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声援ない静かな土俵はどんな雰囲気に? 大相撲春場所「無観客開催」3つのポイント

飯塚さきスポーツライター
(写真:アフロ)

連日報道されている通り、8日から始まる大相撲春場所は、コロナウイルスの影響により無観客での開催が決定している。訪れるのを楽しみにしていた大阪のファンにとっては非常に残念ではあるが、テレビやネットを通してぜひ多くの人に応援していただきたい。そこで、個人的に注目したい、無観客での大相撲の見どころを、妄想を膨らませながら紹介していこうと思う。

注目ポイントその1:音

まず、誰もが注目するであろうポイントは、ずばりではないだろうか。野球の無観客試合においても、ボールがミットに収まる音やバットに当たる音などが、より鮮明に聞こえていた。観客の声援がない分、仕切りの最中にまわしを叩く音、立ち合いでぶつかる「ゴンッ」「ガツッ」という激しい音、取組が長くなってきたときの力士たちの息遣いなど、吊り屋根裏のマイクがさまざまな音を拾って届けてくれるような気がする。

そうなると、もしかするとラジオも面白いかもしれない。アナウンサーの心地よい声に乗せて、現場での臨場感がダイレクトに伝わってくるのではないだろうか。今場所は一度、あえてラジオをつけてみようかな。

注目ポイントその2:力士の表情

もう一つは、異様な空気感のなか取組に臨まねばならぬ力士たちの表情。彼らにとって、声援のないしんとした会場で相撲を取ることは、精神的に大きな負担としてのしかかるに違いない。緊張で普段よりも顔が強張ったり、不安げな色を浮かべたりする者もいるかもしれない。それを思うと大変気の毒だが、いかにその状況下で集中し、力を出し切るか。特に上位陣においては、トップアスリートならではのプロ意識と、その表情にも注目したい。

注目ポイントその3:所作などの変化

最後のポイントは、所作。感染を避けるために、ひしゃくに口をつけずに形だけ行う”エア力水”がニュースで話題になったが、いつもの癖で間違えてつけてしまったなど、序盤はそんなミスもあるかもしれない。そのほかにも、普段と状況が異なることによって、力士たちの所作にも違いが出るのかどうか、着目しておきたい。

例えば、仕切り。静かななかでむしろ集中力が高まり、お互いの息が合った場合、もしかしたら時間いっぱいを待たずして立ち合う、なんていう場面も出てくるかもしれない。昔はたまに時間前に立つこともあったが、近年ではほとんど見られなくなった。いつもと違う環境下だからこそ、そんな稀なことも起こるのではないかと、密かに期待しながら見守りたいと思う。

そのほかにも、テレビの解説者やアナウンサーがどんなことを話すのか、静かな土俵入りはどんな雰囲気になるのか、勝利者インタビューは実施するのかなどなど、思いを巡らせ始めるときりがないが、せっかく場所が開催されるのだ。状況を悲観するのではなく、いつもと違う雰囲気すらも全部ひっくるめて、この異例の本場所を見守ろうではないか。マイナス要素を逆手にとって、相撲人気がさらに高まりますように!

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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