米国務省「慰安婦の人身売買はひどい人権侵害」との見方=韓国報道 日本の謝罪外交の問題とは?

(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

 太平洋戦争中に、日系アメリカ人約12万人の強制収容につながったルーズベルト大統領による大統領令から79年、バイデン大統領が強制収容は「米国史で最も恥ずべき時の一つ」との声明を出し、あらためて謝罪を再確認した。 

 オバマ元大統領も、2015年、米国に帰化した移民らの会合で、第2次世界大戦中にアメリカが日系アメリカ人を強制収容所に監禁したのは米国の最も暗い歴史の一つだと表明している。

 繰り返される、アメリカの指導者による日系アメリカ人への謝罪は、1988年、当時のレーガン大統領が「市民の自由法(強制収容補償法)」を成立させ、強制収容所政策に対して、日系アメリカ人に謝罪と補償を行ったことに始まる。米国政府は強制収容は重大な基本的人権の侵害だと認めたのだ。

慰安婦の人身売買は人権問題

 バイデン氏による日系アメリカ人への謝罪の前日、米国務省が人権侵害に関するある表明をしていた。韓国の聯合ニュースによると、米国務省は18日、「アメリカは何度も表明してきたように、第2次世界大戦当時の日本軍による性目的での女性の人身売買はひどい人権侵害」との見方をあらためて表明したという。

 この表明は、先日、ハーバード大学ロースクールのジョン・マーク・ラムザイヤー教授が、3月に出版予定の学術誌「国際法経済レビュー」に掲載する論文の中で「慰安婦は契約に基づいた売春婦だ」という主張をしたことに対して行われたものだという。

 日本とも深い関係があるラムザイヤー教授の論文に対し、同じハーバード大の歴史学者をはじめ、多くの学者から「証拠を全く提示できていない」と批判の声があがった。

 ちなみに、学術誌「国際法経済レビュー」に掲載予定のラムザイヤー教授の論文については、調査のため3月の掲載が延期されたと、米ディプロマット誌が報じている。また、同誌は、ラムザイヤー教授の論文とそれに対する反論を同時に掲載することも考慮しているという。

 そんな中、「米国務省があらためて、日本軍による性目的での女性の人身売買は”ひどい人権侵害”との見方を示した」と韓国のメディアが報じたのである。

 しかし、見たところ、報じているのは韓国のメディアばかりだ。日本のメディアはどこも、このことを報じていない。記事を見ると、国務省のスポークスマンが匿名を条件に発言したとあることから、発言の信憑性が疑問視されたのだろうか? 国務省で裏が取れなかったからだろうか? 

韓国は謝罪の定義を明確化する必要がある

 いずれにしても、慰安婦の人身売買が人権侵害に当たるというのは世界ではデフォルトとなっている見方だ。

 こう書くと、「日本はもう何度も謝罪したではないか、謝罪はもう不要だ」という声が聞こえてきそうだが、感情の問題というのは簡単には解決できることではない。だから、バイデン大統領もあらためて日系アメリカ人への謝罪を再確認したのだろう。

 東アジアの安全保障の専門家でロンドン大学キングス・カレッジ戦争研究学部講師のアレッオ・パタラーノ氏が筆者にこう話してくれた。

「日本は植民地時代の日本統治の問題は、韓国の人々の中ではまだ終わっていないということを理解する必要があります。感情はすぐには解決できない問題だからです。その意味で、日本の人々はもっと忍耐強くなる必要があると思います。解決までには忍耐が必要だし、解決のために努力するという信念も必要だと思います。この問題は、思っている以上に解決に時間がかかるということを認識しなければなりません」

 パタラーノ氏は韓国側の姿勢も問題視している。

「謝罪については、日本政府は韓国政府と2015年に結論に達していますが、文政権はそれを拒否している。しかし、拒否の理由を述べていないし、では日本はどうすればいいのかということも述べていません。謝罪は相手に受け入れられない限り効果はありません。そのため、謝罪は、それを受け取る側、この場合、韓国政府が謝罪の定義を明確にする必要がありますが、韓国政府は明確にしていないのです」

日本の謝罪外交の問題

 韓国政府はどんな謝罪を欲しているのか? 

 誠実な謝罪を求めているとはよく耳にすることだが、元「エコノミスト」誌編集長のビル・エモット氏は日本の謝罪外交の問題についてこう指摘した。

「自民党内には古い自民党の考え方を持つ、日本会議というパワフルな団体がいます。彼らは歴史問題に関して、国際的な見方とは異なる主張をしているため、日本政府が謝罪したところで、謝罪が台無しになっているのです。つまり、日本の謝罪外交の問題は、古い自民党的考え方の歴史修正主義者たちや保守派によって、謝罪が無効化されてきたことにあります。謝罪外交は良いのですが、歴史を信じていない彼らの誠実さの無さが問題なのです。彼らの誠実でない態度は、慰安婦問題や戦時中の出来事に対する発言に表れています。また、教科書も保守派の力で修正されました。

 日韓関係の修復で日本にとって重要なのは、韓国と和解努力を続けることと、日本が誠実な態度を示すことの2点にあると思います。そのために、新たな合意をすることも1つの方法ではあるかもしれませんが、いくら新たな合意を結んだところで、誠実さがそこになければ、合意をしても効果はないでしょう」

首相の過去発言も問題

 日本の首相たちが過去にどんな発言を行ったかも重要だとエモット氏は言う。

「安倍元首相は慰安婦が存在したという過去について疑いを持っていました。彼はその考えを変えてパク元大統領と合意しましたが、昔の彼の発言を考えると、その合意は誠実さに欠けていたものだったと思います」

 では、菅首相は、過去にどんな発言をしているのだろか?            

 慰安婦問題に関して「歴史教科書への疑問」(1997年、展転社)の中で菅首相がした以下の過去発言を毎日新聞が紹介しているが、それは、エモット氏が指摘したところの、誠実さに欠く歴史修正主義的な発言だった。

 <菅義偉衆院議員(神奈川) 9回にわたる「若手議員の会」の勉強会を通じて(中略)有識者の皆さまの検証によって、「従軍慰安婦」の強制連行など実際にはなかったことが明らかになっているにもかかわらず、それが堂々と中学生の歴史教教科書に載っているのは、非常に問題であります。「従軍慰安婦」に軍が深く「関与」していた、という誤った情報を教科書に載せているだけでも問題ですが……(後略)>

 バイデン大統領による日系アメリカ人への謝罪の再確認。菅首相はそこから学べることがあるのではないか?

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