Yahoo!ニュース

学費は年114万8700円…大学生の学生生活費事情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
大学生の生活費や学費。その実情は(写真:イメージマート)

大学生にもなれば日常生活の行動も多様におよび、生活の上で必要となる費用も高校生までとは比べ物にならないほど増加する。一人暮らしなら、一般社会人と同程度の出費が必要となる人も多いだろう。実体としてはどの程度の額を大学生諸氏は生活費として費やしているのか。独立行政法人日本学生支援機構が2022年3月に発表した「令和2年度学生生活調査」(※)などから、その実態を確認する。

今調査結果によれば直近調査となる2020年度(2020年11月実施)における、大学昼間部での平均的な(年間)学生生活費(学費と生活費の合計。学費+生活費=学生生活費)は181万3000円、うち授業料などの学費は114万8700円、食費や住居・光熱費、娯楽費などの生活費は66万4300円となった。なお学生生活費などの詳細区分は次の通り。

・学生生活費=学費+生活費

・学費……授業料、その他学校納付金、修学費、課外活動費、通学費

・生活費……食費、住居・光熱費、保健衛生費、娯楽・嗜好費、その他日常費(通信費含む)

家計で例えればおおよそ学費が非消費支出、生活費が消費支出と見ればよいだろう。

2020年度における学生生活費に占める学費の割合は63.4%、6割強が該当する。

↑ 平均学費・生活費(大学・昼間部、年間、円)
↑ 平均学費・生活費(大学・昼間部、年間、円)

↑ 平均学費・生活費(大学・昼間部、年間、学生生活費に占める学費・生活費の比率)
↑ 平均学費・生活費(大学・昼間部、年間、学生生活費に占める学費・生活費の比率)

抽出可能な過去のデータも合わせて、1994年度以降の金額、そして学生生活費全体に占める学費・生活費の割合についてグラフ化したが、

・学生生活費は2000年度以降逓減傾向だった。その学生生活費の減少に加え、学費の上昇が加わり、生活費は圧迫されていた。

・2010年度で学生生活費は底を打ち、それ以降はおおよそ漸増の動き。学費が大体漸増しているのが主要因。

・直近2020年度では前回調査から学生生活費は減少、学費と生活費はともに減少を示した。単純試算では月あたりの生活費は約5万5400円。

・学生生活費全体に占める学費の割合は、2000年度まではほぼ横ばい、それ以降は増加を続けて、生活費の圧迫感が見て取れた。2008年度以降は再びほぼ横ばいを継続している。

などの傾向が確認できる。学生生活費そのものが低い水準にとどまっているのに加え、学費が上昇傾向にあるため、生活費が二重のプレッシャーに追い詰められている状況が見て取れる。前世紀末の金額と比べれば2万円前後の差があるのが実情。

もちろんこれは平均値を用いた動向確認によるもの。大学の種類(国公立・私立)や居住形態で大きく異なる。私立よりも国公立の方が、そして下宿やアパートよりも学生寮、自宅の方が学生生活費、生活費ともに安くつく。

可処分所得の低迷を考えると金銭面においては、都市圏(近郊)に引っ越して下宿しながらの就学より、自宅から通える範囲での大学へ通う方が保護者にも、そして子供自身にも負担が軽そうではある。自宅からの通学者比率が増加傾向にあるのは、金銭事情が大きな要因かもしれない。

■関連記事:

【ちょっと気になる大学の受験勉強にかかった費用、中には100万円以上も】

【子供の大学進学、増える負担、親はどうする?】

※令和2年度学生生活調査

2020年11月に大学院、大学学部および短期大学本科の学生(休学者および外国人留学生は除く、社会人学生は含む)の中から無作為抽出方法によって抽出された学生に対して調査票方式で調査されたもの。有効回答数は3万7591人。調査そのものは2年おきに行われており、現時点では2020年実施の結果が最新のデータ。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事