夫婦間の性交渉の実情をさぐる(最新)
妻と夫との共通行動に関して、他人事情の把握が難しいものの一つが、夫婦間の性交渉。今回は国立社会保障・人口問題研究所が2022年に調査を実施し、2024年4月に報告書を発表した「全国家庭動向調査」(※)の結果から、夫婦間の性交渉の実情を確認する。
次に示すのは、妻と夫との共通行動としての性交渉に関し、どの程度行っているかを尋ねた結果。報告書には「不詳」の値も含めて掲載されているが、今件ではその「不詳」を除く形で再計算している。また、性交渉については具体的な説明はない。質問票にも「夫婦間の性交渉」とのみある(直近1年間について尋ねている)。
全体では6割近くが「まったく無い」。調査対象母集団には高齢者も大勢含まれるため、この値が出ることは何ら不思議ではない。妻の年齢階層別に見ると、ある派(「よくある」+「ときどきある」)はきれいな形で低年齢ほど高い値を示すが、「よくある」に限ると24歳以下よりも25~29歳の方が多い。25~29歳では20.9%が夫婦間の性交渉について「よくある」と回答できる状態である。
「まったく無い」、表現を変えれば直近1年間において夫婦間で性交渉がまったくなかった妻は、30~34歳でも22.7%いる。たまたま夫が出張か病気か、あるいは妻が出産前後の可能性はあるが、それを考慮しても2割強がいわゆる「セックスレス」状態にあるのは、意外な感はある。この値は妻の年齢が上がるに連れて増えていき、45~49歳で過半数に届く。60~64歳で7割に到達。
いくつかの属性別でみると次の通りとなる。
子供のあるなしで見ると、やはり子供がいるよりいない方が、性交渉のある派の値は高い。ただし子供がいても非同居の場合は非常に低くなり、「まったく無い」が7割を超える。何らかの事情があって子供とは同居をしておらず、それが原因で性交渉にいたらないのかもしれない。あるいは子供がすでに成人しており、妻自身が高齢なのが原因なのだろう。
子供が同居している場合、末子の年齢階層別では、おおよそ年齢が上になるに連れてある派が減る傾向にある。やはり子供の目が気になるのに加え、子供の非同居の事例と同様に、妻自身の高齢化が影響するのだろう。大体同居している子供の年齢が5歳ぐらいまでは、性交渉のある派は高い値を示すようだ。
一方で親と同居しているか否かに関しては、大きな違いはない。同居していてもしていなくても、夫婦間の性交渉に影響は与えないようだ。「よくある」に限れば親と別居している方が高い値となるが、ある派で考えればむしろ親と同居している方が高い値になる。
最後に妻の従業上の地位別だが、意外にもパート、嘱託、自営・家族の間では大きな違いはなく、常勤が他と比べて高い値が出ている。常勤は唯一、ある派が3割超え。常勤ともなれば就業時間は長く疲れもすることから、夫婦間の性交渉もひかえめになるのではとの印象もあるが、実際にはむしろ逆のようだ。
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※全国家庭動向調査
国立社会保障・人口問題研究所が原則5年おきに行っている調査で、家庭機能の変化の動向や要因を正確に把握するため、家庭の出産、子育ての現状、家族関係の実態を明らかにすることを目的としている。直近分となる2022年分は、2022年に調査票を配布、同年7月1日時点についての事実の記入をしてもらい、回収した結果を集計したもの。有効回答票数は9661票で、今件はそのうち有配偶の女性(つまり結婚した状態で夫がいる妻)が回答した5518票を主要な分析対象としている。妻の年齢区分は29歳以下2.7%・30代11.8%・40代19.4%・50代21.4%・60代22.0%・70歳以上22.7%。
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