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ダブル不倫の慰謝料問題、現実的な落としどころは?【離婚弁護士が解説】

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:イメージマート)

1 はじめに

女優の広末涼子さんとレストランオーナーシェフ鳥羽周作さんのダブル不倫騒動が、引き続き話題となっています。

ダブル不倫は、普通の不倫よりも、自身の配偶者に対する問題が増えることで、より厄介で面倒な状況になることは想像に難くないでしょう。

さらにお子さんがいらっしゃる場合は、お子さんへの影響も無視できません。

私は西宮で家事事件を中心とした法律事務所を経営している弁護士ですが、私のところにも毎日たくさんの男女問題のお問い合わせがあります。

今回の騒動について、解説したいと思います。

2 そもそも不倫は法律上の罪にあたる?

不倫は刑法上の犯罪ではありません。ですので、不倫をしても刑法上の刑罰を科されることはありません。戦前には姦通罪という犯罪がありましたが、1947年に廃止されています。

ただし、民法上の「不法行為」に該当する場合には、精神的損害に対する慰謝料が発生します。

「不法行為」とは、故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する行為のこと。

わかりやすく言えば、不貞行為(=不倫)は、婚姻共同生活の平和の維持という権利を侵害するものなのです。

3 子持ちダブル不倫の場合、慰謝料/親権/離婚などは一般的にどのような落としどころになるの?

① 慰謝料について

慰謝料の相場は、不倫が原因で離婚したかどうかで金額が大きく変わります。

これはダブル不倫でも同じこと。

例えば、不倫が原因で離婚した場合には慰謝料の相場が100万~300万円であるのに対し、離婚しなかった場合には一般的に50万~100万円程度。

つまり、不倫をされた側の夫婦の婚姻関係が破綻したかどうかによって、精神的慰謝料の金額には変動があるのです。

ただし、ダブル不倫が難しいのは、不倫をした側にも配偶者がいることです。

お互いの配偶者が、配偶者の不倫相手に慰謝料請求できることになり、結局、夫婦単位でみると慰謝料を支払ってもらっても、お金が回っているだけという事態にもなりかねません。

そのような場合には、お互い慰謝料請求は行わず、不倫関係は解消し今後は一切関わらないという合意書を交わして一挙解決するケースもよくあります。

②親権について

写真:イメージマート

親権については、仮に母親が不倫をしていても、今まで母親が主に子供らの面倒を見ており、特に育児放棄等をしていない場合には、やはり母親が優位となるケースが実務上多いです。

ただし、子供が15歳以上になると、家庭裁判所が子供本人に意思確認を行います。

子供が母親の不倫に嫌悪感を示して、父親の親権を希望する場合も十分にあり得ますし、15歳以上の子供が自由な意思で親権者を選んだと認められる場合には、基本的に子供の選択が尊重されます。

③離婚について

写真:イメージマート

離婚については、不倫をした側は「有責配偶者」となりますので、離婚をしたくても一定期間は離婚できないでしょう。

一方、不倫をされた側が離婚したい場合は、不倫という離婚原因があるため、比較的に早期に離婚が成立しやすいです。

4 不倫した側からの謝罪があれば慰謝料減額などはあり得る?

不倫相手からの真摯な謝罪があり、それが不倫された側にうまく伝われば、慰謝料の減額と言ったケースもあるにはあります。

ただ、何をもって真摯な謝罪というのかが問題です。

当然ながら不倫関係が継続していれば、いくら真剣に謝罪していると言っても相手には伝わりにくいでしょう。

逆に、本当に心から謝罪をしても、真剣に謝罪しているならもっと慰謝料を支払うことができるだろうと言われ、高額な慰謝料を取られたケースもあります。

謝罪は重要ではありますが、直接相手とやりとりをするとこじれてしまうケースが多いので、そこは慎重になるべきです。

弁護士などの専門家に間に入ってもらい、謝罪の意思は相手に伝えた上で、適切な金額の慰謝料を支払うという解決がベストだと思います。

5 不倫発覚までに配偶者からのプライベート暴露があったら、慰謝料減額、あるいは反対に訴えられることなどはあり得る?

不倫をされた側から、プライベートの暴露などがあれば、名誉棄損罪に該当する可能性があります。

不倫の証拠を掴む際に、不倫相手の家に侵入して盗聴器をしかけるなど行き過ぎた行為があれば、住居侵入罪不正アクセス禁止法に該当することもあり得ます。不倫をされたからと言って、何をやってもいいわけではなく、法律上の制限があるのです。

ご自身で証拠を集めることも大事ですが、逆に相手から訴えられることになってしまっては本末転倒です。

証拠を収集する際は弁護士などの専門家のアドバイスを聞いて慎重に行動することをおすすめします。

調査会社や探偵に依頼するのも一つの手です。

6 終わりに

最近は、マッチングアプリなどの流行もあり、気軽に不倫相手を見つけて、不倫をする方も増えてきました。

お互い割り切った関係なのかもしれませんが、不倫は配偶者を傷つけますし、夫婦関係を修復不可能にすることもあり得ることを肝に命じておくべきでしょう。

さらに「子持ちダブル不倫」の場合は、お互いの配偶者のみならず、何の罪もない子供たちにも悪影響を与えかねません。

お子さんの受けた心の傷は目には見えませんが、親が想像する以上に深く傷ついていることもあるのです。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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