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お子さんの成長を見守る『成長曲線』。保護者さんと医療者を結びます

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
イラストAC

新学期が近づいてきました。

園や学校に入園・入学にあたり、お子さんの身長や体重を測ることも増えてくるでしょう。

そして小学校や保育園への入園・入学時に身長や体重を確認して、心配されて受診される方はすくなくありません。

しかし、どの病院もとても多忙な状況になっていることもご存知のことでしょう。

医療者に、お子さんの成長の心配をどのように伝えたらいいのか悩む方もいらっしゃるかもしれません。

そのようなとき、保護者さんと医療者を結ぶ大事な線があります。

そこで今回は、そんな『成長曲線』に関して簡単に解説してみたいと思います。

飛行機の高度の上がり方。安全?危険?

最初に、例を挙げましょう。

あなたが飛行機に乗って、『高度500mを飛んでいる』としましょう

さて、危ないでしょうか?それとも、安全でしょうか?

これだけでは判断できませんよね

飛び立ったばかりで高度をあげているときの高度500mと、5000mから急降下して高度500mになっているかでも判断は変わります。

イラストACより筆者作成
イラストACより筆者作成

そして、高度5000mまで上昇している途中であっても、500mからなかなか上がらない場合には機体に問題があるかもしれないと思うかもしれませんよね。

すなわち、『今の高度が500m』だけでは、情報は不十分なのですね。点だけでなく、『その動き』が重要ということです。

『成長曲線』は、飛行機の高度の上がり方のように、成長を確認するツール

さて、保護者さんが自ら、お子さんの成長を見守るためのツールがあります。

それが『成長曲線』です[1]。

成長曲線の例(0~6歳男児)。日本小児内分泌学会のホームページ[文献1]より引用
成長曲線の例(0~6歳男児)。日本小児内分泌学会のホームページ[文献1]より引用

成長曲線は、『身長や体重、もしくは頭の大きさをグラフにした』ものです。

母子手帳の最後にこのようなグラフと同じような図があると思います(上は医師が使う図を挙げたので、ちょっと詳しめです)。

どのように使うのでしょう。簡単に説明してみますね。

身長と体重、頭囲(頭の大きさ)でそれぞれ5本の線があります。

“平均”の線はよいですよね。

平均の線の上から“+2SD”“+1SD””-1SD“”-2SD”という線があります。

1SDは、ざっくりいって、70%の人がはいる線です。

2SDは、ざっくりいって、95%の人がはいる線です。

文献1より、筆者作成
文献1より、筆者作成

ですので、-2SDの線の上にいるなら、100人ならんで95番目くらいのイメージといえばよいでしょう。

ここでひとつ大きな注意点があります。

ここで注意点があります。

この図は、お子さんが、70%を下回っているとか、95%以上であるとか、そのようなことだけをみるものではないということです。

成長曲線は、お子さんがその先、なにか心配事をかかえていないかを予想するための“線”であって、その時点だけを見る“点”ではないということです。

ある時点での身長や体重が少ない(もしくは多い)ことを心配されて相談されることは良くあります。しかし、それだけでは判断が難しいのですね。

『飛行機が500mの高度にいます』と同じような意味合いになるのです。

文献1とイラストACより筆者作成
文献1とイラストACより筆者作成

ですので、『これまでの身長と体重をグラフに』してみることをお勧めします。それが成長曲線なのです。

たとえば上から2番目の線にそっていたのに、急に伸びなくなってきて落ち込んできて3番目の線を横切り4番目の線に近づいてくるような動きをしたとしましょう。

文献1とイラストACより筆者作成
文献1とイラストACより筆者作成

これは、飛行機で言えば、高度を上げている途中になにかトラブルが起こった可能性がありますよね。

今まで4番目の線にそって伸びてきたとしましょう。

文献1とイラストACより筆者作成
文献1とイラストACより筆者作成

心配はなさそうですね。

成長曲線は、言ってみれば飛行機の運行予定にそっているかどうかを確認するものです。

他のお子さんと比較するものではないのです。

成長曲線は、お子さんと保護者さん、そして医療者を結ぶ線です

イラストAC
イラストAC

成長曲線は、たとえるならば、専門家と一緒に計器を確認しながらより丁寧に飛行する必要があるかを確認する線です。

そして小児科医は、その専門知識を持っています。

もちろん、(私もですが)より専門家のアドバイスをお願いすることもあります。

御心配な場合は、日本小児内分泌学会のホームページから、成長曲線をダウンロードし、ぜひ線を引いてみましょう。そして、すこし簡単になった図も母子手帳の最後にあります。もちろんそれを活用しても大丈夫です。

線を結んで受診していただければ、嬉しいですし助かります。

その線は、お子さんと保護者さん、医療者を結ぶ線になるでしょう。

この記事が、なにかのお役に立つことを願っています。

参考文献

[1]成長評価用チャート・体格指数計算ファイル ダウンロードサイト(日本小児内分泌学会)(2023年1月7日アクセス)

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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