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バイデン氏の“記憶の衰え”を示す動画、320万回超表示 一般教書演説で高齢懸念払拭も失言続く

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 予想されていた通り、バイデン氏とトランプ氏が、今年の大統領選で再対決することとなった。

 両候補とも高齢問題が懸念されているが、バイデン氏は、先日行った一般教書演説で、年齢を感じさせない力強さを示したとリベラル派を中心に高評価された。しかし、この演説は、実際のところ、どれくらい米国民のバイデン氏に対する見方に影響を与えたのか?

一般教書演説の効果なし

 Yahoo News/YouGovが一般教書演説後の3月9日〜11日に、1,482人の米国成人を対象に行った世論調査によると、演説の前と後とでは、バイデン氏に対する評価に変化が見られない。1月下旬の世論調査で「今、2024大統領選が行われたら、誰に投票するか?」という質問に対して、回答者の45%がトランプ氏、回答者の44%がバイデン氏と答えたのに対し、演説後の調査での同じ質問では、回答者の46%がトランプ氏、回答者の44%がバイデン氏と回答という結果となり、一般教書演説の効果は薄かったことがわかる。

 「バイデン氏が次期大統領を務めるのに適している」と答えた回答者はわずか29%で、1月の世論調査の29%から変わっていない。また、回答者の51%は依然として、バイデン氏の年齢が「大統領としての適性」に影響を与える「大きな問題」であると述べており、これも1月から変わっていない。

 「この演説により、バイデン氏が大統領により適していると思ったか」との質問に対し、回答者の32%がより適任だと思った、35%があまり適任ではないと思ったと回答、28%は適性に関する考えには変化がなかったと答えている。

 また、一般教書演説やそれに関するニュースを見た米国民のうち、バイデン氏が予想していたほどは老けていないように見えたと答えたのは17%しかいなかったのに対し、51%は予想していたのと同じくらい老けて見えたと答え、24%は予想していたよりも老けているように見えたと回答、歳相応か歳より老けて見えたとの回答が大半となった。

私を議会に送って

 一般教書演説の後も失言は続いている。ペンシルべニア州デラウェア郡で行った演説でバイデン氏は聴衆にこう訴えた。

「ペンシルべニアの皆さんにメッセージがあります。私を議会に送って下さい」

 この発言では、“議会に送って”というのはおかしいとの指摘がされた。確かに、バイデン氏が議員に立候補しているのであれば、そう訴えるのはおかしくないが、同氏は大統領候補に立候補しているのであるから、「オーヴァル・オフィス(大統領執務室)に送って下さい」というのが適切な表現だろう。バイデン氏は2008年に副大統領に就任するまで、議会でデラウェア郡を代表する上院議員を6期務めていたので、混乱してしまったのかもしれない。

 また、同じ演説でした以下の発言も問題視された。

「われわれは財政赤字を削減した。ドナルド・トランプ政権時代よりも、歴代のどの大統領よりもより国債を増やした」

 アメリカの財政赤字は拡大傾向にある。2023会計年度の赤字額は前年度比23%増の1兆6950億ドルに上り、コロナ禍の2020、2021年度を除けば過去最大となった。また、国債を増やしたと言及したことについては、「バイデン氏はうっかり本当のことを言ってしまったんだ」「彼が本当のことを言うのは、うっかりした時だけだ」と意図せずに出てしまったバイデン氏の失言だと捉えられた。

 また、2021年1月6日に起きた議事堂暴動についても、7月6日に起きたと言い間違えて、正している。

記憶の衰えを示す動画

 バイデン氏の私邸などで機密文書が見つかった事件の捜査をしたロバート・ハー元特別検察官は、先日、バイデン氏の“記憶の衰え”を理由に同氏を有罪にするのは難しいとする報告書を出したが、12日、下院司法委員会の公聴会に出席し、バイデン氏の記憶力に対する評価は「正確で公平」と証言した。

 そんなハー氏の発言を裏付ける動画(上)を、共和党全国委員会が運営している「共和党全国委員会リサーチ」は“X”に投稿しており、これまでに320万回以上表示されている。動画には、最後までセンテンスを終えることができなかったり、言葉につまずいたのをカバーするかのようにAnyway(とにかく)と言ったり、口籠ったり、次の言葉が出てこずにまごつくバイデン氏の様子が映し出されている。確かに、この様子を見たら、米国民は不安感を抱くのではないか。

 民主党大統領候補指名が確定したバイデン氏だが、高齢問題に対するチャレンジは、どこまでも続きそうだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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