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賃貸住宅の入居者が退去した後のトラブル実情をさぐる(2023年発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
入居者が退去した後の賃貸住宅でのトラブルの実情は(写真:アフロ)

引っ越しなどの理由で入居者が賃貸住宅を後にする際に、色々なトラブルが生じることがある。もっともよく見聞きするのは、原状回復費用に関するもの。国土交通省からは【「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について】が提示され、インターネット上にもその情報が広まるに連れ、退去者側の意識が高まり、トラブルが具体的に生じる前に解決に至ったとの話も耳にするようになった。貸し手側の立場では、現状ではどのような状況なのだろうか。今回は賃貸住宅の管理会社で構成される協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)から、賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化の実情を確認する。

次に示すのは、賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化を答えてもらった結果。主なトラブルに関して、前年度と比べて増えたか減ったか変わらないかを答えてもらっている。

↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(全国、前年度比)(2022年度)
↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(全国、前年度比)(2022年度)

原状回復費用に関しては一番よく知られているトラブルということもあり、前年度より増えているとの意見の方が多い。それ以外の、残置物、敷金、解約・違約金については、いずれも減少したとする意見の方が多くなっている。

これを地域別に見たのが次のグラフ。

↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(首都圏、前年度比)(2022年度)
↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(首都圏、前年度比)(2022年度)

↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(関西圏、前年度比)(2022年度)
↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(関西圏、前年度比)(2022年度)

↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(首都圏・関西圏以外、前年度比)(2022年度)
↑ 賃貸住宅管理会社における入居者退去後のトラブルの変化(首都圏・関西圏以外、前年度比)(2022年度)

原状回復のみ増加の方が多く、それ以外は減少の方が多いとのパターンはおおよそどこでも変わらないが、唯一関西圏では原状回復費用でも減少の方が多いとの結果が出ている。また原状回復費用以外でも、関西圏では増加の値の少なさが目にとまる。特に敷金では増加の値がゼロとなっている。

これについて短観では「全体として退去後トラブルは減少したが、特に関西圏における減少は各項目とも顕著である。2021年6月施行の賃貸住宅管理業法により管理会社の意識が高まったことに加え、大阪版原状回復ガイドラインの策定など各自治体の独自の取り組みなども貸主及び管理会社の意識向上に寄与している可能性がある」と説明している。大阪版原状回復ガイドラインは大阪府の公式サイトで確認することができ(【賃貸住宅の原状回復トラブルを防止するために】)、関西圏におけるトラブル減少の顕著さの理由を知ることができよう。

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※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)

2023年7~8月にインターネットを用いて日本賃貸住宅管理協会会員に対して行われたもので、有効回答数は541社(回収率29.7%)。2022年4月から2023年3月に関する状況について回答してもらっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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