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大荒れの夏場所 優勝するのは横綱・照ノ富士か、トップタイの隆の勝か、それとも――?

飯塚さきスポーツライター
9日目 照ノ富士(右)は翔猿をきめ出しで破る(写真:日刊スポーツ/アフロ)

13日目終了の時点で、優勝候補者が3敗の3人と4敗の4人という大混戦を極めている大相撲夏場所。ただ、4敗で追いかけるうちの一人であった宇良が、13日目の取組で足首を痛め、無念の休場が発表された。

そして迎えた14日目。3敗は、横綱・照ノ富士に加え、平幕の隆の勝と佐田の海。4敗で追うのは、小結・大栄翔と、霧馬山、碧山の3人だ。果たして、誰が千秋楽まで望みをつなぐか、が注目された。

3敗を守った隆の勝 佐田の海と大栄翔も望みつなぐ

3敗の隆の勝は霧馬山と対戦。前日の若隆景戦では体が硬くなってしまったが、気持ちを立て直してきた。立ち合いで当たると、両者四つに組む。霧馬山が左のまわしを探ろうとしながら外掛けを仕掛けるも、バランスを崩して右手を土俵についてしまった。隆の勝が星を伸ばし、霧馬山は残念ながら5敗となって優勝争いから脱落。解説を務めていた部屋付きの鶴竜親方は、「余計なことをした」と厳しい寸評であった。

4敗の碧山は、勝ち越しをかけて気合の乗った豊昇龍に惜敗。こちらもあっけなく脱落してしまった。

この日まで3敗で、大きな期待を背負っていた35歳のベテラン佐田の海は、両者頭で激しく当たる。大栄翔が得意の突きを繰り出し、落ち着いた様子で引き落とすと、それが決まってしまった。佐田の海は、惜しくもこれで4敗に後退。しかし、両者共に今日の千秋楽に望みをつないだ。

盤石な強さで千秋楽に臨む横綱

御嶽海 - 貴景勝の大関対決は、御嶽海が敗れ、負け越しが決まってしまった。もし今日、貴景勝が正代に負けてしまうと、3大関が皆勤で全員負け越しという、不名誉ながら非常に珍しい事態となる。

そうして結びの一番。横綱・照ノ富士は、すでに負け越しが決まっている大関・正代と対戦。立ち合いから強くぶつかり、横綱が左の前まわしを取ると、そのまま万全の体勢で正代を土俵外に寄り切り。盤石な相撲で力の差を見せつけた。

ついに迎えた千秋楽。3敗の照ノ富士・隆の勝が共に敗れると、4敗の大栄翔・佐田の海にもチャンスが出てくるが、現時点では照ノ富士・隆の勝の2人が有利であると見ていいだろう。そのなかでも、もちろん本命は横綱だ。序盤戦に比べ、内容も力強さも右肩上がりになってきており、本来の強さが見られる。今日の結びも、安定した相撲でしっかり締めてくれるのではないだろうか。

その上で、隆の勝が本割で勝って優勝決定戦を演じてくれるなら、さらに面白い。隆の勝は本割で横綱を下しているのだから、自信をもって臨んでほしい。そんな展開にも期待しつつ、今場所最後の土俵の行方を見守ろう。

<参考>優勝争いの行方

▽11勝3敗 照ノ富士 隆の勝

▽10勝4敗 大栄翔 佐田の海

・照ノ富士が御嶽海に〇 隆の勝が佐田の海に● → 照ノ富士の優勝決定

・照ノ富士が御嶽海に● 隆の勝が佐田の海に〇 → 隆の勝の優勝決定

・照ノ富士が御嶽海に〇 隆の勝が佐田の海に〇 → 照ノ富士、隆の勝による優勝決定戦

・照ノ富士が御嶽海に● 隆の勝が佐田の海に● 大栄翔が志摩ノ海に〇 → 照ノ富士、隆の勝、大栄翔、佐田の海による優勝決定戦

・照ノ富士が御嶽海に● 隆の勝が佐田の海に● 大栄翔が志摩ノ海に● → 照ノ富士、隆の勝、佐田の海による優勝決定戦

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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