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「また来たいと思ってもらえる相撲を」元関脇・若の里の西岩親方が語る五月場所の展望と広報の仕事

飯塚さきスポーツライター
今年度から広報部に配属された元関脇・若の里の西岩親方(写真提供:日本相撲協会)

5月8日から始まった大相撲夏場所。2日目を終えて三役力士に全勝なしという大波乱だが、だからこそその行方は見逃せない。

今回ご登場いただくのは、今年度から新しく日本相撲協会広報部に配属された元関脇・若の里の西岩親方。国技館観戦案内や今場所の見どころ、さらには新職務での仕事ぶりについて話を伺った。

コロナ禍で広がるファンサービスとイベント

協会では、今場所から来場者全員が参加できる「ガラポン大抽選会」や、初場所から引き続き親方衆によるトークショーの開催など、さまざまな工夫を試みている。ただし、西岩親方は「相撲を見てもらうことが最優先」と強調。「力士たちの奮闘を見て、お客さんにまた来たいなと思ってもらえることが一番です」と語る。

そんななかで、新たな取り組みやイベントも開催する。ひとつは、オンラインのテスト形式による「大相撲検定」。大相撲にまつわるさまざまな問題が出されるもので、検定を受けるとグッズのプレゼントもあるのだそう。期間は6月12~26日。興味がある方はホームページをご参照いただきたい。

もうひとつが、主にファンクラブ会員を対象とした「大相撲ファン感謝祭2022」。こちらは10月6・7日に開催予定。詳細は未定だが、コロナ禍を耐え忍んできたファンに喜んでもらえるよう、一丸となって準備を進めているという。

(バナー:日本相撲協会提供)
(バナー:日本相撲協会提供)

今場所の期待は若隆景 ”新米広報”の親方が語る展望

広報部に配属されて約1か月。西岩親方は、これまで審判部にいたため、まったく違う職種に就いた気持ちでいるという。

「現役を含め、いままでは現場仕事でしたが、広報は現場から離れたデスクワークが主です。マスコミ対応や、YouTubeなどSNSでの発信をしています。まだまだわからないことだらけで、皆さんに教えていただきながらスタートしたという感じです。執行部の会議など、運営に関してはいままで知らなかったことが多く、勉強になっています。ただ、現場から離れて少し寂しい気持ちもあります。今回審判部に入った稀勢の里(二所ノ関親方)とは、一緒に審判をしてみたかったですね。アドバイスは特にないですが、彼なら柔軟に対応できるでしょう」

朝稽古が終わると、月~金で毎日国技館に出勤する。これだけでも、まるでサラリーマンになったようで新鮮なのだとか。少なくとも2年はこの職務を続ける。

では、今場所の土俵に目を向けよう。西岩親方に展望を伺うと、やはり真っ先に名が挙がったのは、先場所初優勝を飾った関脇・若隆景だった。

「小さい人が大きい人を倒すのは、大相撲の醍醐味です。その醍醐味を体現している力士だと思いますね。お客さんに喜んでもらえるような力士になってもらいたい。顔もいいですし、インタビューを聞いていても、寡黙で“昭和感”があり、僕好みなんですよね(笑)。大関といわず、横綱にまでなってほしいです」

さらに、琴ノ若、王鵬という若手の台頭にも期待するが、親方は先場所惜しくも決定戦で敗れた高安に発破をかける。

「彼は、自分の付け人をしたこともある直属の後輩なので、先場所悔しい思いをした分、今場所こそはと思いますね。残念ながら黒星スタートですが、先場所の相撲を見ると、大関の頃の相撲に戻りつつあるなと感じています。精神的な自信が相撲に表れていると思うので、期待しています」

今場所は、まだまだ始まったばかり。西岩親方が「ファンサービスとともに大事」と語る「土俵の充実」を体現する、力士たちの奮闘が続いていく。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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