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お盆休みの帰省がきっかけで離婚に発展⁈【離婚弁護士がリアルを解説】

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:イメージマート)

1 はじめに

もうすぐお盆休み。

コロナも5類になり、お盆には久々に旅行がてら、義理の両親や親戚がいる田舎に帰省する予定の方も多いと思います。

ただ、義実家への帰省は正直なところ少し気が重い…と今からストレスを感じて憂鬱になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

写真:アフロ

私は、兵庫県西宮市で家事事件を中心とする法律事務所を経営する弁護士ですが、夏休みや春休み、GWや年末年始などの長期休みの前後は離婚相談が増える傾向にあります。

相談者はほとんどが女性です。

相談内容は、例えば…

夫の実家は本家筋なので、お盆に親戚一同が集まり宴会をするのが毎年の恒例行事です。私は長男の嫁として一日中こき使われ、休むどころかストレスがピークになります。仕事をしている私にとって長期の休みは日頃のストレスを発散する貴重な時間なのに、休む暇など全くなく、逆にストレスがたまる一方です。もう夫の実家には二度と行きたくありません(40代女性)

たいして親しくもない義理の親族と何を話していいかわからないし、酒のお酌を強要されるなど、職場では考えられないハラスメントの嵐で、本当にうんざりです(30代女性)

気の合わない義理の両親と長時間過ごさないといけないのが苦痛で仕方ありません。夫は地元の友達と遊びに行ってしまい、義実家に一人取り残されて何もすることがなく、毎年ボーっと過ごしています(20代女性)

などと言ったことが原因で、離婚を考え始めたというのです。

離婚を考えるきっかけは人によって様々です。

ただ、お盆休みの義実家への帰省が引き金となって、離婚を決意したという方は少なからずいらっしゃいます。

離婚を決意するまではいかなくても、夫婦仲が険悪になり、帰りの車の中では口も利かず、せっかくのお盆休みが台無しになった経験がある方は多いのではないでしょうか。

2 どちらの実家に帰省するかで夫婦仲が険悪に?

義実家への帰省については、嫁姑問題なども相まって妻側に不満が多くみられ、2021年の司法統計によると「家族・親族と折り合いが悪い」女性の離婚原因の10位にランクインしています。

ところが、意外なことに「家族・親族と折り合いが悪い」という離婚原因は、男性ではなんと4位にランクインしており、女性に比べてかなり上位になっているのです。(※「令和3年 司法統計年報(家事編) 第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別申立人別」参照)

A子さん夫婦の例をご紹介しましょう(※守秘義務の関係上、内容を一部変更しております。ご了承ください。)

夫の転勤で関西に引っ越してきたA子さん夫婦。

写真:アフロ

A子さんは静岡県出身で、夫は隣の愛知県出身です。

A子さん夫婦は、お盆休みにはどちらの実家に先に帰省するか、何日滞在するかで、お互いの実家を巻き込んだ結構なバトルに発展するそうなのです。

結局、夫の実家に3日、その後A子さんの実家に2日という段取りで話がつきました。

そして、お盆休みの当日。

関西から愛知県には、毎年車で帰省するA子さん夫婦は渋滞に巻き込まれながら、普段の倍以上の時間をかけて、まずは夫の実家に到着しました。

着いたからといってA子さんにはゆっくりしている暇はありません。すぐに晩御飯の支度を手伝わされます。

一方、夫は実家に来たことをいいことにのんびりして一切A子さんを手伝わず、ビールを飲みながら寝ころんでテレビを見ており、A子さんのイライラは日に日に募るばかり。

帰省3日目の夜、ようやく明日は静岡の自分の実家に帰れるとほっとしていた矢先に、義母がとんでもない提案をしてきたのです。

明日の夜は親戚一同を集めてバーベキューをしたい、一日くらい予定を伸ばしてもいいでしょう、と。

気力と体力の限界を感じていたA子さんはついカッとなって、「そんなの無理!!約束が違います!私は予定通り、明日静岡に行きますので!」と義母に向かってブチ切れてしまいました。

義母がムッとして不機嫌になったのは言うまでもありません。

結果的に、A子さん夫婦は予定通り、静岡のA子さんの実家へと向かったのですが、夫は急な仕事ができたと言って、A子さんを送り届けるとそのまま車で帰ってしまいました。

事件が起こったのは、お盆休みの最終日。

なんと、夫が「あれから家族で話し合ったけど、僕の家族を大切にしない君とはもうやっていけない。離婚してほしい」というメールを送ってきたのです。

電話をしても繋がらず、「弁護士を立てたから、これからはそちらに連絡してほしい」とメールで法律事務所名と弁護士の名前だけ知らせてきました。

それまではなんだかんだ仲良くやってきたのに、急に離婚なんて言われても…とA子さんは途方に暮れました。夫はそのままA子さんと住んでいた自宅には戻らず、A子さんの意に反して別居が始まってしまいました。

3 「家族・親族と折り合いが悪い」という離婚原因が男性の上位にランクインする理由は?

前述のランキングの通り、男性は、家族・親族との折り合いの悪さが離婚を決意する原因になりやすい傾向にあります。

写真:アフロ

女性よりも、義実家を含めた家族・親族関係に敏感であると言えるでしょう。

特に自分の両親の意見を素直に聞き入れる面があります。

自分の両親と妻との関係が悪化すると、妻より両親を優先させて、離婚を決意する男性は一定数います。

私のクライアントの中でも、妻のファザコンが原因で離婚に至ったケースよりも、夫のマザコンが原因で離婚に至ったケースの方が圧倒的に多いです。

せっかくのお盆休みに行きたくもない夫の実家にわざわざ行って、義理の母親にキレてしまい、嫁姑の仲がこじれてしまうという事態は、できれば避けた方がよさそうです。

それならお互いの実家に別々に帰省した方がまだマシというもの。

実家から遠方に住んでいる夫婦にとって、お盆休みの帰省は、義父母と直接顔をあわせる数少ない機会です。

それだけに、万が一にもA子さんのように即別居と言った事態に発展しないように、帰省の方法について夫婦でよく話し合った方がいいでしょう。

4 終わりに

写真:アフロ

お盆休みがきっかけで離婚争議に発展する例は数多くあります。

ポイントはずばり「日頃の家族親族との関係性」です。

普段から折り合いが悪かったり、ぎくしゃくしている場合は特に注意が必要です。

前述のように「家族・親族と折り合いが悪い」というのが、男女とも離婚原因の上位になっていることを理解しておかなくてはなりません。

そしてお盆休みはこの問題がクローズアップされやすい時期なのです。

離婚が頭をよぎったら、まずは弁護士等の専門家に相談してから行動を起こすことをおすすめします。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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