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高齢者比率が増加…新型コロナウイルスの流行は熱中症の発症にどのような影響を与えたのか(年齢階層別編)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢者もマスク着用。呼吸の負担が大きくなるかも。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

現在もなお流行中の新型コロナウイルス。その新型コロナウイルスの流行が熱中症の発症にどのような影響を与えたのかについて、消防庁が発表している熱中症による救急搬送人員数を基に、年齢階層別の観点から推測する。

まずは2020年の実情(6~8月)と、2017~2019年の3年分の実情の平均値(単年では気象状況などによるぶれが生じやすいため)の差を算出したのが次のグラフ。

なお区分の詳細は次の通り。

・新生児…生後28日未満

・乳幼児…生後28日以上満7歳未満

・少年…満7歳以上満18歳未満

・成人…満18歳以上満65歳未満

・高齢者…満65歳以上

↑ 年齢階層別の熱中症による救急搬送人員(月別、人員数)(2020年の値から2017~2019年の平均値を引いたもの)
↑ 年齢階層別の熱中症による救急搬送人員(月別、人員数)(2020年の値から2017~2019年の平均値を引いたもの)

2018年の猛暑と2020年7月の冷夏(【7月の天候(気象庁)】)の影響で、7月は大きなマイナスが出てしまっている(-0、+0の値が出ているのは、2017~2019年の平均値が整数ではないため)。他方、年齢階層別に見ると、7月のマイナス幅も8月のプラス幅も、おおよそ年が上になるに連れて大きな値が出ている。環境の変化に伴う熱中症の発生状況は、年が上ほど影響が出やすいということか。

一方、発生場所別同様に2017~2019年の平均値と2020年それぞれについて、全体比を算出したのが次のグラフ。

↑ 年齢階層別の熱中症による救急搬送人員(月別、全体比)(2017~2019年の平均値)
↑ 年齢階層別の熱中症による救急搬送人員(月別、全体比)(2017~2019年の平均値)
↑ 年齢階層別の熱中症による救急搬送人員(月別、全体比)(2020年)
↑ 年齢階層別の熱中症による救急搬送人員(月別、全体比)(2020年)

「少年」に該当する年齢では学校内行動で熱中症を発症する機会が多々あるため、普通は2017~2019年の平均値のように、6月は多め、7月、8月になるに連れて少なくなる傾向がある。しかし2020年は新型コロナウイルスの影響で休校をしている、登校しても熱中症を発症しそうな行動が控えられる傾向があるため、結果として値が抑えられたようである。似たような理由で「成人」も在宅勤務の増加により、ある程度値が低くなっているのが確認できる。2020年では2017~2019年の平均値のように6月から8月までの増加度合いも少なめとなっており、在宅勤務から通常の職場での勤務への復帰があまり生じていないことが推測される。

他方「高齢者」は2020年においては一律で増加。人数そのものが大きく減っている7月においても全体比では増えていることから、新型コロナウイルスによって変わった環境が、「高齢者」においては熱中症のリスクを上乗せすることになったようだ。

消防庁の発表データでは年齢階層別と発生場所別のクロスによるものが無いため、例えば「高齢者」の「住居」における熱中症による救急搬送人員の精査ができないのは残念ではある。とはいえ、今回のデータからだけでも、新型コロナウイルスによって変化した生活環境が、熱中症の発症にも大きな影響を与えたことは容易に推測できる。

来年の夏も今夏と同様の状況が続いているとは思えないが、一部の社会様式は新型コロナウイルスのワクチンや治療薬が開発された後でも継続することだろう。熱中症の発症リスクも過去とは違いを見せるようになるかもしれない。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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