Yahoo!ニュース

一番離婚が多いのはなんと30代!我慢すべき?それとも決断すべき⁈【離婚弁護士がリアルを解説】

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:イメージマート)

1 はじめに

厚生労働省の令和4年度人口動態統計(確定数)の概況によると、離婚率は、夫が昭和 55 年以降「30~34 歳」が最も高くなっており、妻は平成12年までは「25~29歳」が最も高かったのですが、平成17年以降「30~34歳」が最も高くなっているとのことです。

30代というのは、もっとも離婚率の高い世代だということになります。

私は、兵庫県西宮市で家事事件を中心として扱う事務所を経営する弁護士ですが、確かに離婚相談に来られる方の年齢は、年を追うごとに徐々に若くなりつつあると感じます。

一般的に、結婚と比べて離婚は10倍のエネルギーがいるとも言われています。

今回は、30代の夫婦が離婚をする際にどのような点に注意するべきか、また30代の離婚にはどのようなメリット・デメリットがあるかについて解説していきます。

2 30代の離婚で注意すべきこと

30代の夫婦の離婚相談でよくあるのは、次のようなケースです。

(ケース1)夫の転勤で地方に行ったが、友人もおらず、子供と2人で毎日が孤独。精神的に追いつめられて実家に帰ったところ両親は喜んで迎え入れてくれた。祖父母が手伝ってくれるため子育ては楽だし、地元に友人はたくさんいる。弁護士費用は親が出してくれて、現在、離婚調停中。夫とやり直すつもりはないのに、夫は納得できない、離婚するなら子の親権は自分がとるなどと言って離婚に応じてくれない。(30代女性、専業主婦)

(ケース2)共働きのキャリア志向の夫婦。妻とは学生時代から交際し、何でも相談できる友人のような間柄だった。だが、子供に関することで意見が対立。自分は子供が欲しいのに、妻はキャリアを優先し、もう少し後でいいという。女性には出産にタイムリミットがあるといっても、聞く耳をもたない。妻とは離婚し、新しいパートナーを探したほうがいいのか、実家の両親に早く孫の顔が見たいなどと急かされていることもあり、真剣に離婚を考えている(30代金融、男性)

30代は責任のある仕事を任される時期です。

仕事が忙しくなったり、地方転勤や海外赴任したりすることで、夫婦の間にすれ違いが生じて離婚に至るケースはよく見られます。

子供に関する考え方に相違があったり、性格や価値観の違いが浮き彫りになって、もしやり直すなら早い方がいいと決断する人もいるでしょう。

30代で離婚するにあたって注意すべき点をご説明します。

 (子供のこと)

写真:アフロ

子供がいる場合は、まだ幼い年齢であることがほとんどでしょう。

子の親権をどちらが取得するかで揉めた場合、母親が有利だと最初からあきらめてしまう男性も多いかもしれません。

確かに、ケース1のように母親が専業主婦でワンオペ育児をしていた場合はどうしても父親が不利になりますが、親権獲得には、同居していた時にどちらが主に子供を監護していたかがポイントとなります。

必ずしも母親有利とは限りませんので、親権獲得を目指す場合には早めに専門家に相談することをおすすめします。

養育費の支払いも問題となってきます。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/49f8a11e8340b37e1a7e7f16dd1ddc753abc8057

養育費は、お互いの年収、子供の数と年齢をもとに裁判所が作成した「算定表」を参考に決まることが多いです。

子供が自立するまでにはまだまだ時間がありますので、養育費は安易に妥協せず、よく話し合いをすることが重要です。

法律改正によって成人年齢は18歳となりましたが、子供が経済的に自立するまでは「未成熟子」として養育費を支払うべきであるというのが実務の考え方となっています。

(お金のこと)

写真:アフロ

30代では婚姻年数も比較的少ないため、夫婦で形成した財産がそれほどないケースが多いです。

ですので、財産分与ではあまり揉めることもないといえますが、自宅不動産をローンで購入した場合は少々厄介です。

フルローンの場合、ローンのほとんどがまだ残っています。

自宅を売却するのか、夫婦のどちらかが住み続けるのか…。

自宅を売却した場合、売却金額よりローン額が多かった場合(いわゆる「オーバーローン」の状態)には財産分与はありません。

もしくは夫名義の住宅ローンがある自宅不動産に妻が住み続ける場合、ローンは誰が支払うのか。妻に経済力があればローンの借り換えも可能ですが、30代では借り換えが難しいケースがほとんどです。

名義変更にはローン会社が応じないことが予想できるため、夫と妻の間で賃貸借契約を結び、家賃相当額を妻が夫に支払うなどの方法も実際にあります。

早めに専門家に相談することをおすすめします。

3 30代の離婚のメリットとデメリット

30代の離婚のメリットは何といってもやり直しが十分にきくということです。

結婚退職をしていた女性でも、就職が比較的容易で、経済的にそれほど不利にはなりません。

また、お互い新たなパートナーも見つけやすいですし、結婚に対する執着も他の年代に比べて小さいと思われます。

一方、デメリットとしては、主に男性の場合が多いのですが、子供との面会交流が難しくなる可能性があります。

養育費についても先が長いため、「不払い問題」が生じやすいのがデメリットです。

養育費を確実に支払ってもらうためにも、公正証書の作成または裁判手続きを介しておいて、いざとなったら給与差押えができるようにしておくとよいでしょう。

4 終わりに

熟年離婚をした方がよく言われることなのですが、「30代で最初に離婚を考えたとき、子供が小さかったから我慢しようと思ったけれど失敗だった、結局相手は何も変わらなかった。あのとき我慢しなければよかった」というもの。

何度も言いますが、30代はまだまだやり直しがきく年代です。

この先ずっと我慢して窮屈な結婚生活を送るよりも、「このパートナーとは合わない」と思ったら、早めに決断することをおすすめします。

ただ、その際に注意していただきたいのは、離婚を決断する前に十分な時間を取り、夫婦で話し合いの機会を持っていただきたいということ

お互いをよく理解しないまま、離婚という結論を下すことには慎重になった方がよいかと思います。

実際に、週に1度は無理をしてでも夫婦共有の時間を作ってみたら、相手の知らない面を発見し、離婚を思いとどまったというご夫婦もいらっしゃいます。

いずれにせよ、一度しかない人生、後悔のない決断をしていただきたいと願ってやみません。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

後藤千絵の最近の記事