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鶴竜親方が、進退をかける白鵬にエール「横綱とはこういうものだと見せてほしい」

飯塚さきスポーツライター
写真:ZUMA Press/アフロ

7月4日から始まる名古屋場所で、進退をかけて出場する横綱・白鵬。ファンからも大きな注目が集まっている。そんな白鵬と、これまで同じ横綱として切磋琢磨した鶴竜親方。先に現役を退いたいま、親方として、白鵬をどう見ているのか。同年代ながら「憧れ」だったという大横綱へ、エールを送る。

白鵬のすごさは「弱点がないところ」

――白鵬関が、自身の進退をかけて臨む来場所。鶴竜親方は、どのようなところに注目していますか。

「ケガの状態ですね。逆に、ケガさえ回復すれば、まだまだ全然勝てると思います。自分にだってそういう自信はありましたからね。技術面を含め、すべてにおいて、おそらく本人も勝てると思っていますよ。これだけ結果を出してきた人ですから」

――ケガの具合は、初日の様子を見ればだいたいわかるのでしょうか。

「はい。まず、土俵入りがありますから、そこでどれだけ四股が踏めるか。取組を見る前に、所作でだいたいわかるでしょう」

――親方から見る、白鵬関のすごさはどんなところですか。

「弱点が少ないところです。どんな相撲でも取れるからね。あとはやっぱり経験値。勝ち方を知っているので、ここぞというときは必ず勝っています。だからあれだけ優勝できるんだと思います」

――これだけ長く第一線にい続けるのは、並大抵のことではありませんよね。

「そうですね。白鵬関は、もう丸14年も綱を張っているので、モチベーションの保ち方なんかは十分わかっているでしょう。私が言うことではありませんが、結局は自分との戦いなので、最後は自分が納得するかどうかだと思います」

――もう相手ではなく、自分との戦いなんですね。

「はたから見たらね。これだけの成績を残して、もう十分だろうとみんなは思っているかもしれないけど、でもやっぱり最後は自分で納得することが一番だと思います」

高い目標として常に目の前にいてくれた

――これまで、お二人にはどんな思い出がありますか。

「年は同年代ですが、向こうのほうがはるかに出世は早かったので、一生懸命追いかけていたという感じです。まだ自分が幕下のとき、関脇くらいだった白鵬関に、稽古で胸を出してもらったこともあります。すごくいい経験になりました」

――印象的な一番は。

「ずっと勝てなかったから、白鵬関にとって、自分は取りやすかったんだろうなと思います。若いときは、動きでなんとかしようとしていたし、どんな相撲でも取れるようにしたいと考えて頑張っていましたが、いつもあと一歩及ばず。そういう意味では、長かったけど、初めて勝ったときはうれしかったですね。向こうは眼中になかったかもしれないけれど、高い目標として、常に目の前にいてくれたから、少しでも近付けるようにっていう気持ちでやっていました。そういう気持ちは大事です」

――土俵の外での思い出はありますか。

「実はそんなに会うことはなかったなと思います。もちろん、巡業中や、モンゴルの国のイベントやお祭りで一緒になることはありました。一緒にバスケやバレーをやったりね。でも、そういうときにしか会うことはなかったです」

来場所の白鵬へエール「期待感しかない」

――では最後に、次の場所に向けて、白鵬関へのエールをお願いします。

「精神的に『もういいか』って思っちゃうと、力が出ないんじゃないかなと思います。というのも、現状に満足したら、何事も終わりだと思うんです。引き際が大事ってよく言われますが、そんなの狙ってできることではありません。それは突然、ふっと気持ちが切れた瞬間です。だからこそ来場所は、横綱とはこういうものだ! というのを見せてほしい。そういう期待感しかないですね。3月場所も、あれだけ膝が悪いのに、出た取組は2番とも勝ったわけですから。本人としても、ケガが治って体の状態さえよければ勝てると思っているはずなので、本当に期待しています」

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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