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米・広がる“レストラン一時閉鎖令” 加州は65歳以上に自宅隔離要請 10人以上の集まりは避けて!

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
アメリカ政府は10人以上の集まりを避けるよう勧告するガイドラインを発表。(写真:ロイター/アフロ)

 ロサンゼルスの日本食レストランに勤務する安藤洋一さん(仮名)の元に、3月15日夜、LINEがきた。

「明日から全店一時閉店します。出勤しなくてもけっこうです。今後のスケジュールについてはまた追って連絡します」

 LINEには、動画が添付されており、その中で、ロサンゼルス市長のエリック・ガルセッティ氏がこう告げていた。

「3月16日午前0時をもって、レストランでの飲食を一時禁止にします。テイクアウトとデリバリーは行うことができます。バーやナイトクラブ、ジム、映画館は一時閉鎖します」

 市長が、突然、“レストラン一時閉鎖令”という市長権限による執行命令を出したのだ。

 午前0時まであと何時間もない時点での直前の発表に、安藤さんは面食らった。

「3月31日まで閉鎖すると市長は言っていますが、状況次第では延長されるかもしれません。2週間ほど前から、勤務時間をじょじょに減らされていて、心配になってはいたんですが、遂に仕事がなくなってしまいました。来月の家賃が払えるのか…」

 家賃については、ガルセッティ市長は、家賃を払えないために賃貸者に立ち退き命令が出されないよう支払猶予令を発表。商業施設の賃貸者に対しても立ち退き命令が出されないよう動いており、小規模ビジネスに貸し付けを行うためのファンドも集めているという。

広がる破産の懸念

 しかし、それでも、レストランオーナーの不安は拭い去れない。もう2度と再開できなくなるのではないか。そんな危機感が広がっている。

 ロサンゼルス1と高評価を受けているハンバーガーを提供するレストラン「ファーザーズ・オフィス」のオーナー、サン・ユン氏は、米紙ロサンゼルス・タイムズで懸念を示す。

「日曜の夜に腹パンチを受けた。レストランの一時閉鎖が終わったとしても、その時にはロサンゼルスのレストランの状況は大きくかわっているだろう。それがとても怖い。閉鎖が一時的なものにはならない可能性もある。店の中には、閉店に追い込まれてしまうところもあるかもしれない」

 また、「1週間半で資金が尽きる。破産する覚悟です」と悲鳴をあげるオーナーもいる。

 前述の安藤さんは言う。

「市長は地元のレストランを支援するために、テイクアウトをしたりデリバリーを頼んだりするよう市民に呼びかけていますが、感染拡大で、みんな自粛モードに入っている時に、そんなことしませんよ。それに、レストランが、急に、デリバリーサービスに切り替えることは難しいと思います」

 “レストラン一時閉鎖令”が出される動きは、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州、マサチューセッツ州、ペンシルバニア州、オハイオ州、イリノイ州、ミシガン州、ワシントン州などアメリカ各地で起きている。

 折しも、各州の発表に先立ち、アメリカ政府の新型コロナ政策にレコメンデーションを行っている米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ氏が、テレビで「アメリカのレストランを閉鎖するというのは今はやり過ぎかもしれないが、あらゆることを検討している。私はレストランには行かない」と発言したばかりだった。そんな発言も自治体の決定に影響を与えたのかもしれない。

65歳以上は自宅隔離を

 ロサンゼルス市の発表に先立ち、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事も、バーやナイトクラブ、ワイナリー、パブの一時閉鎖を呼びかけ、65歳以上のシニアや基礎疾患を抱える人々は自宅隔離するよう要請していた。

 スターバックスコーヒーも、アメリカとカナダで、2週間の間、店内での飲食を禁止、テイクアウトのみのサービスを行うと発表した。最寄りのスタバに行ってみると、パティオ席からはテーブルや椅子が消えていた。人を集まらせない。そんな強い意志が伝わってくる。

スタバのパティオからは、テーブルと椅子が消えた。写真:筆者撮影
スタバのパティオからは、テーブルと椅子が消えた。写真:筆者撮影

 いつもなら多くの観光客で賑わうサンタモニカのサード・ストリート・プロムナードを歩いてみたが、日曜の午後にもかかわらず閑散としていた。そして、よく聞こえてきたのは日本語。ヨーロッパや中国からの入国が禁止されているからだろうか。

 「アバクロンビー&フィッチ」や「アンソロポロジー」、「アーバン・アウトフィッターズ」、「NIKE」などの店舗の入り口には一時閉店を告げる張り紙が貼られていた。「J Crew」や「GAP」、「Lucky Brand」の入り口には、営業時間短縮を知らせる貼り紙。店内では、棚を忙しなくふいて回る従業員の姿が目についた。

しばらく閉鎖するアバクロは、オンラインでの購入を勧めている。写真:筆者撮影
しばらく閉鎖するアバクロは、オンラインでの購入を勧めている。写真:筆者撮影

 ストリートにはいつもなら気になるゴミもあまり落ちていなかった。

 市中感染が拡大しているものの、マスク姿の人は、あいかわらず、目につかなかった。ドラッグストアではマスクは売り切れているのだが、使ってはいないということなのだろう。

日曜の午後だが閑散としていたサンタモニカのショッピング街サード・ストリート・プロムナード。写真:筆者撮影
日曜の午後だが閑散としていたサンタモニカのショッピング街サード・ストリート・プロムナード。写真:筆者撮影

10人以上の集まりは避けて!

 着実にアメリカで進む、人と人の接触を減少させる措置=「社会距離戦略」。これは日に日に強化されている。

 3月15日は、CDC(米疾病対策センター)が、50人以上が集まるイベントを今後8週間にわたり中止・延期するよう勧告した。

 

 3月16日には、ホワイトハウスが、今後少なくとも15日間、10人以上で集まることを避けるよう勧告。バーやレストラン、フードコートでの飲食や旅行も控えるよう推奨した。ガイドラインは厳格化していく一方だ。

 サンフランシスコでは、不要不急の場合を除いて、4月7日まで外出を自粛するよう行政命令も出た。

 それにしても、アメリカの決断と行動は早い。「国家非常事態宣言」が出てから、わずか数日で「社会距離戦略」が進んだ。トランプ氏が得意気に話したドライブスルー検査も早期に実施されるのか注目されるところだ。

 トランプ氏は3月16日の記者会見で「自身の新型コロナ対応を採点した場合、10点満点で何点か」というある記者の質問に対し、「10点だ。素晴らしい仕事をしてきた」と自賛。本当に10点であるかは、今後出てくる感染者数や死者数といった数字が証明してくれることになるであろう。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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