Yahoo!ニュース

“米大統領選のノストラダムス”の大予言 大統領選の勝者は? ロシア、中国、イランが選挙介入か

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
2020年米大統領選ではどちらが勝つのか? 写真:breaking911.com

 米大統領選まで3ヶ月を切った。

 トランプ氏が劣勢に立つ中、2016年の大統領選の際にトランプ氏当選を予測し、的中させたアメリカン大学教授のアラン・リクトマン氏が、NYタイムズ電子版で、11月の大統領選では、ジョー・バイデン氏が当選すると予測した。

 歴史学を教えるリクトマン氏は、1860年〜1980年に行われた大統領選を分析し、現職大統領かどうか、経済状況、社会不安、スキャンダル、カリスマ性など当選の決め手となる13の鍵を見つけた。同氏は、その13の鍵をベースに、1984年以降、大統領選の勝者を的中させてきたことで知られる。NYタイムズは同氏のことを“大統領選のノストラダムス”とまで呼んでいるほどだ。

大統領勝利の決め手となる13の鍵

 今回、リクトマン氏は、13の鍵において、どちらの候補者に軍配をあげたのか? 以下がその結果。

1. 中間選挙 民主党が下院を奪還したのでバイデン氏優位。

2. ライバル候補の不在 トランプ氏と同じ共和党にはライバル候補がいないのでトランプ氏優位。

3. 現職大統領であること トランプ氏は現職大統領なのでトランプ氏優位。

4. 第三政党候補者の不在 カニエ・ウェスト氏が出馬したが、結局のところ、共和、民主両党の争いとなっているのでトランプ氏優位。

5. 強い短期経済 パンデミックでリセッションが起きたのでバイデン氏優位。

6. 強い長期経済 パンデミックで2020年のGDPがマイナス成長となったのでバイデン氏優位。

7. 国内政策の大改革 大統領令により大規模な税削減を行うなど、オバマ時代の政策を根本から変えたのでトランプ氏優位。

8. 社会不安の不在 パンデミックによる社会不安や警察の暴力と制度的人種差別に対する抗議デモが起きたのでバイデン氏優位。

9. スキャンダルの不在 トランプ弾劾裁判など様々なスキャンダルが起きたのでバイデン氏優位。

10. 外交政策や軍事政策で失敗していない リクトマン氏はトランプ氏は失敗していないと見ており、トランプ氏優位。

11. 外交政策や軍事政策で大きな成功をした リクトマン氏はトランプ氏は大きな失敗もしていないが大きな成功もしていないと見ており、バイデン氏優位。

12. 現職候補のカリスマ性 トランプ氏はショーマン(演出上手)だが、限られた層にしかアピールしていないのでバイデン氏優位。

13. チャレンジする候補者のカリスマ性の不在 バイデン氏は礼儀正しく思いやりはあるが、鼓舞するところがなく、カリスマ性もないのでトランプ氏優位。

 結果的に、13の鍵中7つの鍵でバイデン氏が優位に立ち、6つの鍵ではトランプ氏が優位に立った。バイデン氏が優位に立ったが、その差は1つであることを考えると、接戦になる可能性もある。

 また、支持率の差も縮まっている。政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の世論調査によると、数週間前、トランプ氏は、ジョー・バイデン民主党大統領候補から9ポイント支持率をリードされたが、最新の世論調査では、その差を6.4ポイントに縮めた。トランプ氏が新型コロナウイルスに関する定例会見を再開したことが、差が縮小した理由ではないかと指摘されている。

トランプ氏の神頼み

 多少は支持率の差を縮めたものの、依然として劣勢に立つトランプ氏。同氏に残された道は神頼みしかないようだ。米国時間8月6日、オハイオ州クリーブランドで行った演説で、トランプ氏はバイデン氏を激しく批判した。

「バイデン氏は急進左派のアジェンダを支持している。銃を取り上げ、米憲法修正第2条(銃所持の権利)を無効にしようとしている。無宗教で、聖書と神を傷つけている。彼は神を冒涜している。我々が持っているようなエネルギーもない」

ロシア、中国、イランが選挙介入か

 ところで、リクトマン氏は13の鍵以外では、投票率やロシアによる選挙介入の有無も大統領選に影響を与えると指摘している。

 元来、民主党支持者は選挙当日投票に行かない傾向がある。そのため、民主党支持を公言しているリクトマン氏はこう呼びかけている。

「民主制の未来を決めるのは君たち有権者だ。だから、投票に行こう」

 選挙介入については、気になる発言も飛び出した。国家防諜安全保障センター長官のウィリアム・エバニナ氏が、米国時間8月7日、ロシア、中国、イランの選挙介入に関する発表を行ったのだ。その中で、同氏はこう警告している。

「我々は、ロシアがバイデン氏を中傷するためにソーシャルメディアやテレビなど様々な手段を使っているとアセスメントしている。中国は、何をするか予測ができないトランプ氏が再選しないことを望んでいる。中国は選挙を前にアメリカの政策に影響を与えてきた。TikTok(ティックトック)や香港、5Gへのトランプ政権の対応を厳しく批判してきた。中国は、これらの批判が大統領選に影響を与えることがわかっているのだ。我々は、イランがアメリカの民主制を傷つけ、選挙前に国が分断することを求めているとアセスメントしている。イランは、ソーシャルメディアで間違った情報や反米的コンテンツを広めるかもしれない」

 “米大統領選のノストラダムス”の大予言が今回も当たるか注目されるところだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事