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CD、DVD、そしてレコード…物理的な音楽商品の購入実情(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
いまだにレコードも購入者は少なくない(写真:イメージマート)

昨今では音楽を聴くとなるとインターネット経由で取得した楽曲を何らかのスタイルで聴くパターンが多勢を占める形となっているが、もちろん聴くための音楽を取得する手段はそれに限らない。音楽CDを購入してプレイヤーで再生したり、DVDなどの音楽ビデオを買って聴いたりなど、多様な手段がある。現状ではそれら物理的な音楽商品はどれほど買われているのか、日本レコード協会が2024年3月に発表した「音楽メディアユーザー実態調査」(※)の最新版の結果を基に、その実状を確認する。

次に示すのは物理的な音楽商品に関する購入実情。1年以内に購入経験がある人と、購入したことが無い人の割合を記している。これ以外に、1年を超えた昔に買った経験がある人もいるわけだが、それはグラフでは取り上げていない(逆算すればすぐに答えは出るが)。項目の順番は資料上の掲載順に準じている。

↑ 物理的な音楽商品の購入実情(2023年)
↑ 物理的な音楽商品の購入実情(2023年)

音楽CDはともかく、レコードを買った人が新品・中古ともに5%強いることに驚きを示す人もいるかもしれない。音楽不況が叫ばれる昨今で、音楽CDや音楽ビデオにはおよばないものの、今や歴史的存在的なポジションにあり、その存在すら知らない人も少なくないであろうレコードを、購入している人がまだこれだけいる。もっともこの数字が、レコードが健闘している現状を示していると認識した方がよいのだろう。レコードは「購入したこと無し」の値も高いことから、二極化しているのかもしれない。レコード同様に、カセットテープも4.8%の人が買っているのも注目に値する。

音楽CDはといえば、新品が2割近く、中古は1割近くが買われている。他方、DVDなどによる音楽ビデオは1割強。その音楽CDだが、「1年以内に購入経験」「購入したこと無し」の合算値が低いような印象がある。つまり「1年より昔に購入した経験はあるが、直近1年間では購入していない」の人が、他の商品よりも多い計算になる(試算すると44.1%)。たまたま偶然、直近1年間に買いたい新品の音楽CDがなかっただけかもしれないが、気になる話ではある。

これらの音楽商品について、1年以内に新品を購入した人に、その購入理由を聞いた結果が次のグラフ。

↑ 物理的な音楽商品の購入理由(1年以内に新品の物理的な音楽商品を購入した人限定、複数回答、上位陣)(2023年)
↑ 物理的な音楽商品の購入理由(1年以内に新品の物理的な音楽商品を購入した人限定、複数回答、上位陣)(2023年)

音楽CDや音楽ビデオでは「好きなアーティストのは極力買うように」との理由から購入している人が非常に多い。ファンのたしなみ的な発想なのだろうか。単純に好きなアーティストの作品は何でも欲しいとの考え以外に、応援のような意味合いもあるのかもしれない。そして「コレクションとして」購入したとの意見が続くのも両者で同じ。

一方レコードでは「音質が好み」との意見がもっとも高い値。レコード愛好家はこの点があるからこそレコードを愛用するとの話もよく見聞きされるので、この点を購入理由として挙げるのは当然かもしれない。また、「家族・友人と一緒に鑑賞したかった」も他の商品と比べて高い値が出ているのも注目すべき点だろう。

カセットテープでは「好きなアーティストのは極力買うように」が一番で、次いで「コレクションとして」。値そのものは小さめだが、傾向としては(音質を除けば)レコードに近い感はある。

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※音楽メディアユーザー実態調査

直近分は2023年12月に12歳から69歳の男女に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は4500人。2020年度の国勢調査結果をベースにウェイトバックを実施している。また設問の多くは過去半年間を対象に答えてもらっているため、2023年6月から11月時の動向が反映されていることになる。過去の年の調査もほぼ同じ条件で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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