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「絶対泣くと思うんですよ」 断髪式を控える元関脇・豊ノ島の井筒親方インタビュー

飯塚さきスポーツライター
元関脇・豊ノ島の井筒親方(写真:日本相撲協会提供)

今年に入ってから、新型コロナウイルスの影響で延期になっていた断髪式が立て続けに行われている。元大関・豪栄道(武隈親方)らに続いて、5月末に断髪式を控えているのが、元関脇・豊ノ島の井筒親方と、元関脇・安美錦の安治川親方だ。元人気力士の断髪式とあって、注目度は高い。こちらでは、井筒親方のインタビューをお届けする。

指導者になって柔軟に変化した考え方

2020年3月。無観客となった場所で、土俵に別れを告げた井筒親方。以来、時津風部屋の部屋付き親方として指導に当たっている。現役力士から指導者となり、その責任感の違いを感じていると話す。

「現役力士は、やらなきゃ結果が出ないだけですが、指導者は結果を残してあげないといけない責任があります。指導者になって難しいなと思うのは、指導に正解がないこと。自分の言うことが絶対正しいわけではないし、その子に合っているかは正直わかりません。うちの部屋には、師匠を含め親方が4人いて、4人が違うことを言うこともありますよね。でも、全部間違いでも正解でもないのかもしれない。だからこそ、まずはすべて素直に受け止めて、そこから自分のなかで必要な要素を組み立てることが大事になってきます」

親方になって丸2年。指導していくなかで、徐々に自身の考え方も変化してきたという。

「例えば、三段目の子が序ノ口の子に指導しているとします。昔は、正直『お前だって三段目なのに、何がわかるの』と思っていました。いま思えば、昔は自分の考えだけが正しいと思って、押し付けていたんですね。ところが、もしかしたらこの子は、力士としては三段目でも、実は指導の面で長けているのかもしれないと思うようになったんです。だから、そういうときは『いまどんなことアドバイスしていたの』と、三段目の子が言ったこともちゃんと聞いて、取り入れようとしています。それが昔と変わったところです。明らかに違うことを言っていたら違うよと言ってあげなきゃいけないし、そんな見方もあるのかと、自分が勉強になることもある。そういう考え方ができるようになりました」

18歳で入門し、人生で相撲協会にいる期間のほうが長くなった。これからは親方として角界を盛り上げ、協会に恩返しをしていきたいという。

工夫を凝らす断髪式 「絶対泣くと思う」

断髪式は、5月28日(土)に予定されている。今年になって断髪式を行った親方衆は、そろって晴れ晴れした表情をしていたが、「自分は絶対泣くと思うんですよ。涙もろいんで」と井筒親方。奥様と二人三脚で日々準備を進めているという。

断髪後の髪型についても伺った。

「すごく天パなんで、毛先で遊んじゃおうかなって(笑)。天パを逆に生かせたらいいなと思います。ずっと髷を結っていたせいで、襟足が上に引っ張られてしまうので、襟足は刈り上げたいかな」

当日、コロナの影響の行方はわからないが、だからこそ来場者には存分に楽しんでもらえるよう、さまざまな工夫を凝らす。

「対戦相手はシークレットですが、”最後の一番”をやろうと思っています。断髪式も、全方位の皆さんが見られるように、回転式で行います。たしか、豊真将関が最初にやったんですよね。あとは、お土産など、グッズも豊富に出す予定です」

明るくひょうきんなパブリックイメージのある親方。その最後の晴れ姿、これまでの熱い思いがこみ上げる姿を、多くのファンに見届けてほしいと思う。

断髪式の開催日時やチケット情報など

豊ノ島引退相撲事務局(チケット発売中)

おまけ

インタビュー前

「今日もすごく忙しくて、たった2時間半くらいしか時間取れなかったので、なるべく巻きでお願いしますね」

30分間のインタビュー後

「あれ、まだあと2時間くらいありますけど、もう大丈夫ですか?まだ何か聞きたいことありませんか?大丈夫です?あ、そうですか(笑)」

(写真:日本相撲協会提供)
(写真:日本相撲協会提供)

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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