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“プーチンの犬”ロシア前大統領が戦慄の予言「米国は核により、9.11のような攻撃を受けるだろう」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
初の「対日戦勝記念日」、メドベージェフ氏は日本が軍事化の道を進んでいると批判。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 アメリカが9.11同時多発テロから22年目を迎えようとしていた矢先、「プーチンの犬」とも呼ばれる、ロシア前大統領で、安全保障会議副議長のドミトリー・メドベージェフ氏が“戦慄の予言”をしていた。アメリカはいつかまた9.11のような攻撃を受ける可能性があるというのだ。しかも、その攻撃は核兵器か生物兵器による攻撃だという。

 ウクライナの内務大臣顧問アントン・ヘラシチェンコ氏がX(旧ツイッター)で、「メドベージェフは、9/11のアニバーサリーという悲劇を、西側諸国に対してさらなる威嚇をするのに利用している。ロシア前大統領・現政府高官のレトリックは、ロシアが威嚇や恫喝を好ましい外交手段だとみていることを示唆している」と前置きしつつ、メドベージェフ氏が9.11から22年目のイブに、ロシア発の通信アプリ「テレグラム」に投稿したその予言を英訳して紹介(下参照)している。

核が使われたらゲームオーバー

 メドベージェフ氏は「9/11を前に言葉を少し」と題されたその投稿の中で以下のように述べている。

「多くの人々が、西側諸国の、特に、アメリカの傲慢さと嫌悪すべきナルシシズムに慣れてしまったようだ。彼らが自分たちの正義や独占に絶対的自信を持っていることに」

「予言したくはないが、アメリカはいつかまた、テロリストから9.11のような攻撃を受けるだろう。その攻撃は核兵器か生物兵器によるものになるだろう。あるいは、さらに悪いことには、核保有国の指導者の1人が、冷静さを失くし、大量破壊兵器を使用するという感情的な決断を下すかもしれない。特に、核保有国は絶えず核兵器を拡大しており、その多くは(協定などにより)拘束されていないからだ。そして、その時(核兵器が使われた時)は終わりだ。ゲームオーバーだ。せいぜい、グラウンド・ゼロのそばに、新しい記念碑を作るためのお金を集めることしかできないだろう」

ロシアによる宣戦布告?

 同氏はこれまでも核攻撃や第3次世界大戦に言及するレトリックを使って、ウクライナを支援するアメリカやNATO諸国を威嚇してきた。

 7月には、NATO加盟国がウクライナへの軍事支援を拡大した結果、「第3次世界大戦に近づいた」との見方も示していた。

 この投稿では、ロシアが核兵器か生物兵器を使うとは言及していないものの、「核保有国の指導者の1人」という表現により、プーチン大統領が核を使用する可能性を示唆しているようにも取れる。そのため、ネット上では、ロシアが9.11の22年目の記念日に、アメリカに対して核攻撃を計画しているのではないか、宣戦布告だとの声もあがった。

 ちなみに、メドベージェフ氏のこの予言は、北朝鮮の金正恩氏がプーチン大統領との4年半ぶりの首脳会談に出発するタイミングで行われていたことにも注目したい。首脳会談では、北朝鮮がウクライナ侵攻を続けるロシアに武器供与を行うことも話し合われると予測されていたが、実際、サリバン大統領補佐官も、15日、両者の会談後、北朝鮮によるロシアへの武器提供を巡る協議が進展していると述べており、朝露による軍事協力の強化が懸念されている。一方で、日米韓も安全保障の連携強化へと進んでいる。朝露首脳会談は、専制主義国家vs民主主義国家、東側諸国vs西側諸国という相容れることがない対立を深く浮き彫りにするものとなったと言える。メドベージェフ氏の予言は、分断された世界で深まる対立の行き着く先を見据えているのか? 

中国紙も風刺画で批判

 9.11のアニバーサリーに当たり、アメリカを批判しているのはロシアだけではない。2021年には、中国共産党系のタブロイド紙「グローバル・タイムズ」の編集長も以下のようなツイートをしていた。

「9.11の攻撃は、19人のテロリストによる自爆攻撃だったが、テロリズムの自爆攻撃ではなかった。テロリズムは次なる死の攻撃を行うためのパワーを蓄積することだろう。アメリカが中国を最大の敵対国とみなすのは間違いだということは、時間が証明してくれるだろう」

「グローバルタイムズ」に投稿された、米当時多発テロを揶揄する風刺画。出典:https://twitter.com/globaltimesnews
「グローバルタイムズ」に投稿された、米当時多発テロを揶揄する風刺画。出典:https://twitter.com/globaltimesnews

 また、今年、同紙は、「9/11から22年」と記された紙を見下ろしている不穏な表情の自由の女神とその影の上を飛び交う銃弾や火炎瓶、崩壊した世界貿易センタービルの瓦礫を描き出している風刺画(上参照)を「9/11から22年、アメリカは混乱を広め続けている」という一文と共にXに投稿し、アメリカを皮肉っている。

 9.11のアニバーサリーは、中国やロシアのような専制主義国にとって、アメリカを非難する格好のタイミングとなっているようだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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