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10年に1度の記録的な低温の予報。大規模な断水の盲点「空き家」の存在に注意

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
(写真:イメージマート)

水道管はマイナス4度以下で凍結

気象庁が「低温に関する早期天候情報」を発表した。下の図のように、北海道、東北、北陸は1月22日頃から、九州北部、九州南部、中国、四国、近畿、東海、関東甲信は1月23日頃から「かなりの低温」が予想されている。

気象庁WEBサイトより https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/souten/?reg_no=0
気象庁WEBサイトより https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/souten/?reg_no=0

水道管はマイナス4度以下で凍結する可能性が高い。屋外でむきだしになっている管(給湯器に接続している管など)、北向き、日陰、風当たりの強いところの栓(散水栓、給湯器の栓など)、屋内でも外気の影響を受けやすい場所にある水まわり(洗面所やトイレの蛇口や管など)などは凍結しやすい。水道管内に残っている水が凍って膨張し管の破損につながる。保温材や保温チューブ、凍結防止ヒーターなどを取り付けるなどの対策が必要だろう。

具体的な対策は以下にまとめたので参照してほしい。

Yahoo!ニュース「都心でも2018年1月以来の低温。水道管の凍結の対策まとめ。5年前は水道局への問い合わせ2100件超」

空き家の総数は全国で849万戸

一方で対策が難しいのが空き家だろう。空き家で水道管の破裂によって漏水が起きても、誰も気づかないため発見が遅れる。数軒で漏水が重なると水道水を貯めている配水池などの水がなくなり、空き家周辺で断水が発生し、被害が広範囲におよぶこともある。

2016年1月、九州、中国、四国地方で、寒波にともなう水道管破裂で約29万世帯に上る大規模な断水が発生したときには、空き家の漏水が問題になった。2018年1月に能登地方で約1万世帯で断水が発生したときにも、複数の空き家の水道管破裂に気づかず漏水が続き、被害が拡大したとみられている。

総務省「住宅・土地統計調査」(2019年)によると、空き家の総数は849万戸。この20年で約1.5倍に増加した。

空き家は「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅(別荘など)」「その他住宅」に分類されており、「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」などは比較的対策しやすい。

最も問題となるのは「その他住宅」だろう。これは転勤などの理由で長期間不在になっていたり、実家の両親が亡くなってから放置されているような住宅で、全国に349万戸ある。

空き家の水道管対策は?

空き家で水道管が破裂すると「水が流しっぱなし」の状態になるので多額の水道料金がかかるし、水漏れから家屋や備え付けの機器などの破損、腐食につながる。また、複数の空き家で水道管破損が重なると、前述のように地域の断水の原因になる。

では、どうしたらいいか。

自治体によっては水道局が空き家の止水栓(水の元栓)を閉めるなどの対策をすることもあるが、給水装置(道路に埋設された配水管から分岐して各家庭へ水道水を引き込むための給水管や、これに直結している蛇口など)は個人の所有物で、個人が管理しなくてはならない。

空き家まで出かけ、むき出しの水道管に保温カバーを巻く、水道メーター付近の保温カバーを設置するなどの対策を行う。また、長期にわたって水道を使用しない場合は止水栓を閉める。このときすべての蛇口から水が出ないことを確認する。水道管内部の水をすべて出し切っておけば水道管の凍結を防ぐことができる。

水道契約止める?止めない?

水道契約は止めるべきという意見もあるが、一長一短あるので慎重に考えたほうがいい。

定期的に訪問し管理できるなら、契約を継続し、前述のような凍結対策を行う。

定期的に訪問できない場合は、解約も考えなければならない。この場合、蛇口から水を出して水道管のなかを空にする。ただし、水道管が劣化したり、においや害虫が発生する場合がある。排水口をガムテープなどでふさぐなどの対策が必要になる。

寒波が襲ってくる前に対策が必要だ。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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