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新年度、視力検査ABCDの意味とは?目の健診で知っておくべき事

平松類眼科医
(写真:アフロ)

 新年度となり4月・5月と過ぎてやや落ち着いてきました。健診で視力検査を受けた方もいるでしょう。視力検査を受けた時その意味について解説します。

〇 視力1.0も1.2もたいして違わない理由

 学校・会社で健診があるとき、視力検査を行います。その時「私は1.0でた」「私は1.2見えた」と競う事もあります。けれどもこれは意味がありません。1.0と1.2の視力差はわずかです。けれども0.6と0.8の視力の差はかなり大きいです。

 視力とは「二点弁別閾」といって二つの点が違うという事を区別できる能力をいいます。ランドルト環ともいいますが視力検査でよく使うCの字はCで空いている所が「空いているとわかる」=「2つを点としてとらえられる」というように判別しています。つまりこの「Cの字の幅が狭いものが判別できる」=「Cが小さいものが判別できる」=「視力が良い」となります。つまりはこの日本では視力は小数視力といって「0.1」「0.2」と表示しています。けれども欧米では分数視力といって「20/20」「10/20」という感じの表記をします。ちなみにこれは小数に直せば同じです。

 それ以外にはlogMAR視力といって小数視力をlogで変換した視力というのもあります。ちょっと難しい内容なので詳細は割愛しますが、1.0と1.2、0.6と0.8の違いはこのlogMAR視力で説明ができるものです。

 だからこそ去年は1.2だったのに今年は1.0だったとショックを受ける人がいますがそこはあまり心配しなくてもよいです。そもそも健診の視力検査というのは競うためのものではありません。あくまであなたの目に病気がないかどうかを見るために行うものです。視力が1.0出ていれば視力に問題がある病気である可能性は低い。そのため医者は病気を見分ける時は1.0か1.2か1.5は特に気にしません。

提供:イメージマート

〇 視力が1.0でも安心できないから眼底カメラを

 でも一方で「私は毎年視力が1.0で目がいい」と思っている人が失明原因第一位の緑内障になっている。それも病気が進行している状態である。という事はよくある事です。視力が1.0でているのになぜでしょうか?

 かつては医学が発展しておらず白内障など視力が徐々に落ちる病気で失明することが多かったです。けれども今は医学が発展して視力が徐々に落ちる病気は早期発見され治療も十分に行われることが増えました。そして、治療法がある程度確立されてきました。一方で視力がおちないため早期発見しにくい病気が失明原因となってきたのです。失明原因第一位の緑内障も第二位の糖尿病網膜症も視力が1.0あるのに進みます。

 ではどうすればいいのでしょうか?それは眼底カメラ(眼底検査)を受ける事です。健診の時などにオプションなどで受けられる検査です。目の奥の眼底という所の写真を撮る検査です。この検査をすることで失明原因第一位の緑内障、二位の糖尿病網膜症、三位の網膜色素変性症、四位の加齢黄斑変性なども発見することができます。視力が落ちていなくても緑内障であれば神経に異常が見られます。糖尿病網膜症であれば出血する。というように異常がでているのです。ですから視力だけで安心せずにチェックを受けることが必要になります。健診のオプションに眼底カメラ(眼底検査)がない場合などはどうすればよいのでしょうか?

 それはちょっとしたときに眼科に行って確認してもらう事です。特に眼鏡を作成するときは眼科にかかる良い機会です。眼鏡は眼科にいかず眼鏡店でつくるかたもいます。けれどもそれだと目の奥に病気があっても発見ができません。眼科医が診察すれば眼底もチェックしてくれることが多く、緑内障など病気を発見することができます。

提供:イメージマート

〇 子供の視力今はABCDになったわけ

 健診というと子供の視力も心配です。以前は学校健診の後に、視力が1.0だった。とかいっていましたし、1.2や1.5でるかどうか頑張っていた経験があるのではないでしょうか?けれども今は視力検査の結果はABCDで表示されるようになりました。個人情報に配慮、というわけではなくて合理的な理由から4つに分けられたのです。

 ちなみにAが1.0以上、Bが0.7以上、Cが0.3以上、Dがそれ以下となります。ではどこから眼科受診が推奨されるか?というとBからです。0.7や0.8視力が出ていても眼科に受診することを勧められます。Bぐらいだと悪くないから眼科に行かなくてもいいのでは?と思う親御さんもいますがそんなことはありません。大切なのは1.0視力がでているかどうかなのです。1.0出ていなければ子供であっても何らかの病気を抱えている事があります。むしろ子供の場合は弱視など特有の状態もあるので重要なのです。ではBが0.7で分かれているのはなぜかというと0.7以上でていれば授業の黒板が見えると言われているからです。学年により板書の文字の大きさも変わりますが0.7でていれば前の席でも後ろの席でも板書が確認できるでしょう。ではCが0.3で分かれている理由は何か?というと0.3を切ってくると多少配慮しても授業中の板書をみて授業についていくのがなかなか難しくなってくるからです。

 あなたも子供の時に「目が悪いから前の席を希望する」という人がいたのを覚えているかもしれません。仮にメガネをかけない視力が0.5でメガネをかけた視力が1.0であった場合、病気ではないために眼科医も学校の先生も強くメガネの使用を強制することができません。そのため席を前にするなどの方法で対処していました。けれども0.3を切ってくると前の席でも難しいために眼鏡の使用に対して消極的な親御さんであってもぜひ考えてほしいという事があってこのように分かれているのです。

 このように分けたことでこれまで0.6なのか0.7なのかなど学校で視力を細かく測る必要がなくなりました。1.0と0.7と0.3だけ調べれば検査が終わるので学校側も楽になるという合理性もあったのです。

眼科医

医師・医学博士・眼科専門医・昭和大学兼任講師。海外および全国(北海道から沖縄まで)から患者さんが集まっている。登録者6万人以上のYouTube「眼科医平松類チャンネル」にて日々目の健康情報を発信。日経Goodayなどに連載。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等メディアにても情報発信をおこなっている。著書に「1日3分見るだけでぐんぐん目が良くなる!ガボール・アイ」「緑内障の最新治療」など多数あり、累計50万部以上。

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