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暴言、何度も同じ内容を繰り返すクレーム…交通運輸・観光サービス業での客からの迷惑行為被害の中身

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
いわゆるカスハラ、その中身は(提供:アフロ)

交通運輸・観光サービス業で働く人に対する利用者の迷惑行為、いわゆるカスハラ(カスタマーハラスメント)が問題視されている。具体的にどのような迷惑行為を受けているのだろうか。全日本交通運輸産業労働組合協議会が2021年11月に発表した、交通運輸・観光サービス業における利用者の迷惑行為に関する調査(※)の結果から確認する。

今調査結果によると、交通運輸・観光サービス業で働く人に対する利用者の迷惑行為による被害を経験したことがある就業者は直近2年間で限定しても46.6%に上った。16回以上も受けた人も3.1%いる。

↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害にあったことがあるか(2021年)
↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害にあったことがあるか(2021年)

それではその迷惑行為の被害を受けた人たちは、具体的にどのような被害を受けたのか。もっとも印象に残っている、つまりダメージを受けたと感じたものを答えてもらった結果が次のグラフ。ほぼ半数の人は「暴言」と答える結果となった。

↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害でもっとも印象に残っているもの(2021年)
↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害でもっとも印象に残っているもの(2021年)

日常生活におけるやり取りではなく、鉄道やバスなどにおける利用者と従業員との関係である以上、従業員側は反論もできず、ただ従い言葉を受け入れるしかない状況にあることが多い。それでも暴言の類は理不尽さを覚え、迷惑行為であると認識せざるを得ないものも多々あるのだろう。

次いで「何度も同じ内容を繰り返すクレーム」。具体的な事例として調査報告書では「1回の電話で1時間以上拘束される事が何度か続き、苦痛でした。内容はクレームでしたが、同じ内容を何度もくり返されたりしていました」との話が挙げられている。迷惑行為をする側が元々そのような行為をしてしまう性格なのか、あるいは興奮のあまりに繰り返してしまうからなのかはともかくとして、受ける側は苦痛に違いない。

続いて「威嚇・脅迫」が13.1%。状況によっては犯罪になるような行為ですらあり、印象に残るのも当然ではある。

これを業種別に見たのが次のグラフ。

↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害でもっとも印象に残っているもの(業種別)(2021年)
↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害でもっとも印象に残っているもの(業種別)(2021年)

「威嚇・脅迫」「何度も同じ内容を繰り返すクレーム」の値が海運・港湾では高くなっているが、これは元々件数そのものが少ない(迷惑行為の被害が全部で16件)ことによる統計のぶれが生じている可能性が高い。それを除くと、「何度も同じ内容を繰り返すクレーム」は航空や観光サービスで高め、「暴言」は鉄道やバス、タクシーなどで高い値が出ていることなどが目にとまる。鉄道やバス、タクシーは元々迷惑行為の被害そのものの値も高いものとなっており、その多くが「暴言」だろうということが推測できる結果ではある。

↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害にあったことがある(業種別)(2021年)
↑ 直近2年以内に利用者などからの迷惑行為の被害にあったことがある(業種別)(2021年)

公共交通機関などを利用する際に、自分はお客様だからと態度が大きくなり、従業員に横柄な態度を取ってしまう人がいる。利用中に何かトラブルが生じたり、気に食わないことがあったりすると、従業員に八つ当たりをしてしまうケースもあるだろう。しかし従業員とて人間に他ならない。大人げない行為は慎んでほしいものではある。

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※交通運輸・観光サービス業における利用者の迷惑行為に関する調査

2021年5月20日から8月31日にかけて、交通運輸・観光サービス業に従事している全日本交通運輸産業労働組合の所属組合員に対し、書面あるいはインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2万908件。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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