少しずつ増えていく総接触時間

利用方法や注力度合いの違いはあるが、人が1日に与えられているのは24時間しかない以上、メディアへの重点度合いはその利用時間の長さで推し量れる。その変化の実情を博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が2022年5月に発表した「メディア定点調査2022」(※)の公開値などから確認する。

「メディア定点調査」における主要メディア毎の、1日あたりの平均接触時間を時系列に並べてグラフ化したのが次の図。2008年までメディア接触時間総数は減少していたが、2009年以降大きく増加。そして2010年以降は事実上横ばい。ところが2014年にはグンと伸びる動きを見せた。これは新規に回答項目としてタブレット型端末が加わったのが一因と考えられる。しかし単純にそれを引いてもまだ余りある増加を示していることから、加えてスマートフォンの急速な普及も大きく影響しているのだろう(項目中の「携帯電話」は従来型携帯電話とスマートフォンの合算)。

直近の2022年は特に設問上の変更などはないが、全体では前年2021年からいくぶんの減少。2021年では新型コロナウイルスの流行による巣ごもり化現象が影響した大幅な増加があったため、その反動が生じたのだろう。

↑ メディア接触時間(1日あたり、週平均、分)
↑ メディア接触時間(1日あたり、週平均、分)

4大従来型メディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)は波があるもののどの媒体も押しなべて減少傾向にある。他方、インターネット接続が可能なデジタルメディアでは、パソコンが2011年までは増加傾向にあったものの、それ以降は減少に転じる動きを見せた。しかし2020年以降は再び増加傾向の流れ。これは新型コロナウイルスの流行で在宅勤務者が増え、自宅でパソコンを利用する人が増えたことによるものだろう。そのパソコン以外のインターネット接続が可能なデジタルメディアは、おおむね増加の流れにある。色合いを前者は赤系統色、後者を緑系統色でまとめているが、グラフの色合いが左から右になるに連れて、少しずつ緑系統色の面積が増しているのが分かる。

一方、このような動きがある中でも、単独項目では長年、テレビが最大接触時間の地位を維持していたことに違いはない。しかし直近2022年では記録のある限りでははじめて、携帯電話がテレビを抜く形となり、単独のメディアで最大接触時間のポジションを占めることとなった。無論、「インターネットメディア」との区分でパソコン、タブレット型端末、携帯電話の時間を全部足すと2022年では254.7分となり、テレビ単独の143.6分を超えることになる。タブレット型端末の項目が加わったのも一因だが、この計算方法でテレビ時間を超えたのは、2014年から連続して9年目となる。

携帯電話の利用時間は大きな伸び

それぞれのメディア接触時間の増減について、公開されている範囲で最古データの2006年時の値を基準値の100%と設定(ただしタブレット型端末は2014年からの登場なので、その年の値を基準値とする)。それぞれの変化の流れを見たのが次の図。この算出方法により、他のメディアの動きとは関係無く、個別でどれほど時間の伸縮が生じているのか把握できる。

↑ メディア接触時間(1日あたり、週平均、個々媒体の2006年時点の値を100%とした時の値(タブレット型端末は2014年が100%))
↑ メディア接触時間(1日あたり、週平均、個々媒体の2006年時点の値を100%とした時の値(タブレット型端末は2014年が100%))

↑ メディア接触時間(1日あたり、週平均、個々媒体の2006年時点の値を100%とした時の値(タブレット型端末は2014年が100%)、除く携帯電話)
↑ メディア接触時間(1日あたり、週平均、個々媒体の2006年時点の値を100%とした時の値(タブレット型端末は2014年が100%)、除く携帯電話)

各媒体の動向が非常によく理解できる動きを示している。例えば4マスはテレビですらも減少しているが、4マス内の他のメディア、ラジオや新聞などと比べれば健闘している。またインターネット接続により「魔法のツール」と化すデジタル系機器だが、パソコンは意外にも(!?)2011年がピークでそれ以降は漸減傾向(ただしこの数年は盛り返し)。一方、それとほぼタイミングを同じくして、携帯電話は伸び率を加速化させている。

テレビ離れは2010年以降の傾向として表れていたが、2014年以降はほぼ横ばいに推移していた。これは多分に高齢層の増加によるところが大きい。

昨今ではいくつかの調査結果において高齢層の増加を主な要因として、テレビ視聴時間の漸増が確認されていることから、今後シェアにおいてもテレビの復権の可能性はある。しかし仮にその動きが現実のものとなっても、ラジオ、新聞、雑誌の接触時間はさらに減り、結果としてデジタル系機器の接触時間の相対的・絶対的伸長といった傾向に変化を与えることにはつながらない。

それぞれのメディアの利用スタイルまで考慮すれば、単純な接触時間のみで比較をするのにはリスクがある。またインターネットを利用したメディアでも、新聞や雑誌の「コンテンツ」を視聴することはできるので、境界線が曖昧となりつつあるのも事実ではある。とはいえ、メディアそのものの利用との観点で考えれば、シフトの動きが継続することは間違いあるまい。

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※メディア定点調査2022

調査方法は郵送調査方式。調査期間は2022年1月20日から2月4日。東京都を対象にRDD(Random Digit Dialing)方式で選ばれた15歳から69歳の男女個人に対し調査票が送付され、652通が回収された。各値は2021年の住民基本台帳を基に年齢階層・男女でのウェイトバックが実施されている。

過去の調査では利用機器に2014年からタブレット型端末が追加されている。2013年までは(ノート)パソコンと同一視され回答にくわえられていた可能性もあるが、2014年以降は機器として独立項目が設けられたため、以前と比べてメディア接触時間の合計が上乗せされている可能性が高い(メディア接触時間が有意で増加している)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。