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『ブギウギ』を語るNHK「おはよう日本」首藤&三條アナ 朝の「送り」コメントに起こっている異変

堀井憲一郎コラムニスト
『ブギウギ』大和礼子役の蒼井優(写真:つのだよしお/アフロ)

朝ドラ前のNHK『おはよう日本』のアナウンサー

NHK朝ドラ『ブギウギ』の前に放送しているのは『おはよう日本』である。

東京で(関東エリアで)ブギウギ前を担当しているアナウンサーは(立ち位置から)三條雅幸アナ、首藤奈知子アナ、副島萌生アナ、伊藤海彦アナである。(副島アナと伊藤アナは最後に顔を揃えに出てきているという感じ)

NHK入局年はそれぞれ首藤2003、三條2005、伊藤2009、副島2015で、首藤アナがもっとも上となる。

4人のアナウンサーで朝ドラを話題にする

4人でよく朝ドラを話題にする。

まず首藤アナが「さて、このあとブギウギです」と振って三條アナが最近の内容に触れて、タイミングによって伊藤アナ、副島アナが参加するというパターンが多い。

いわゆる朝ドラ「送り」と呼ばれるものである。

どうみても台本はないし、セリフは決められてない。

ときどき時間内に入らないで少し言葉がこぼれることがあるが、でもそれはほんとにたまにである。

だいたいきれいに時間内におさめられている。

7時59分47秒からの13秒間

所要時間は7時59分47秒からの13秒間だけである。

13秒を4人で話してきれいにまとまると、ちょっと感心する。

さすがNHKアナだと嘆息することもある。

ちなみに、このメンバーの13秒が見られるのは関東エリアでの話である。

ローカルニュースの時間なので、たとえば関西で見ていると、まったく違うアナウンサーが出ていて、それでも朝ドラを話題にしてたりする。

各地方いろんなパターンがあるのだろう。

朝ドラに触れない案件

ただ、毎日、朝ドラの話をしているわけではない。

ニュース番組だから、いろいろ忙しい。

鉄道が「運転見合わせ」の場合は、三條アナが伝えてくれる。

東京メトロ東西線が高田馬場から中野間だけで止まっているときでも(2駅なのでけっこう短い)三條アナはしっかり伝えてくれる(2022年11月4日)。朝ドラには触れない。まあ2駅でも歩くわけにはいかないからね。

大雨のときや、台風が近づいているとき、地震があったときは、それらを伝えて注意を喚起している。

緊急性の高いニュース、大きなニュースがあると、それが優先される。

そのときは朝ドラには触れない。

雄大な風景からの中継も多い

そういうニュース類がない場合でも、朝ドラを話題にしないことがそこそこある。

大きな公園のお花畑や、雄大な自然の風景映像を前に、季節や天気の話などをする。

これはこれで、のんびりしていていい。

中継先は、関東ないしは甲信越あたりまでのことが多い。

秩父の芝桜、鴻巣のポピー、長岡のコスモス、山中湖、八ヶ岳、日光など。

この風景を見ながら、季節の話をするのが、この時間帯の(朝ドラ直前13秒の)本来の基本パターンだったとおもう。

『ブギウギ』になってみんな前のめりになる

ところが2023年10月『ブギウギ』が始まると、みな、すごく前のめりになった。

連日、『ブギウギ』を話題にして、そのままドラマにつながっている。

とても前のめりである。

誰かが、なるべく『ブギウギ』を話題にせよ、と指令を出したのではないかとおもってしまうくらい、ほぼ、毎日、朝ドラを話題にしている。

(そんな指令が出ているとはおもえないが)

とりあえずいままでのところ、『ブギウギ』が始まって3週はそうだった。

あきらかな異変である。

15回のうち12回が『ブギウギ』を話題にする

『ブギウギ』放送が始まった10月2日月曜から、10月20日金曜までの15回、このうち10月9日月曜は体育の日で休日なので、ぎりぎりまで天気予報が流れてそのままドラマに入る「祝日体制」となるので、これをのぞき14回、このうち12回が『ブギウギ』を話題にしていた。

ちょっと異様である。

最初の一週間、その5日とも話題にしたときに、あら、どうしたのだろうと、かなり気になった。

触れなかったのは長岡市と日光市からの中継の日

ドラマに触れなかったのは7話(10/10火)と15話(10/20金)2回だけである。長岡市と日光市からの中継映像を見て、それに触れていた。

あとはみな「さて、ブギウギです」でそのままドラマ話題で13秒間つないでいる。

『ブギウギ』のアクセント話題ではずみがついたか

第1話前では、今日からブギウギです、と期待を込めて話していて、まあまあこれは恒例である。

ただ2話の前に「ブギウギ」のアクセントが、ブの音を高く発音する頭高なのか、平板な発音なのかを首藤アナが話題にした。すると、ドラマあとの『あさイチ』で華丸大吉&鈴木アナがそれに反応し『おはよう日本』首藤アナにメッセージを送り、翌3話前、首藤アナはそれに反応したのだ。

これではずみがついたのかもしれない。

『ちむどんどん』のときは15回中3回だけ

こんなにアナウンサーたちが話題にすることは珍しい。

何十年も朝ドラを毎日見ているが、ドラマ直前でここまで連続してドラマに触れることはかつてなかった。

すこし振り返ってみる。

3つもどって2022年春からの『ちむどんどん』では、第1話前こそは触れていたが、それ以降はスルー、次に触れたのは7話(2週目の火曜)で、翌日は触れたが、そのあとは触れられなかった。

15話までで3回だけだった。

いまから振り返ると、すごく少なく感じるが、でも、このころはこんなものだったとおもう。

(『ブギウギ』がいま15話まで終了したので、そのサイズで比較します)

『舞いあがれ!』は15回中5回

その次の『舞いあがれ!』(2022年秋から)では、第1話直前は中継先のひたち海浜公園を話題にしてドラマに触れないから、これは前作『ちむどんどん』の不評の影響かと心配していたら、7時59分56秒になって三條アナが「(中継映像をみながら)こんな空を飛べたら気持ちいいですね」と言い出し、首藤アナがそれを引き取って「このあと『舞いあがれ!』です」とつないで、残り4秒でこういう芸当を見せるのがすごい。

でもこれはあまり朝ドラ話題だったとは数えにくく、これを除くと、15回までで5回だった。それが『舞いあがれ!』。

『らんまん』は15回中8回

前作『らんまん』(2023年春から)は第1話前ではまったく触れてなかった。

第2話前では触れたが、その週はその1回だけだった。

次週以降で続けて触れたので、15話までで8回となった。

増えている。

たぶん『らんまん』そのものが持っている基本的なやさしさとおかしみ、それにあまりに時代が古くて他人事感が強かったところが、かえって親しみがわいて、よく触れられていた理由のようにおもえる。

どんどん増えていく朝ドラに触れる回数

まとめると、最初3週(15話まで)で「おはよう日本・関東甲信越」で直後の朝ドラに触れた回数は以下のとおり。

『ちむどんどん』3回

『舞いあがれ!』5回

『らんまん』8回

『ブギウギ』12回

わかりやすく増えている。

今回の『ブギウギ』は、やはり前作の『らんまん』の印象がとてもよくて、その好印象に乗っかって、増えていっている感じがする。

朝ドラに触れるとほっこりする

朝7時59分47秒からの13秒で、朝ドラを話題にしているのを見かけると、何だかほっこりする。

それはつまり、そのとき、公共交通機関が止まっているわけではなく、大雨や台風の災害の恐れもなく、直前に地震もなく、西北のほうからミサイルが日本上空を通過したわけでもないからで、それはなかなか平穏な7時59分世界である。

お花畑の中継もかなり和むのだが、でも連日だとあまりにもあたりさわりがなさすぎ、やはり朝ドラが話題になるとちょっと盛り上がる。

この「朝ドラを話題にすることが急増している異変」は楽しいのだ。

継続を希望します。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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