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正月ネタ番組で漫才を見せた回数2位はEXIT 203組中トップは誰か

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:アフロ)

お正月のテレビでは漫才をたくさんやっていた。

ネタ番組もあるが、寄席中継もやっている。

漫才中心の番組は三が日で8つあった(東京エリア)。

正月三が日にテレビで見られたお笑いはのべ203組

1月1日は5番組。

1『ぐるナイおもしろ荘2020』(日テレ)深夜0:30より1時間30分

2『ネタパレ 元旦!売れっ子だらけのネタSP』(フジ)深夜0:45より2時間

3『売れっ子が推す!今年くる芸人 お笑い推して参る!』(テレ東)深夜2:20より3時間10分

4『第53回新春!爆笑ヒットパレード2020』(フジ) 朝7:00より6時間50分

5『笑いの王者が大集結!ドリーム東西ネタ合戦』(TBS)21:00より2時間50分

元日はお笑い番組ばっかりである。

1月2日は2番組。

6『新春!よしもと大爆笑2020』(東京MX)午前11:00より55分

7『新春!お笑い名人寄席』(テレ東)昼13:30より2時間30分

1月3日は1番組。

8『新春生放送!東西笑いの殿堂2020』(NHK)昼13:05より3時間55分

それぞれに大勢の漫才師が出ている。

寄席中継もあるので、ピン芸人や、落語家も出ている。1分だけのネタ見せも含めて、この8番組でネタをやった芸人数は合計203組だった。3が日で203組。大変な数だ。

それぞれの人数は。

1.『おもしろ荘』15組

2.『ネタパレ』24組

3.『推して参る!』36組

4.『ヒットパレード』39組

5.『東西ネタ合戦』32組

6.『よしもと大爆笑』7組

7.『お笑い名人寄席』17組

8.『東西笑いの殿堂』33組

放送時間の合計は8番組で23時間40分になる。見続けたらほぼ丸一日かかることになる。

これだけネタ番組があると、出演者も重なってくる。

203組はのべ組数である。重複をのぞくと出演した芸人は147組だった。

もっとも多くネタを見せたのはナイツ。次いでチャラ漫才のEXIT

その中で、2020年正月、もっとも多く出演していたのは、ナイツ。

8番組のうち5つに出ていた。2と4と5と7と8。

ついでに元日の『笑点』の特別番組でも漫才を披露してたから、三が日でナイツの漫才は6回聞く機会があったわけだ。

正月にぼんやりお笑い番組を見ていた人は、ナイツをたくさん見た気になってしまっていただろう。しっかり見ていたなら、もっと見たことになる。

令和2年のお正月は圧倒的なナイツの時間であった。

ナイツはテレビにも出てるが、寄席にも出てる芸人だ。

寄席という場所は、ふだんは忘れられているのだが、お正月になると日本人はおもいだすことになって、人がいっぱいやってくる。寄席は初詣と同じ季節もの扱いになっているが、でもほんとは一年中やっている。逆に言うと、正月以外はかなり空いているということになる。

テレビ芸人であり、寄席芸人でもあるナイツは、「お正月らしい芸人の代表」ということになるようだ。

ナイツに次いで、お正月のネタ番組に多く出ていたのはEXITだった。

イグジット。

出てたのは4番組。2と3と4と5。

あのヒアウイゴー漫才が、令和2年のお正月の、もうひとつの顔だったのだ。

4番組に出てたのは彼らだけ。

147組のうちの2番めの多さだから、なかなか大したものである。

2020年代の日本のお笑いは、ナイツとイグジットで始まったのだ。2020年代の出口には誰が立っているのかはわからないヒアウイゴー、と、変に真似したくなる言葉の力が、彼らにはある。

いまどきの漫才師として、テレビがとても使いたいタレントだということだ。

四千頭身とまんじゅう大帝国も2020年正月の顔だった

3番組に出ていた漫才師は9組だった。キャリア順に並べる。

オール阪神・巨人。爆笑問題。かまいたち。和牛。インディアンス。ミキ。ハナコ。四千頭身。まんじゅう大帝国。

オール阪神・巨人と、爆笑問題は、これはお正月に欠かせない東西のベテランというところだ。ネタ見せでも、だいたい最後に出てくる大御所である。

かまいたち、和牛、インディアンスは先だってのM−1でも決勝に残った3組である。若手から中堅になっていくあたり、というところだろう。

ミキは2019M−1では惜しくも準決勝で敗退したが、その前年と前々年では決勝で上位に食い込んでいた。ハナコは2018年のキングオブコントの優勝者である(彼らはM−1には出場しない)。

この7組はしっかりといまのお笑い界を支えているメンバーと言えるだろう。

四千頭身とまんじゅう大帝国がけっこう若いところだ。どちらも2016年の結成。

年末年始に何回も見かけた。

四千頭身は見ると忘れられない。

何というか、かなり隙だらけなのだ。3人組だが、どう見ても1人余分のように見えて、実際に2人だけで喋りつづけてあきらかに1人余ってるネタもあって、そういう空気がたまらなく面白い。見てて心地いい。漫才というよりも、緩い空気をほわっと作りだして、見てる人たちをそこに呼んでくれる感じなのだ。ネタ番組では、つい彼らを探してしまう。そういう強さを持っている。かなりテレビ的な芸人さんだとおもう。

まんじゅう大帝国は、かなりオーソドックスな漫才で、そんなに詰め込んだ喋りをしない。見た目やキャラは少し地味なのだが、不思議な設定と、喋りの力でしっかりと聞かせる。顔と芸が覚えにくいという地味さはあるが、これから着実に出てくるとおもわれる。

この11組が「2020年のお正月漫才」の顔だったと言えるだろう。

2番組に出た芸人は28組いる。

2019のM−1チャンピオンのミルクボーイが2つだった。3と4。おもったより少ない。ただまあ去年のM−1の本番は遅かったから(前年より3週遅い)ブッキングしにくかったのかもしれない。

3時のヒロインは「THE W」(女芸人No1決定戦)の優勝者で、彼女たちが出ていたのも2番組だった。3時のヒロインも、まず、はずさない。バランスが見事だとおもう。

2020お笑い界を彩りそうな おぼん・こぼん、餅田コシヒカリ、エイトブリッジ

ベテランとしてはおぼん・こぼんも2番組の出演で、彼らは55年もやっている大ベテランだから正月番組に出て何の違和感もないが、2019年から急に「不仲なコンビ」として注目されるようになってしまい(「水曜日のダウタウン」由来)、おそらく去年までと客の見方が変わっているとおもう。そういう意味で、若い人にとってはかなり「新しく注目する漫才コンビ」として見られていた。実際、生放送で二人を並ばせようとするが並んでいないというシーンもあった。(8『東西笑いの殿堂』)。

ほかに2番組に出ていた若手で印象に残るのは、納言。

男女のコンビで、女性が、あいまあいまにつぶやく東京の都市の悪口が、とにかくおもしろい。実際に赤羽や池袋や高田馬場に出たときに、彼女のセリフをおもいだして、一人笑ってしまう(ないしは同行者にどうしても話したくなってしまう)。人の言葉に影響を与えるコンビなのだ。

203もの漫才(一部、講談や落語)を見ていると、一回見ただけでも衝撃的なコンビもいる。

もっともすごかったのは、駆け抜けて軽トラ。ネットでも話題になっていた。

「ガキ使 絶対に笑ってはいけない」を見ながら年を越して、チャンネルをそのままにしていると始まるのが「ぐるナイのおもしろ荘」で、ここではあまり知られてない芸人が紹介される。

見たことないのに面白い芸人が出てくるので、毎年、見逃せない番組である。

この番組で、今年もっともすごかったのが、駆け抜けて軽トラの餅田コシヒカリ(女芸人)だった。顔がめっちゃ可愛いのに、下半身が相撲取りのような体型で、しかも下半身はとにかく明るい安村と同じような格好をしていて、下ネタである。ちょっと忘れられない。

同番組で見たエイトブリッジもなかなかすごかった(いちおう優勝した)。ボケ役の別府ちゃんは、ひさしぶりに見た本物のようで、落語「鈴ヶ森」に出てくる新米の泥棒を見ているようだった。フリートークを眺めていて、落語を見ているような気分にさせるのは、なかなかすごい。

正月三日間、まとめてネタ番組を見てると、日本の漫才の全体像がそこそこ見えてくる。

いまあげた人たちを中心に2020年のお笑い界が動いていくとおもわれる。

あと、1回しか見なかったなかで、ひさしぶりだけれどやっぱかなり面白いとおもったのは、2丁拳銃だった。「首ガッサー」というツッコミの声がずっと耳から離れない。今年はあと何回か見たいとおもわせる空気があった。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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