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紅白歌合戦でわかった 大泉洋の「ブラボーッ!」と長友佑都の「ブラボー!」の違い

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:2022 TIFF/アフロ)

紅白歌合戦にまで「ブラボー」要員として長友選手が呼ばれる

紅白歌合戦に、サッカーの長友佑都選手が呼ばれていた。

監督の森保一は「審査員」として呼ばれていたので、長友は応援枠なのだろう。

でもいま、彼を見た多くの人はひとつのことしか期待していない。

「ブラボー!」要員である。

ここ3年、大泉洋が紅白の司会に起用されてから、紅白では「ブラボー!」が連発され、いわば紅白名物と言えるものになっている。

大泉が「ブラボー!」を叫んだのはコロナに勝つため

大泉のために急いで弁明するなら、ここ2年、紅白歌合戦はホール一杯に客を入れていなかった。そのため、敢えて大泉洋は「ブラボー!」と叫びつづけていた、という側面がある。

いわば、彼のブラボーは、コロナに勝つための叫びだったと言えるのだ。

そして2022年には長友佑都が呼ばれた。

いまの日本人にとって、「ブラボー!」の人である。

2020年の紅白では大泉洋「ブラボー」は3歌手

大泉洋が紅白の司会を初めて担当した2020年、彼が「ブラボー!」を叫んだ歌手は3組だけだった。

Superfly(スーパーフライ)と石川さゆり、MISIA(ミーシャ)である。

大泉洋はこの3人が大好きなのだ。

2021年は7組に「ブラボー!」と声かける大泉洋

2021年の大泉はブラボー連発で7歌手(7組)に掛けている。

郷ひろみ

天童よしみ(大阪桐蔭高校吹奏楽部)

millennium parade(ミレニアムパレード)

細川たかし

石川さゆり

福山雅治

MISIA(ミーシャ)

天童よしみのあとに大阪桐蔭高校吹奏楽部と書いたのは、大泉洋のブラボーはこの後ろで動きつつ演奏した高校生にもかなり向けられていた、とおもったからである。

7組とブラボー大盤振る舞いであった。

2020年と2021年と続けて2年連続で「ブラボー!」の声を掛けたのは

「石川さゆり」と「MISIA(ミーシャ)」

の2人である。

2022年の初ブラボーは鈴木雅之

そして2022年。大泉洋ブラボー時代3年目。

カタールで「ブラボー!」を叫びまくった男、長友佑都を迎えての紅白歌合戦。

大泉洋の最初の「ブラボー!」が出たのは14番目のパフォーマー、鈴木雅之「違う、そうじゃない」が終わったところだった。

時刻は20時10分すぎ「ブラボー! ブラボー!」と連発して「やっぱマーチンは最高だな」と続けた。

大泉洋に「営業ブラボー」の疑い

つづくBE: FIRST(ビーファースト)は、歌唱前に橋本環奈が「実はメンバーのリョウキ(RYOKI)さんが大泉さんを大尊敬しているということで…」と紹介する。

「事前のアンケートによると、発想の角度がユニークで、親しみあふれるオーラも魅力的、いつか作品でも共演したいですとのことです」

「嬉しいなリョウキくん…」

とのやりとりがあった。

そしてパフォーマンスが終わっての「ブラボー! ビーファーストのみなさんありがとうございました! よかったぞリョウキ!」である。

たしかにBE: FIRSTはめっちゃかっこいいとおもうけど、でも大泉のブラボーにはやや「営業ブラボー」の気配を感じてしまったのであった。

IVEにも「ブラボー!」

その3つあとのIVE(アイヴ)は、大泉は最近、音楽番組で一緒に仕事をしたようで、少し仲よさそうだった。

ほぼ10代のアイドルである彼女たちが、楽曲の最後、「愛してごらん」とポーズを決めたところで「ブラボー!」と叫んでいた。

この日、3つめのブラボーだった。

長友佑都に「営業ブラボー」は叫べない

後半に入って2組目「King Gnu(キングヌー)」の楽曲はNHKのサッカーのテーマソングであった。パフォーマンス中にカタールW杯の日本チームの映像が流れる。

長友佑都の出番であった。

大泉洋が「キングヌーのみなさんありがとうございましたーーー!」と叫んだあと、長友が渋く唸るように「ブラボー!」そのあとマイクをおろしたまま「ブラボー!」と言ってしまって、マイクを通っていない。

大泉に「もういっかい言ってもらっていいですか」と言われ、長友は照れて間をあけてから、ブラボー、ブラボーです、と言ってくれて、ちょっと気の毒だ。

橋本環奈に「…ちょっと遠かったですね」といわれてしまう様子で、まあ、長友佑都に「営業ブラボー」は叫べない。

良きタイミングでブラボーお願いしますと頼まれたところで、カタールで叫んでいたのは心の叫びのブラボーであり、それ以外の場所でブラボーをお願いしても、あのブラボーは蘇ってこないのである。そのことを痛感してしまった。

たぶん、日本で一人だけ「長友佑都の魂のブラボー」を衝撃映像として見てなかったのが長友本人なのだろう。

長友に「魂で叫ぶ長友の真似」をしろったって無理なのだと、あらためてわかる。

世界記録達成瞬間に長友が叫んだのは「いや、すごすぎる!」

それは、次の三山ひろしのけん玉でも出てしまった。

けん玉世界記録挑戦、ことしは127人で、みごとに成功。

大泉洋が「成功です!」と叫び、橋本環奈「おめでとうございます」、大泉洋「すごーい!やりました」と来たので橋本環奈は長友に振る。

「長友さん、どうですか!」

けん玉選手たちが跳ね回っている歓喜の場で振られた長友選手の答え。

「いや、すごすぎる!」

うおーい。

日本中の地面が響いて「ブラボーやないんかーい」という音が洩れてきそうだったが、まあ、この人がもっとも長友のブラボーを見てない人だから許してあげてほしい。

間髪入れず大泉は「これブラボーですね」と振ってくれて、長友も「これもう、ブラボーっす!」と答えて、日本の地が鎮まった。

そのあと振られた森保監督は「みなさんの努力が詰まってましたねブラボーです!」

審査員の坂東彌十郎に振ったらひとこと「ブラボーっ!」で、やっぱ長友以外の日本人はあれがみんな耳に残っているのだなと実感する。

「もういいよ」と加山雄三

大泉洋の次のブラボーは85歳の加山雄三。

紅白でのこの歌唱が最後のライブパフォーマンスだそうで、「ありがとうございましたーーー、ブラボーーーーっ!」と大泉洋は叫び、年配の人たちの気持ちを代弁していた。

黒柳徹子は「もっと歌って欲しかった!」と加山雄三に声をかけたが、苦笑して「もういいよ」という反応がもと若大将らしかった。

つづいてSuperfly(スーパーフライ)で、「この流れすごくないですか」と歌唱前から言っていた大泉洋は、演奏が終わったまさにその瞬間に「ブラボーッ! 志帆さん最高でしたっ!」と叫んでいた。

志帆さんってあたりが、ああ、この人はSuperflyを好きなんだねえ、と感じさせる。

加山雄三が大泉ブラボー4つめ、Superflyが5つめになる。

ゆずと関ジャニ∞と氷川きよしに「ブラボー!」

そして6つめが関ジャニ∞(エイト)終わりである。

ゆずと関ジャニ∞が一緒に歌っていたので、両チームに向けたブラボーだった。

「ブラボー! ゆずと関ジャニのみなさんありがとうー、いやあ盛り上がりましたね」と叫んでいた。

7つめは、これを最後に活動休止に入る氷川きよし。

フェニックスに跨がって、なんだか「八岐大蛇と戦うスサノオノミコト」に見えてきそうな勇壮なパフォーマンスで、しかも色っぽいという氷川きよしが歌いきって、迫力がはんぱない。

「ブラーッボーッ! ブラボーー!」と大泉洋。

ここで叫ぶ気持ちはよくわかる。

石川さゆりの歌唱前に長友佑都を召集

8ブラボーめが石川さゆりの天城越え。

歌の始まる前に、すでに大泉洋の隣に長友選手が呼ばれていて、それだけでちょっと笑ってしまった。

橋本環奈が「長友さんに来ていただきました」と紹介すると、大泉は「なにしにきたんですか?」とたじろいだうえに「私が紅白でいちばん楽しみにしているブラボータイムなのに…」と言っている。

櫻井翔は「ブラボータイムってのがあるんですね……これはもしかしたら対決があるかもしれない……」とすでに前フリがたっぷりあった。

長友と大泉の響き合う「ブラボー」連呼

そして、石川さゆりの天城越え。

この曲を年越し直前に聞くと盛り上がるのは何だろう。

そこが一年で一番「天城越え」歌唱が似合う時間帯だとおもうのは、ただの刷り込みにすぎない気もするのだが、でもそう信じている。

石川さゆりが睨みをきかした表情で歌いきると、並んでいた大泉洋と長友佑都、大泉から「ブラボーッ!」、長友が「ブラボー!」、また大泉が「ブラボーッ!」、長友「ブラボー!」、そして二人そろっての「ブラボーッ!」で締めた。

大泉は顔を作っているが、長友の表情は素で、そういうコンビはおもしろい。

大泉と長友の「ブラボー!」の音の出し方の違い

ただ、二人のブラボーの音が違っていることに、このときに気づいた。

大泉は高音で尻上がりに「ブラボー↑」と高くなるのに対して、長友は低い声で「ブラボー↓」と音が下がっていく。

たぶんNHKホールでは大泉の声はよく通るが、ドーハのハリーファ国際スタジアムでは、長友の言い方のほうが通るのだろう(たぶん)。

ドイツ戦のあとも、スペイン戦のあとも、長友のブラボーは最後↓下がる発音であった。(いま、見直した)

徐々に声を大きくしていってたし、見てるこっちも異様に高揚して見ていたので長友ブラボーに興奮したけど、あれは、その言葉で人を高揚させていくものではなかったのだ。長友の高揚がひたすら伝わってくる音だったのだ。

大泉が3年連続ブラボーと叫んだのは「石川さゆり」だけ

というわけで、2022年紅白歌合戦で大泉洋がブラボーと叫んだのは8組。

8ブラボー歌手は以下のとおり。

鈴木雅之

BE: FIRST(ビーファースト)

IVE(アイヴ)

加山雄三

Superfly(スーパーフライ)

ゆずと関ジャニ∞(エイト)

氷川きよし

石川さゆり

以上である。

2020年 Superfly(スーパーフライ)、石川さゆり、MISIA(ミーシャ)

2021年 郷ひろみ、天童よしみ、millennium parade(ミレニアムパレード)、細川たかし、石川さゆり、福山雅治、MISIA(ミーシャ)

なので3年連続、大泉が「ブラボー!」したのは「石川さゆり」である。

彼女が背負った日本の何かの芯に向かって叫んだのかもしれない。

大泉洋はもし司会をしなくなっても、どこにいようと、石川さゆりの紅白の歌唱には必ず「ブラボー!」と叫びそうである。

気持ちはとてもよくわかる。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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