全中国製品に25%の“トランプ関税”か 米国最大の製造業の中心地ロサンゼルスに打撃

トランプ関税の懸念から米株式市場ではS&P500種株価指数が今年最長の4日続落。(写真:ロイター/アフロ)

 米国時間5月9日、米通商代表部(USTR)は、5月10日から中国製品に対して関税を引き上げることを公示、5月10日午前0時1分、中国製品200ビリオンドル(約22兆円)に対する関税を10%から25%に引き上げる措置を発動した。

 これに先立つ5月5日、トランプ氏は、200ビリオンドル(約22兆円)相当の中国製品に対して現在かけられている10%の関税を25%に引き上げるとツイートで表明。さらには、現在まだ課税されていない325ビリオンドル相当の中国製品にも25%課税することになるとツイートしていた。

 トランプ氏のツイート。

「この10ヶ月間、中国は50ビリオンドル相当のハイテク製品に対して25%、200ビリオンドル相当のその他の製品に対して10%の関税を払って来た。支払われた関税は、一部、我が国に大きな経済効果をもたらしている。10%関税は、金曜日に25%に上がる。

 中国からアメリカに送られている325ビリオンドル相当の製品は課税されていないままだが、まもなく、25%課税することになるだろう。アメリカに支払われる関税は製品コストにはほとんど影響を与えない。多くは中国がもってくれる。中国との貿易交渉は続いているが、あまりに時間がかかりすぎている。彼らが再交渉しようとしているからだ。(再交渉は)ノーだ」

 現在課税されていない325ビリオンドル相当の中国製品への課税についても、トランプ氏は「今日書類作成を始めた」と米国時間5月9日に発言、中国にさらなる“脅し”をかけている。

 ところで、“トランプ関税”は“製品コストにはほとんど影響を与えない“というトランプ氏だが、実際にはそうではない。

 シカゴ大学のベッカー・フリードマン経済インスティチュートが見積もったところ、2018年、関税の影響で、洗濯機の価格が約12%上昇したことがわかった。

 この価格が、“トランプ関税”が発動されたことで、さらに上昇することは必至だ。

“トランプ関税”の打撃を受けるロサンゼルス圏

 “トランプ関税”の打撃を大きく受ける地域に、ロサンゼルスを中心にした大都市圏がある。

 ロサンゼルスを中心にした大都市圏には、北米では最大のロサンゼルス港と2番目に大きいロングビーチ港があり、この2つの港に入る海上貨物は、アメリカに入る全海上貨物の40%以上を占めている。最も多いのは中国から来る海上貨物で、それに日本が続く。

 また、ロサンゼルス空港には毎年100ビリオンドル相当の航空貨物が送られている。2つの港とロサンゼルス空港だけで、昨年は、430ビリオンドル相当の貨物が入荷した。うち、中国からの貨物は170ビリオンドル相当と最大。それに、日本など様々な国が続くが、14位までの国々を合わせても、170ビリオンには達しないという。

 国際企業のロサンゼルス進出を支援している「世界貿易センター・ロサンゼルス」所長のスティーブン・チェン氏は、UCLAで行ったスピーチでこう明言した。

「関税が上がり、貿易戦争が始まると、一番打撃を受けるのは、国際貿易に依存しているロサンゼルスを中心にした南カリフォルニア地域です」

製造業者の懸念

 チェン氏の元には、国際貿易に依存しているロサンゼルスの製造業者から懸念の声も寄せられている。ロサンゼルスを中心とした大都市圏は、実はアメリカ最大の製造業の中心地だからだ。 

 アメリカ労働統計局のデータによると、2019年3月時点で、ロサンゼルスを中心にした大都市圏の製造業従事者は503700人。多くの製造業者が、中国から輸入した部品を使って、商品の製造を行なっている。

 チェン氏は言う。

「ある電動スクーターを製造する企業が、関税の上昇により、商品にたくさん使用しているネジが高くなると懸念していました。ネジはみな中国から輸入しているからです。25%に関税が上がると、販売価格を上げる必要が出てくるということです。

 また、この製造企業はコストダウンを図るために、新たなネジ製造業者を見つける必要も出てきます。例えば、メキシコのネジ製造業者に製造を依頼しようとしたとしても、必要なスペックのネジを作るのには何ヶ月もかかってしまい、その間、電動スクーターの製造が滞ってしまいます。簡単には他の製造業者に変更できないほど、今、供給チェーンは複雑化しているのです」

販売価格は25%以上アップ

 また、関税アップに備えて、これまでにないほど大量の貨物が、中国からロサンゼルス港に入っているという。この状況が、先々、さらに消費を冷え込ませるとチェン氏は予測する。

「例えば、今1000ドルの洗濯機は25%の関税で1250ドルになるかというと、他のコストも付随してくるため、それ以上になります。1300ドルになったとして、人は買い控えしてしまうでしょう。すると、製造業者は在庫を抱え、在庫を保管する倉庫代もかかるようになります。中国への注文も減り、中国からアメリカに送られる貨物量が減少します。これは商品の販売価格に大きな影響を与えます。今は中国からアメリカへの輸送料は貨物船で大量に送られているために安く抑えられているのですが、輸送される量が少量になると輸送料が高くつくようになり、洗濯機の販売価格は1500ドルまで上がってしまうかもしれません。そうすると、消費はさらに抑えられてしまいます。25%に関税が引き上げられれば、先々、こういう状況が起きるのではないかと懸念しています」

“トランプ関税”で上がる製品

 全米小売業協会の上級副会長デビッド・フレンチ氏は「はっきりしていることは、関税は結局、中国ではなく、アメリカの企業や消費者が支払うことになるということです」と話しているが、具体的には、どんな製品の価格が上がるのだろう。

 CBSニュースによると、10日から関税が25%に引き上げられる製品は、シャンプー、犬のリード、冷蔵庫、自転車、何種かの魚、フルーツ、ナッツ、一部の家具、バックパック、ハンドバッグ、財布、一部のスーツケースなどだ。

 また、残りの325ビリオンドル相当の中国製品にも課税されることになった場合、衣料、玩具、シューズ、10日からの関税では課税されなかった家具、携帯電話やその部品などの電子機器、電気機器、電気機械、加工食品、テレビなどが課税対象になる。

 具体的には、家計にどれだけの負担を与えるのか? 調査会社トレード・パートナーシップによると、関税の25%への引き上げで、4人世帯の年間支出は767ドル(約8万4000円)増加し、100万人近くの雇用が脅かされることになるという。

 アメリカ経済の成長を誇りにしているトランプ氏だが、自身が立て直したと自負しているアメリカ経済が“トランプ関税”で打撃を受けることが見えていないのだろうか?

 米国時間5月9~10日、米中は貿易協議中だが、合意に達しなかった場合、中国もこれまで同様、報復措置を取る構えを見せている。

 トランプ氏の方は、国内生産に回帰することにも示唆、「米中が合意に達しなければ、アメリカは今中国が作っている製品を製造する。我々が我々の製品を作っていたような、昔ながらのやり方に戻るだろう」とまで話している。

 

 激化する米中貿易戦争。

 “トランプ関税”という“脅し”に、中国側は果たしてのるのか、そるのか?