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目薬をさした後にパチパチはNG 花粉が飛散し始めた今知りたい正しい目薬のさし方

平松類眼科医
(写真:イメージマート)

 一般的に花粉の飛散量がひどくなるのは、2~4月といわれています。いわゆる花粉症の季節です。ここで言う花粉症とは、スギ花粉によるものをさします。ケアや目薬の使い方などは他の花粉でも一緒です。ではなぜ「花粉症」=「スギ花粉」と思われているか。それは花粉症の人の70%が、スギ花粉だからです。

〇 花粉症は北海道・沖縄ではほとんどない

 花粉症は日本のすべての人を悩ませている、と思っているかもしれません。有病率では全国で花粉症の方は15.6%もいるといわれています。1)

 しかし、北海道や沖縄ではスギ花粉による花粉症の患者さんはわずかです。これは北海道にはスギ花粉の飛散は極めて少なく、沖縄ではスギがほぼ生息していないからです。もちろんこれはスギ花粉に限ったことであって、その他の花粉はあるので、花粉症がないわけではありません。また花粉症以外のアレルギー性鼻炎・結膜炎はあります。ハウスダストやダニなどは変わらないわけです。しかし花粉症という点では、このように地域差もあります。

 同時に、花粉症になる時期も微妙に地域差が出てきます。桜前線などと同様に、北に行くほど少し時期がおくれます。一方、九州など南に行くほどやや早くなり、九州~関西だと花粉症といえば2~3月、中部になると4月にかかってきます。さらに東北になると5月一杯かかります。もちろん桜前線と同じで、その年の気候によって変わってきます。結局、毎年2月~3月には花粉症を意識しなくてはいけない、というのはどこの地域でもいえることです。

提供:イメージマート

〇 花粉症の対策を始めるのはいつがいいのか?

 今年の花粉シーズンはいつからなのか?というのは日本気象協会からも発表されています。2) そちらをご参照いただければと思います。ではどのぐらいの時期から花粉症対策をしたらいいのか。現時点では、答えが「なるべく早く」ということになります。理想的には1月下旬ごろから対策を始めた方がいいといわれており、なぜ花粉が飛散する前から対策をする方が良いのでしょうか?

 そもそも花粉症とは、花粉という「本来問題ないもの」に対して体が「異常に反応してしまう」というものです。近年、免疫反応(ウイルスや細菌などを排除する機能) が注目されています。花粉症はその免疫反応が暴走して、本来は攻撃するべきではない所を攻撃してしまうことを言います。

 鼻や目の粘膜に仮に花粉がついたからといって、命に別状はありません。花粉は、ウイルスや細菌ではないからです。けれども花粉症は、それに過剰反応する病気です。過剰反応を起こしてしまってから対処するよりは、起こす前に対処した方が、効果は高いのです。炎症が起きてそれを鎮静化させるとなると、薬など医学的な力がある程度必要になりますが、それに比べて事前に花粉を目に・鼻に入れないようにするという対処は、まだ容易いといえます。痒くなる前に点眼薬を使用したほうが効果が高くなります。また、薬による対処の場合も、花粉症の症状が出てからよりは出る前の方が良いといわれています。

〇 目薬の選び方・使い方

 花粉症のお薬が、現在は沢山でており、市販薬でも簡単に買えるようになりました。特にスイッチOTCといって以前は処方薬であったけれども、現在は処方箋なしに購入できるような薬がでてきています。また、そこまでの効果はなくても花粉症・アレルギー性結膜炎に対する市販の目薬もあります。どの目薬がいいのでしょうか?

 できればまずは眼科・耳鼻科に行って診断・処方を受けることをお勧めします。スイッチOTCがあるのになぜでしょうか? スイッチOTCは「かつて処方薬であった薬」であり、現在処方薬としてある目薬などは、それより効果が高い、または副作用が少ないなど、メリットがあることが多いからです。また実際に診断を受けてみると「実は花粉症ではなかった」ということ事があります。例えば、花粉症だと思っていたら、実は感染性の結膜炎で、他の治療が必要だったということがあります。

 とはいえ、忙しくて病院に行けなかったり、すでに花粉症の診断を受けていたりする場合はスイッチOTCなどを利用することが一つの解決策になります。しかし、せっかくいい薬をつかってもその点眼の仕方を正しく知らなければ効果は半減します。

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〇 目薬をさして目をぱちぱちしてはいけない

 目薬の使い方というのを習ったことがあるでしょうか? 実は、多くの日本人は目薬のさし方を正式に習ったことがありません。そのため間違った目薬のさし方をして、効果をさげてしまっているという現状があります。では代表的な間違いとは、何でしょうか? 例えば目薬をさした後、目をぱちぱちするということです。

 目をぱちぱちする患者さんは、本当に多いです。「なぜ目をぱちぱちするのですか?」と聞くと特に誰に習ったわけでもなく「その方が目薬が全体にいきわたる気がするから。」というのがお答えです。確かに目薬が目に入ったか心配。入ったと目を閉じ、その後、目薬が全体にいきわたるように繰り返しぱちぱちすれば、すみずみまで届く気がします。

 けれども、実はむしろ逆効果になります。人間は瞬きをすると、涙を分泌させます。涙が分泌されてその涙は目の表面を覆い、そして鼻から口へと流れていってしまいます。良くある目薬をさした後に苦い味がした、というのは目薬が鼻を通って、口に向かっているからです。瞬きをしっかりすると、この鼻から口へと流れる流れを促進させます。

 結果としてどんどん目薬の濃度を薄めているような行為になるのです。一生懸命目薬を効かせようとして、逆に効かないようにしているというのが現実です。実際に、目薬のさし方一つで効果が変わるという研究もあります。3)なので目を閉じて1~5分休んでいただくのがよいのです。

 またティッシュで目頭や目じりを拭く行為もさけましょう。目薬があふれ出るのを防ぐためかとは思いますが目頭や目じりにティッシュを置くと、目に入った目薬ごと吸収してしまいます。ティッシュなどでふく場合は、目からあふれ出たものを拭くようにしましょう。

 また、もし花粉症の目薬以外に何種類か目薬をさしている場合は、どうすればいいのでしょうか? 目薬をさして、その後すぐに次の目薬をさすと、最初の目薬が流れてしまいます。そこで、できれば5分間隔をあけられるとよいです。

 正しい目薬のさし方を知ってより快適な生活をおくっていただければと思います。

1)https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html

2)https://tenki.jp/forecaster/tanaka_masashi/2022/02/17/16156.html

3)植田俊彦・笹元威宏・平松類ら:緑内障における患者教育が眼圧下降とその持続に及ぼす効果.あたらしい眼科 2011 28(10), 1491-1494,

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

眼科医

医師・医学博士・眼科専門医・昭和大学兼任講師。海外および全国(北海道から沖縄まで)から患者さんが集まっている。登録者6万人以上のYouTube「眼科医平松類チャンネル」にて日々目の健康情報を発信。日経Goodayなどに連載。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等メディアにても情報発信をおこなっている。著書に「1日3分見るだけでぐんぐん目が良くなる!ガボール・アイ」「緑内障の最新治療」など多数あり、累計50万部以上。

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