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「身近にこの問題に直面したことがある」若者の社会課題へ関心を抱いた最大の理由

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
自分が体験しないと社会課題への関心は抱けないのかもしれない(写真:イメージマート)

解決すべきと思われる社会全体の問題を社会課題と呼んでいる。若年層はこの社会課題について、どれほど関心を寄せているのだろうか。そしてなぜ関心を持つようになったのだろうか。連合が2022年3月に発表した、若年層における社会運動に関する調査「Z世代が考える社会を良くするための社会運動調査2022」(※)の内容から確認する。

今調査の調査対象母集団では全体で87.0%が社会課題に関心があるとしている。

↑ 関心のある社会課題があるか(属性別)(2021年)
↑ 関心のある社会課題があるか(属性別)(2021年)

ではなぜ、その人たちは社会課題に関心を持つようになったのだろうか。その理由を複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。最多意見は「身近にこの問題に直面したことがある」で41.2%となった。

↑ 社会課題に関心を持った理由(関心がある人限定、複数回答)(2021年)
↑ 社会課題に関心を持った理由(関心がある人限定、複数回答)(2021年)

次いで「社会・環境をよりよくしたい」が34.9%、「人の生命にかかわる問題」が32.1%、「困っている人がいるなら助けたい」が31.4%。社会課題への関心は結局のところ自分自身に直接かかわりあいのある(と思われる)ものほど強くなる傾向があるが、今件調査項目を見ても、「身近にこの問題に直面したことがある」がトップに来ているのをはじめ、「自分の暮らしを守ることになる」なども多くの同意が得られており、同様の傾向が生じているように見える。もっとも、「自分自身の成長につながる」「ビジネスチャンスになる」などといった、社会課題への関心を利用しよう的な方向性のものは、さほど値は高くない。即物的に過ぎるのはよくない、ということか。

最上位についた「身近にこの問題に直面したことがある」に関する具体的対象を精査したのが次のグラフ。例えば「いじめ」は25.8%とあるので、社会課題に関心を持った理由として「いじめ」を挙げた人のうち25.8%が「身近にこの問題に直面したことがある」としている。他人事としてではなく、身近にいじめの問題と対峙したことがあるからこそ、いじめという社会課題に関心を持ったことになる。

↑ 「身近にこの問題に直面したことがある」の具体的対象(該当者限定、上位陣)(2021年)
↑ 「身近にこの問題に直面したことがある」の具体的対象(該当者限定、上位陣)(2021年)

「奨学金問題」がもっとも多く54.0%。奨学金の問題を社会課題として関心を持つようになった人の過半数は、ニュースなどで見聞きしたからではなく、自分自身や周辺の人が直面した問題だからこそ、関心を持つようになったとしてる。ついでいじめ、所得格差、長時間労働、高齢化問題などが続くが、いずれも自分自身や周辺で生じた問題ならば、切実な話には違いない。

見方を変えれば自分自身、あるいは周辺で生じている身近な問題との認識ができなければ、社会課題に関心を持つことは難しいということなのかもしれない。

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※Z世代が考える社会を良くするための社会運動調査2022

2021年12月21日から23日にかけて15~29歳の男女に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1500人。男女・5歳区切りの年齢区分で均等割り当て。調査実施機関はネットエイジア。Z世代とは本来1990年代後半から2000年代に生まれた世代と定義されているが、今調査では社会人も含めた若年層の15~29歳をZ世代としている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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