来てくれる人や、私がお世話になった皆さんが来てくれることを、本当にうれしく思っています」

常に自分のことより周りのことを最優先に考えて動く親方。だからこそ、親方の断髪式にはきっと多くの人が足を運び、そのアットホームな式を温かい気持ちで見守るに違いない。10月2日は、まるで親方のように穏やかで優しい断髪式が、多くの来場者を待っている。

断髪式の詳細(開催日時やチケット情報)

蒼国来引退相撲事務局

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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