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食べるのか名刺交換か 社会人なら「目的を明確化」したい 組織の飲み会

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(ペイレスイメージズ/アフロ)

昨日参加した懇親会は立食だった。2時間が過ぎ、閉会時間になっても、山のような量のサンドウィッチと、握り寿し、枝豆、天ぷらなどが残っていた。参加者が店の人に持ち帰りできるか聞いたが、「だめ」と言われて断念した。立食ではこのような場面が多く、結局は食べ残し、食品ロスをテーマにしている筆者は後味の悪い思いをする。いくら講演で偉そうなことを語っていても、実践が伴わないなら説得力がないし、言動と行為が矛盾するような人にはなりたくないからだ。口で言っていることと、普段やっていることがあまりに違う人は、たとえ隠したとしても、どこかでそれがにじみ出てくると思う。

2018年5月参加の飲み会は完食

2018年5月に参加した、着席しての飲み会は、すべて完食した。

2018年5月8日の飲み会、終了時はこちら。

2018年5月8日の飲み会、終了時(筆者撮影)
2018年5月8日の飲み会、終了時(筆者撮影)

2018年5月17日の飲み会、終了時はこちら。

2018年5月17日の飲み会、終了時(筆者撮影)
2018年5月17日の飲み会、終了時(筆者撮影)

2018年5月29日の飲み会、終了時はこちら。

2018年5月29日の飲み会、終了時(筆者撮影)
2018年5月29日の飲み会、終了時(筆者撮影)

どの会も、久しぶりに会う人たちと、夕食をとりながらの懇親会や同窓会の意味合いだった。

飲み会必須 食べきり啓発ツール

筆者がいつも飲み会で持ち歩いているのは環境省 3010(さんまるいちまる)食べきり啓発ツールだ。公式サイトからダウンロードし、画用紙に貼り付けて、カッターで折り目をつけ、糊付けして、三角柱にする。3010(さんまるいちまる)とは、飲み会の、最初の30分間と、最後の10分間は食べることに集中して食べきろう、という趣旨だ。

環境省 3010 食べきり啓発ツール
環境省 3010 食べきり啓発ツール

これを持って行って、テーブルの真ん中、もしくは隅っこ、自分の席の近くに置いておくだけでも効果がある。

食べ残っていたら、それを食べそうな人に勧めるとか、自分が申し出て食べるとか、ちょっとした心がけで食べきることができる。

2018年3月28日、食生活ジャーナリスト大賞授賞式の時、食事のテーブルに筆者が置いた食べきり啓発ツール(撮影:高山千香氏)
2018年3月28日、食生活ジャーナリスト大賞授賞式の時、食事のテーブルに筆者が置いた食べきり啓発ツール(撮影:高山千香氏)

立食の目的の多くは「名刺交換」「自己紹介」「歓談」

着席スタイルであれば、このような取り組みがやりやすい。

ただ、やりづらいのが立食だ。そもそも、幹事の方が注文している量が多過ぎることがほとんどである。社会人の場合、会議やセミナーや学会を終えて、名刺交換したり、互いに自己紹介しあったりが優先で、食べ物は二の次のことが多い。飲み物のグラスを持っているのに、さらに左手にお皿、右手に箸やフォークを持ち・・・となると、わずらわしい。その上、初めて会う方なら、まずは両手を使って名刺交換するのが主流の日本人。「手が足りない」。

仕事なら目的を明確化するのになぜ飲み会ではしないのだろう

立食で、かつ、目的が「食べること」より「人と出会い、歓談すること」に力点を置くなら、思い切って、注文する量を減らしたらどうだろう。食べ物も、片手で食べやすいフィンガーフードにするとか・・・・ただ、昨日の飲み会では、片手で食べられるサンドウィッチが料理の中で一番多く残っていたので、やはり、注文する量自体を減らす方が先決のようだ。

「仕事の基本とは」という検索ワードで調べると、これだけは新入社員に教えたい! 仕事の進め方5つの基本(PHP 人材開発)というページがあり、5つの基本の一つに「3ムの排除」とあった。3ムとは、ムダ・ムラ・ムリのことだ。社会人の立食は仕事の一環の場合が多いが、現状では、3ムの排除どころか、ムダの出しまくりではないだろうか。

同じページにPDCAサイクルのことも書かれていた。仕事なら、目的を明確にしてからPDCAサイクルを回すが、なぜ、仕事の一環である飲み会では目的を明確化しないのだろう。食べることと名刺交換とで優先順位をつけ、後者の優先順位が上なら、食べ物の注文を減らすなり、片手で食べやすいものにするなりすれば、食べ物のムダ(食品ロス)はグッと減るはずだ。場合によっては、食べ物の注文を減らしたことで、参加費の減額やイベント全体の支出の抑制にも繋がるだろう。立食や懇親会を企画している人には、ぜひ、心に留めておいて欲しい。

参考記事:

食品ロスの注目度を高め、第2回食生活ジャーナリスト大賞「食文化部門」を受賞した私が今、伝えたいこと

お花見や宴会で全国に拡がる「食べきり運動」の発祥は

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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