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同じ茶葉でも味・色・香りは湯で変わる~「お茶の記念日」4つ集中、今週末の豆知識

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
同じ茶葉でも水のさまざまな要素によって、お茶の色、味は変わる(著者撮影)

お茶の味を左右する水質の要素は、硬度、pH、鉄分

10月31日は「日本茶の日」、11月1日は「お茶の日」「紅茶の日」「玄米茶の日」。最近ではペットボトルのお茶が普及しているが、休日にのんびりと急須でお茶を入れてみるのもいい。

 お茶の味は、茶葉はもちろんだが、水によっても左右される。「茶は水が詮」ということわざがある。「詮」とは、なくてはならない大事なもの。「良い茶を上手に入れるときは良い水を選ぶことが大事」、どんなに良質なお茶であっても、水がまずくてはせっかくの風味も台無しになると教えである。

 いにしえの茶人は、お茶にあった水を求めて、全国各地を歩いたという。うまい水の湧き出る泉、名高い井戸水を求め、各地を行脚した。そうした茶人は名水が手に入ると「名水点」を行なった。ふだん使う井戸や近くの川の水ではなく、名水を使うときは、水指に注連縄を張って客を迎えた。客は、名水のもてなしへの返礼として、茶を点ててもらう前に、まず水そのものを所望し味わうのが作法だったという。

 お茶の味を左右する水質の要素は、硬度、pH、鉄分など。

 硬度の高い水とは、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのミネラル分が豊富にとけこんだ水。一般的に、日本の水はミネラルが少ないが、各地の水を細かく見ていくと、水の湧き出す地質によって硬度は変わる。日本茶には硬度10〜50程度の軟水がよいとされる。硬度の高い水で入れると、ミネラル分がお茶の成分であるカフェイン、カテキンと反応して味が淡白になり、香りが減る。お茶の色も濁る。

 pHとは、酸性、中性、アルカリ性を示す指標。pH7が中性、pH7以下を酸性、pH7以上をアルカリ性とよぶ。水道水など口にする多くの水は中性だが、湧き水のなかには弱酸性、弱アルカリ性のものもある。酸性の水でお茶を入れるとお茶の色が薄くなり、味は酸味を感じる。アルカリ性の水だとお茶の色は赤褐色になり、苦味を感じる。

 鉄、マンガンなどは蒸発残留物とも言われる。水を沸騰させても蒸発しないからだ。1リットル中に30〜200mg含まれているのが理想とされるが、多いと金気を感じ、お茶の色は黒褐色となる。

 冒頭の写真のように、同じ茶葉でも水のさまざまな要素によって、お茶の色、味は変わる。

お湯の温度で渋み、香り、旨味が変わる

 もう1つ重要なのがお茶を入れるお湯の温度である。お湯の温度によってポリフェノール、アミノ酸の溶出量が変わり、味に変化が出る。ポリフェノールはお湯の温度が高いほど溶出し、渋みが強くなる。アミノ酸は、高温だと香りが強くなり、低温だと旨味が強くなる。

 玄米茶、ほうじ茶は、100近い沸騰したお湯で入れると、香りを楽しむことができる。

 煎茶は85程度のお湯で入れると、香りもよく、渋み、旨味も楽しめる。

 上煎茶は70程度のお湯で入れると、旨味と適度な渋みを楽しむことができる。

 玉露は55程度のお湯で入れると、旨味を楽しむことができる。

 水質を変えるのはむずかしいが、温度の調整は家庭でもできる。温度による渋み、香り、旨味の違いを楽しみたい。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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