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秋の花粉症からカレーアレルギーに?ヨモギ花粉とスパイスの関係とは

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
イラストAC

花粉症というと、スギ花粉を思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、花粉症の原因になる花粉は61種類もあります[1]。

すなわち、季節ごとになにかの花粉が飛散しているので、さまざまな花粉症の方がいらっしゃることになります。

そして、花粉症になると、その花粉に近いタンパク質を持つ果物や野菜に対してアレルギーとなってしまうことがあります

イラストAC・PhotoACの素材を使用して筆者作成
イラストAC・PhotoACの素材を使用して筆者作成

これを、『花粉-食物アレルギー症候群』といいます。

そして最近、秋に飛散する花粉症になった方にスパイスアレルギー、すなわちカレーなどで症状をおこす方がいるという研究報告が増えているようです。

そこで今回は、花粉-食物アレルギー症候群とスパイスアレルギーを簡単に解説してみたいと思います。

樹木の花粉と雑草の花粉

花粉症になりやすい花粉は、樹木の花粉と雑草花粉に大きく分けることができます

樹木の花粉とは、すなわちスギやヒノキ、シラカバ、ハンノキという花粉です。

そして、雑草花粉は、イネ科花粉とキク科の花粉が有名です。

それぞれ飛散時期は大きく異なります

イラストACの素材を利用して筆者作成
イラストACの素材を利用して筆者作成

イネ科の花粉は、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなどです。

川沿いなどで見かけたこともある方も多いでしょう。

カモガヤ:PhotoACより
カモガヤ:PhotoACより

オオアワガエリ:photoACより
オオアワガエリ:photoACより

イネ科の花粉は、アレルギーの面から考えるとだいたい似たような性質を持っています。すなわち、例えばオオアワガエリの花粉にアレルギーがあると、おおむねカモガヤに関してもアレルギーがあるということができます。

そしてもう一つの雑草花粉が、キク科花粉です。

ブタクサやヨモギなどがキク科の花粉で、秋に飛散しています。

たとえば、ヨモギ花粉は、7月下旬から11月にかけて飛散します(地域によっても異なります)。

ブタクサ:photoACより
ブタクサ:photoACより

ヨモギ:photoACより
ヨモギ:photoACより

雑草花粉にアレルギーがあるかも?と思ったときは、周囲の環境を思い浮かべましょう

photoACより
photoACより

なお、雑草花粉は、一般的に数10mぐらいしか飛散しません[1]。

ですので、雑草花粉に対して花粉症の症状があるということは、周囲にそのような植物が生えていないかどうかも思い浮かべる必要があるということですね。

そして、これらの花粉症で症状の方に問題になるのが、花粉に似たタンパク質をもつ野菜や果物に症状が起こることがあるということです。

なお、花粉に関連した食物に含まれるタンパク質は、多くは加熱や消化でアレルギーを起こす力が弱まることがわかっています。

ですので、口の中やまわりの症状でとどまることが大多数です。

ただし、スパイスを食べた後に運動することで強く症状があることもあり、注意を要します。

花粉食物アレルギー症候群になりやすい食べ物は?

花粉食物アレルギー症候群の原因として多いのは、樹木である『シラカバ』や『ハンノキ』花粉によるものがもっとも多いとされています[2]。

シラカバやハンノキ花粉による症状は、バラ科の食物であるリンゴやモモ、ウリ科であるメロンやスイカに多く見られます。日本で行われた研究では、リンゴが13.2%、 次いでモモが11.2%でした[3]。

ただし、今回の話題はヨモギ花粉に関してです。

ヨモギ花粉にアレルギーがある人のスパイスアレルギーの報告がふえている

photoACより
photoACより

さて、最近増えている花粉食物アレルギー症候群があります。

それが、ヨモギ花粉にアレルギーになった方に、スパイス、すなわち香辛料に対してアレルギーが起こることがあるということです。

例えば、コリアンダー、フェンネルシード、キャラウェイシードなどにアレルギーを起こすことがあります[1]。

花粉食物アレルギー症候群としてのスパイスアレルギーは、北欧・欧州では多く、『ヨモギ-シラカバ-セロリ-スパイス症候群』や、『セロリ-ニンジン-ヨモギ-スパイス症候群』などが知られています[4]。

日本では、北欧ほどヨモギ花粉アレルギーが多くはないことから、これまではあまり知られていませんでしたが、最近報告が増えてきています[5][6]。

一般的に、その花粉が多く飛散する時期に、その花粉に対する症状がでやすくなるだけでなく、アレルギー体質も悪化します。

ですので、すこし念頭において良いでしょう。

今回は、最近増えている『花粉食物アレルギー症候群』を中心に、秋に飛散するヨモギ花粉症に関連したスパイスアレルギーの解説を簡単にしてみました。

この記事が、なにかのお役に立つことを願っています。

参考文献

[1] 堀向 健太. アレルゲン 雑草花粉. 日本小児アレルギー学会誌 2019;33:749-57.

[2]Osawa Y, et al. Allergology International 2020;69:246-52.

[3]特殊型食物アレルギーの診療の手引き

[4]原田 晋. チャイルド ヘルス 2021;24:688-90.

[5]澤口 博. 秋田県医師会雑誌 2022;72:87-92.

[6]勝家 志歩他.日本皮膚科学会雑誌 2022;132:84.

※2022/10/16 12時 『ただし、スパイスを食べた後に運動することで強く症状があることもあり、注意を要します。』を追記いたしました。

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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