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大相撲が帰ってきた大阪のいま──富士ヶ根親方が語る“荒れる春場所”の見どころ

飯塚さきスポーツライター
話を伺った元小結・大善の富士ヶ根親方(写真:日本相撲協会提供)

大阪の地に、3年ぶりの賑わいが戻ってきた。町を歩けば、相撲観戦を楽しみにする人々の浮足立った会話があちこちから聞こえてくる。

新型コロナウイルスの影響により、2年前は無観客開催、昨年は東京での開催を余儀なくされた大相撲三月場所。今回は、春の風物詩を待ち望んでいた一人でもある、大阪出身の元小結・大善の富士ヶ根親方に、今場所の見どころを伺った。

大阪場所ならではの開催にあたる工夫

「実は実家も、生まれた病院も、この体育館から近いんですよ。生まれた町に恩返ししたいなという気持ちです」

そう語る富士ヶ根親方。コロナで大きな打撃を受け続けているが、お客さんに安全に楽しんでもらいたいからこそ、感染症対策は万全だと強調する。

「もちろん、毎場所全力で対策していますし、大阪場所も例外ではありません。専門家の指導の下、特に協会員には厳しすぎるくらい徹底していますので、お客様にはぜひ安心して来ていただきたいと思っています」

会場入り口にはフォトスポットも多数設置(写真:筆者撮影)
会場入り口にはフォトスポットも多数設置(写真:筆者撮影)

大阪ならではの工夫もある。国技館とは違い、水分補給以外の館内飲食は基本的に禁止。その代わり、15時までは再入退場が何度でも可能になっているため、朝から足を運ぶお客さんは、途中で外にお昼を食べに出ることができる。

また、会場入り口に協会公式グッズの売店も設置。チケットが買えなかった人も、グッズを見たり写真を撮ったりして、「相撲観戦気分」を味わうことが可能だ。町を挙げて大相撲を盛り上げる工夫がなされている。

富士ヶ根親方が語る 今場所の見どころ

では、土俵に目を向けてみよう。富士ヶ根親方の今場所の展望を伺った。

「今場所はなんと言っても新大関の御嶽海ですね。巻き返しを狙う照ノ富士に、相撲だけではなく心も強くなって帰ってきた阿炎。そこに、豊昇龍といった若手がどれだけ食らいついてきてくれるか。あとは、やはり地元・大阪出身力士の活躍です。大関・貴景勝を筆頭に、宇良も場所を盛り上げてくれるでしょう」

ちなみに、親方が現役の頃は、やはり声援の多い大阪場所が、一番力が出たのだろうか。

「いえ、私は逆にプレッシャーでダメでした(笑)。でも、地元だから頑張れということではなく、本当に一人一人みんなに頑張ってもらいたいと思っています。全員が全力を出して、まさに“土俵の充実”を実現してほしいですね」

「当日券売場」も設けられている(写真:筆者撮影)
「当日券売場」も設けられている(写真:筆者撮影)

最後に、大阪での観戦を検討するファンに、親方からメッセージをいただいた。

「大阪場所は、国技館よりも会場がこぢんまりとしていて、土俵から客席の距離が近いのが売りです。一番お手頃な席は3500円で買えます。朝から夕方まで楽しんでいただけますので、3年ぶりの大阪場所にぜひいらしていただきたいと思います」

横綱として初めて大阪の土俵に立つ照ノ富士をはじめ、新大関・御嶽海、ご当地の貴景勝、宇良など、土俵は見どころ満載。地元の皆さんにも、“荒れる春場所”を、生で体感してみていただきたい。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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