おせちのチラシは億単位?!

(ペイレスイメージズ/アフロ)

新年になると山のように入る、新聞の折り込みチラシ。

企業が折り込みチラシを新聞各紙に入れるためには、年間数千万円から億単位のコストがかかる。

新聞の購読者は、チラシを無料で受け取っている、と思っているが、はたしてそうなのだろうか。

折り込みチラシを廃止しお客さまに還元するスーパー

福岡県柳川市のスーパーまるまつを取材した時、社長は「紙のチラシは何千万円とかかるから入れない。その分、お客さんに還元する」という趣旨を話してくれた。スーパーまるまつは、チェーン店ではなく、柳川市に一店舗だけある、地場のスーパーだ。だが、仮に折り込みチラシを入れた場合のコストは数千万円に及ぶという。そこでスーパーまるまつは、紙のチラシを入れず、過剰在庫を持たないでコストを減らし、その分、常連のお客さまに、お手頃価格で、新鮮で、品質の良い美味しい食べ物を提供している。

参考記事:食品ロスを生み出す「欠品ペナルティ」は必要? 商売の原点を大切にするスーパーの事例

スーパーまるまつとは別の地方で、何十店舗のチェーン展開している別のスーパーは「(チラシの年間コストは)億単位」と話していた。全国展開しているスーパーは推して知るべしだろう。筆者も食品メーカー勤務時代、全国展開するスーパーへ食品メーカーが支払うチラシ代を知って驚いたことがある。自社商品を大きく載せてもらうために、スーパー本部に広告代を払うのだ。

福岡県柳川市のスーパーまるまつ(筆者撮影)
福岡県柳川市のスーパーまるまつ(筆者撮影)

チラシ代は誰が払っているのか

折り込みチラシ代は、スーパーが払っている。その一部はメーカーが負担している。彼らの経費から出されている。だが、スーパーもメーカーも、お客さまから頂いたお金で経営が成り立っている。ということは、間接的には、われわれ消費者が払っていることにはなるまいか。

年末に販売されるおせち料理は、不測の事態の時のために、必要数量より多めに作っておく。需要と供給のバランスを見ながら製造量を決定するわけだが、この多めの量もコストに含まれる。ということは、価格にそれが全く転嫁されていないということはないだろう。

筆者がフードバンク(販売できない食品を受け取り、必要な人へ渡す団体)で働いていた時、正月が明けてから、数万円するおせち料理が寄付されてきた。売れ残りだ。今は冷凍で流通するので、長く日持ちする。

知り合いが「テレビ通販で売るおせちが、予定が狂って売れなくなったから、買い取って欲しい」と連絡してきたこともあった。食品を多めに作るコストは、まわりまわって、消費者が払う価格に転嫁されている。

フードバンク広報時代にシンポジウムで発表する筆者(知人撮影)
フードバンク広報時代にシンポジウムで発表する筆者(知人撮影)

単色チラシよりカラー4色刷りの方がコスト高

当たり前のことだが、一つの色のインクだけで刷るチラシより、多くの色のインクを使って刷るチラシの方が、コストは高い。たとえば、おせち料理の写真を載せた予約販売のためのチラシは、単色チラシよりコストが高い。おせち料理はカラフルだ。栗きんとんや伊達巻き、数の子の黄色、いくらや海老の赤、レンコン・たたきごぼうの白、黒豆や昆布巻きの黒、紅白かまぼこのピンク、田作りの茶色など。全国のおせちのチラシの料金を合計すると、億単位に及ぶだろう。

売る側としては、チラシを入れた方が売り上げが上がる、ということで、必要経費に乗せている訳だが、中には、新聞ごとに反響を検証して、入れる新聞を取捨選択しているスーパーもある。地方では、全国紙より地元紙の方が購読率が高い場合があるので、地元紙のみ入れる場合もあれば、地元紙+全国紙の組み合わせで入れる場合もある。

「無料」だと思っていたら実はコストを払っているものがないか

折り込みチラシに限らず、「無料」だと思っていたら、実はそれは商品価格に転嫁されている、というものはないだろうか。新年の折り込みチラシをみると、入っているのはスーパーだけではない。マンションや戸建てなどの不動産、テレビなどの電化製品、車、家具、自転車、衣類、メガネ、おもちゃ、スマートフォンや携帯電話、ケーキ・・・

ちなみに筆者は全国紙を購読しているが、2018年1月1日に入っていたチラシを数えたところ、48枚あった。すべてカラー印刷で、ほとんどが大判のものだ。

正月にはゴミもたくさん出るが、ゴミは出せば終わりではない。家庭ゴミを処理する費用は、日ごろ納めている税金でまかなわれている。決して無料ではない。

環境に配慮しながら食品や商品を消費していきたい(筆者撮影)
環境に配慮しながら食品や商品を消費していきたい(筆者撮影)

「環境を大切にする消費者」の意味としてグリーンコンシューマーという考え方がある。環境NGO「環境市民」の公式サイトにはグリーンコンシューマーの買い物10の原則が紹介されており、その中の一つに『商品は、資源とエネルギーを使って作られ、使われ、そしてごみになります。そのすべての過程で資源とエネルギーをムダにしない商品を選びましょう』とある。

筆者が6年前に参加した、ビジネスコミュニケーションのシンポジウム(IABC (International Association of Business Communication)がシカゴで開催)では、学会などでよく配られる紙の資料は一切なく、事前にインターネット上で参加申込者に共有された。紙を印刷せず環境に負荷をかけないという意味で、「グリーンプログラム」といった名前で紹介されていた。

生活していれば、もちろん必要な紙やインクがあるわけだが、この機会に、本当に必要なものかどうかを改めて考えてみたい。

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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