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【離婚弁護士が教える】相手のモラハラや不倫が原因の離婚時の上手な切り出し方

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:アフロ)

1 はじめに

別れを切り出す時は、誰しも悩むもの。

私は兵庫県西宮市で家事事件を中心とする法律事務所を経営している弁護士ですが、離婚の切り出し方について、どうすれば相手を納得させて円満離婚にもっていけるか、アドバイスを求められることがよくあります。

そこで、今回は、円満離婚をするための離婚の上手な切り出し方をご紹介したいと思います。

2 一般的な離婚の切り出し方

まずは、一般的な離婚の切り出し方のポイントをご説明しましょう。

最近は、離婚を切り出す際に、メールやLINEで離婚の意思を伝える方も少なからずいらっしゃいます。

写真:イメージマート

面と向かって切り出すことに抵抗がある方は、メールやLINE、電話や手紙で離婚の意思を伝えても問題ありません。

ただ、メールやLINEで離婚の意思を伝えた場合、返事がなかったり、「軽く見られている」「バカにされている」と憤りを感じる方もいるようです。

そうなると、円満離婚までもっていくのは難しくなります。

そこでまずは、「話したいことがあるので時間を作ってほしい」と誠実に相手にもちかけることをおすすめします。お子さんがいらっしゃる場合は、夫婦2人で話し合える機会を作ってもらうようにした方がいいでしょう。

実は、この一手間をかけることが重要なのです。

次に、実際に話し合いの機会を作ってもらった場合には、どのように相手に離婚を切り出すかです。

一般的な観点から言うと、以下の3点に注意するとよいでしょう。

①あくまで冷静に話をもちかけ、絶対に感情的にならないこと。

②相手を納得させる離婚原因をできるだけ具体的に説明すること。

③相手を非難したり批判したりするのではなく、相手に対する敬意を失わないこと

つまり、決して感情的になることなく、「なぜ離婚したいのか」を相手が納得するような具体的なエピソードを交えながら、丁寧に説明することを心がけるのです。

感情的になって、相手を責めたり、誹謗中傷したりすることはできるだけ避けた方がいいでしょう。

あらかじめ言いたいことを紙にまとめておくことは、自分の気持ちを整理する意味でもかなり有効な方法です。

また1度の話し合いで決着がつくことを期待しない方がいいかもしれません。

焦りは禁物です。

相手にとっては、あなたからの離婚話は全く予想していなかった―まさに青天の霹靂の出来事かもしれないのです。

そのような場合は、相手にも考える時間が必要ですから、「〇日までに考えておいてほしい」と期限を区切って(1週間~10日程度でよいと思います)次回の話し合いの日を決めることができればベストです。

以上が一般的な離婚の切り出し方ですが、相手にモラハラやDVの傾向があったり、不倫をしていたりした場合には、相応の対策や配慮が必要です。

今回は「モラハラ・不倫」に限定して、タイプ別に解説していきます。

3 タイプ別(モラハラ・不倫)の離婚の切り出し方

配偶者がモラハラ夫/妻の場合

配偶者にモラハラやDVの傾向がある場合には、特に注意が必要です。

写真:アフロ

モラハラの特徴は、相手をコントロールすることだと言われています。

相手に対する人格攻撃や暴言を繰り返すことで、相手の自己肯定感を下げ、自分の言うことを聞くように仕向けるモラハラ夫/妻は、現に多数存在します。

このような相手には、そもそもあなたから離婚を切り出した方がいいのか、または自らは離婚を切り出さず弁護士に依頼して離婚の手続きに入る方がいいのか、できれば事前に判断しておいた方がいいでしょう。

自分から離婚を切り出したところで相手が納得するはずがないと思うのであれば、無理をせずに弁護士などの第三者を頼った方がいいかもしれません。

離婚を切り出す前には、一度は法律相談を受けておくことをおすすめします。

一方、あくまでご自身で、モラハラ夫/妻に離婚を切り出す場合は、前述した点に加えて周到な事前準備が必要となってきます。

モラハラ夫/妻は、あなたからの離婚話に全く耳を傾けなかったり、反論や攻撃をしてきたりすることが予測されます。

その場合、離婚の意思が固いこと、そのような結論に至った理由をより具体的に説明して、相手の理解を得る必要があります。

当然、1度の説明では相手は納得しないでしょうから、長期戦を覚悟しなければなりません。

離婚の原因となる理由を粘り強く説明し、反論されても負けずにすぐに再反論できるようにしておく必要があります。

実務上、アドバイスしている点をいくつか紹介します。

①モラハラの配偶者の前では萎縮しがちだが、「離婚したい」旨をはっきりと告げて、離婚の決意が固いことをわかってもらう。「難しいと思う」「もうやっていけない」と言った曖昧な表現は避けた方がベター。

②反論された場合に備えて、具体的な理由を事前に準備する。日頃から相手のモラハラの言動を記録しておくとよい。ただし、モラハラの言動の全てを相手に伝えるのではなく、離婚を決意する決め手となった代表的な出来事を3つ程度伝えるのがよい。

③話し合いをスマホやICレコーダーに録音・録画したり、メモに記録したりしておく

④離婚手続きを依頼しなくても、弁護士には法律相談だけすることもできるので、継続して相談できる離婚に強い弁護士を探しておき、相談しながら進めるのがおすすめ。弁護士や親族・友人に法律面・精神面をサポートしてもらえる環境作りをしておくことは、モラハラ夫/妻を相手にする上で、後々力を発揮する。

相手が不倫をしている場合

相手が不倫をしている場合は、必ず不倫の証拠を集めてから、離婚を切り出すようにしましょう。それが鉄則です。

写真:イメージマート

相手の不倫を確信しても、証拠がないまま離婚を切り出すと、当然相手は否定してくるでしょうし、その後は警戒されて証拠を集めるのが難しくなります。

不倫の証拠としては、例えば以下のものが挙げられます。

①肉体関係を推測させるLINEやメールのやり取り

②性交渉を撮影した写真・動画や録音データ

③ホテルやラブホテルの領収書や回数券、ポイントカード

④探偵や興信所の調査報告書

⑤不倫相手と会ったことが記載してあるスケジュール帳や日記

1つだけでは決め手にならなくても、複数集めておけば、訴訟では総合的に判断してもらえるケースもあります。あきらめずに証拠を集めましょう。

なお、離婚を切り出すタイミングで、相手がしらを切った場合、証拠を突き付けるかどうかの判断はケースバイケースです。

最初から、すでに証拠を押さえていると言った方がいいケースもありますし、後から提示した方が効果的な場合もあります。ケースごとに違いますので、証拠の提示の仕方には慎重さが求められます。

この点も、事前に弁護士等の専門家に相談しておくことをおすすめします。                             

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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