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新型コロナ「脳梗塞の症状にも要注意」米医師警告 CDCが新たに追加した6症状とは?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
脳梗塞で緊急搬送された人々の中には、新型コロナ感染者が多数いたという。(写真:ロイター/アフロ)

 ここ数日、路上死や在宅死した人の中に、新型コロナに感染していた人がいたという日本の報道を目にする。

 ニューヨーク市でも、新型コロナの患者急増期に、在宅死する人の数が例年よりはるかに多くなったため、在宅死した人々の新型コロナ感染が疑われたことは、前の記事で書いた通りだ。

脳梗塞来院者の半数以上が感染していた

 今となっては検死ができないため証明はできないものの、アメリカの医師たちは、脳梗塞で在宅死した人々の中に、新型コロナの感染者がいたのではないかと推測している。

 例えば、ニューヨークのマウント・サイナイ病院では、新型コロナ患者が急増した3週間の間、脳梗塞で緊急搬送された患者数が通常の2倍の32人以上にまで増加、その半数以上が新型コロナに感染していたからだ。

 同病院の研究チームは、3月23日から4月7日の間に自宅で脳梗塞に襲われ、新型コロナと判明した患者たち(33歳、37歳、39歳、44歳、49歳の5人で、軽い症状や無症状だった)の研究を行ったが、彼らは、自宅で、ろれつが回らない、意識障害、顔の片側の垂れ下がり、片方の腕の無感覚などの脳梗塞の症状を示していたという。

 うち、33歳の女性は、1週間、咳と頭痛が続いた後、ろれつが回らない症状や、左足のしびれに気づいたものの、新型コロナに感染する恐怖から、緊急治療室に行くのが遅れてしまった。この女性は、脳から2つの血栓が見つかり、肺には新型コロナの症状が現れていた。

 また、アメリカの病院では、検死の結果、新型コロナの患者の肺から多数の血栓が見つかったことも報告されている。大きな血栓の場合、壊れて脳や心臓まで到達し、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性があると言われている。

 ちなみに、先日、アメリカ初の新型コロナによる死者であることが判明したカリフォルニア州の57歳の女性は、風邪の症状を見せた後、いったんは治癒した様子だったものの、ある朝、自宅で突然死したという経過を辿った。検死の結果、直接の死因は、感染に起因する心破裂であることがわかった。

若い患者の大血管が閉塞

 アメリカの大病院では、新型コロナ患者に起きる脳梗塞現象の研究も進められている。

 研究者らの分析によると、新型コロナ患者の中には、運動能力や言語能力、判断力にダメージを与える、急性主幹動脈閉塞(LVO)という、致命的な大血管の閉塞に襲われる者がいるという。

 LVOが見つかった新型コロナ患者の中には、脳梗塞のリスクが低い、30代後半から50代という若い人々がいることも特異だと分析されている。中には、脳に、1個以上の大きな血栓ができていた患者もいたというが、それも非常にまれらしい。

 脳の血栓は通常、心臓の血を運ぶ動脈に出現するが、新型コロナ患者の場合は、血栓が静脈にも出現しており、そのため、治療しにくいという問題も指摘もされている。

 分析結果から、研究者らは「新型コロナと脳梗塞は、明らかに深い相関関係がある」とショックを受けているようだ。

CDCは6症状を追加

 ところで、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、このほど、発熱、咳、息切れという3つの公式の症状に、悪寒、悪寒に伴う繰り返される震え、筋肉痛、頭痛、喉の痛み、味覚あるいは嗅覚の低下という6つの症状を、新型コロナの公式の症状として新たに追加した。

 さらに、CDCは、呼吸困難、しつこい胸の痛みや胸の圧迫感、意識障害や起き上がれない状態、青みを帯びた唇あるいは顔という4つの症状は緊急警告サインのため、医療機関をすぐに受診するよう訴えている。

 新型コロナの患者には、他にも、下痢、ベッドからトイレまで歩けないほどの倦怠感、“コビッド・トゥーズ”(脚やつま先に現れる紫色や青色の発疹のことで、主に、子供や若者にこの症状が現れており、過度な炎症や電撃性紫斑病という血栓障害が起きている可能性があるという)、“ピンク・アイ(結膜炎)”などの症状が見られるという報告もある。

 新型コロナと脳梗塞の研究をしているマウント・サイナイ病院の医師らは「新型コロナの症状に注意し、脳梗塞の症状が出たら、911(アメリカの緊急通報番号)に電話してほしい」と警告している。

 新型コロナ危機の中、日々、自分の健康状態をモニタリングしている人が多いことと思うが、脳梗塞のような症状が現れていないかについても注意を払う必要がある。

(参考)

CDC confirms six coronavirus symptoms showing up in patients over and over

Young and middle-aged people, barely sick with covid-19, are dying of strokes

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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