百日せきの患者数1万人超え、流行の原因は  赤ちゃんに感染し重篤化するケースも

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

百日せきは以前、赤ちゃんがかかると重篤化する、とても恐れられた病気でした。

出典:イラストAC
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百日せきは、特に赤ちゃんに感染すると重篤化する可能性が高い、怖い感染症です。

昔は、百日せきに対するワクチン開始前には10万人以上が感染しており、その約10%が亡くなられていたそうです(※1)。

(※1)百日せきとは(国立感染症研究所)

百日せきは、鼻水や咳といった軽い症状から始まりますが、徐々に悪化してきて、すごく苦しいせきにかわってきます。

「コンコンコンコンコン・・・」と短い咳を繰り返したあと、「ひゅーっ」と息を吸い込むという、見ていられないようなとても苦しい咳です。

百日せきそのものにはマクロライド系という抗菌薬が有効で7~14日間の治療期間が必要です。

5日間程度で他の人への感染力は通常なくなってきますが、咳そのものを抗菌薬で効果的に抑えることは難しいことがわかっています

特に、生後3ヶ月未満の赤ちゃんでは息がそのまま止まってしまい、亡くなることもある怖い病気なのです。

ワクチンが普及し、「成人の長く続く咳」の原因に変わってきました。

出典:写真AC
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そんな怖い百日せきは、三種混合ワクチン、さらにポリオも一緒にした四種混合ワクチンが普及することで(それぞれ百日せきに対するワクチンが含まれています)、大きく減りました。

一方で、百日せきのワクチンの効果は、一生は続きません(百日せきに感染したとしても、その抗体の効果は一生は続きません)。

そのため、最近、これらのワクチンの効果が下がってしまう6歳くらいから百日せきの発症が増え、新しく発症する患者数の過半数を占めるようになりました(※2)。

(※2)全数報告サーベイランスによる国内の百日せき報告患者の疫学(更新情報) -2018年疫学週第1週~52週-

そして、「今年の累積報告数は1万110人に」という報道に繋がったのです。

成人における百日せきは「しつこく長引く咳」が特徴です。

例えば、2週間以上続く咳を発症する患者の17%が百日せきだったという報告もあります(※3)。

(※3)Kline JM, et al. Am Fam Physician 2013; 88:507-14.

そして、風邪と区別できないような軽い症状である場合も多くあります。

赤ちゃんの「命に関わるような重篤化する百日せき」とは様子が異なるということですね。

症状から、百日せきを区別するのはなかなか難しいケースもあります。

出典:イラストAC
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ある報告では、成人の百日せきでは、「百日せきの患者さんがひどい発作性の咳」であるケースは93.2%あったのですが、「ひどい発作性の咳が百日せきだった」のは20.6%にすぎなかったとされています(※4)。

(※4)Moore A, et al. Chest 2017; 152:353-67.

ややこしいですね。

このことを、大雑把に説明すると(それでもややこしいですが)、

「ひどい咳が長引いているから、百日せき」は20%しかないということになります。

ひどく咳がでる病気は他にも沢山あるからです。

しかし、「百日せきと診断された方が、診断前にひどい咳があった」のは90%と言える、ということです。

すなわち、後から考えると百日せきだったとしても、現場では「症状からだけで百日せきを疑うのは難しいケース」もあるのです。

最近、百日せきの診断に関しては良いニュースもあります。

出典:イラストAC
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以前は、百日せきを迅速に、また確実に診断する良い検査がありませんでした。

しかし、百日せき菌に対するIgMやIgA抗体という、罹っているかどうかを血液で測る検査や、LAMP法という比較的簡単な検査が、2016年に健康保険に適応されるようになりました(ただし、現状ではインフルエンザ迅速検査のようにその場でできる検査ではありませんので1週間ほどの時間がかかります)。

それらを受けて、2017年には百日せきの診断基準が更新されました(※5)。

(※5)小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017

そして、咳が中心の(=風邪と区別がしにくい)百日せきの大人が、まだワクチンが始まっていない生後3ヶ月未満の赤ちゃんに感染させ重篤化するケースも、ふたたび増えて来てしまっています。

これは感染させた大人が悪いという意味ではありません。

風邪と区別がしにくいケースがどうしてもあるので、積極的に予防していく必要性がでてきたということなのです。

百日せきワクチンの効果が下がってくる時期の再度のワクチン接種が注目されてきています。

出典:イラストAC
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日本では、11~12歳に「二種混合ワクチン」が定期接種として追加接種されていますが、これには百日せきワクチンが含まれていません。最近増えてきた、抗体が低くなって罹ってしまう百日せきを防ぐことができないのです。

そこで、自費になってしまうものの、日本小児科学会では11~12歳の二種混合ワクチンを三種混合ワクチンに変更したり、就学前に三種混合ワクチンを追加接種することを推奨するようになりました(※6)。

(※6)日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点 2018年8月1日版 日本小児科学会 

そしてやはり自費になるものの、大人でも百日せきのワクチンを追加で接種して抗体を高め、長引く咳をひき起こす百日せきの感染を減らすことが可能です。

妊娠中(妊娠27週以降)のお母さんに対してでさえ、三種混合ワクチンをすると生まれてくる赤ちゃんの百日せきに対する抗体が高くなり、生後3ヶ月までの危ない時期の感染を防御できる可能性も報告されています(※7)。

(※7) Healy CM, et al. Jama 2018; 320:1464-70.

ですので、現在の百日せきの流行状況から考えるとワクチン接種は重要性を増しているといえます

いま、百日せきの報道が増えている理由は?

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さて、「百日せきが流行している」という報道をよく目にするようになった理由がおわかりになってきたでしょうか?

そうです。

赤ちゃんの「重篤な百日せき」の流行により亡くなる方がワクチンの普及で大幅に減ったものの、「長引く咳が中心の大人の百日せき」が増えてきたためです。そして再び、大人から赤ちゃんへの感染リスクも高まってきてしまったのです。

その問題を打開する方法は、やはりワクチンです。

適切に追加の百日せきのワクチンを接種することで、大人も、子どもも、そして赤ちゃんも守ることに繋がります。

もし、さらに思春期や大人に対するワクチンを調べてみたい場合は「こどもとおとなのワクチンサイト(一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会)」のページを参考にしてみてください。

この機会に家族でワクチンを考えてみていただければ嬉しく思います。