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電通推定の日本の広告費を詳しくさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 需要減少中の電話帳、広告費も減少中。(写真:アフロ)

電通は2020年3月に日本の広告費に関する調査報告書「2019年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に2019年の広告費の実情を確認する。

まずは2019年の広告費における前年比から、直近の広告費の動向を見ていく。2018年から2019年における広告費の変化を示したものだが、各媒体の広告に関する影響力、クライアントからの評価の変化の度合いがよく分かる結果となっている。

なおインターネット広告費の内部的区切りとしての「うち物販系ECプラットフォーム広告費」は2019年分から新設公開された区分のため、2019年時点では前年比は存在しない。またプロモーションメディア広告費全体の内部的区切りとしての「うちイベント・展示・映像ほか」は2018年時点では「うち展示・映像ほか」で2019年分からイベント領域が追加されたため、前年比が非常に大きなものとなっている。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2019年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2019年)

もっとも大きな下げ幅を示したのは雑誌と折込(広告)でマイナス9.0%、次いでフリーペーパー・電話帳のマイナス7.7%。単純に紙媒体の軟調さ、相対的な影響力の減少に加え、商品の直接的な売りとなるコンテンツのインターネット媒体へのシフトが、広告費のマイナス化に拍車をかけている。

大きく下げた雑誌はデジタルやプロモーションメディア広告への広告費のシフト、雑誌発行部数の減少などが影響。またフリーペーパー・電話帳はデジタルソフトの影響が続くが、一方で地域メディアとしてのコンテンツ力の強化を実施し、効果が出始めていると解説されている。

なお前年の反動による影響を考慮し、2年前、つまり2017年比を算出しておく。最初のグラフと見比べれば、単なる反動によるマイナスなのか、本質的な問題を抱えた上でのマイナスなのかが分かる。もっとも2019年で追加された区分があるものはあまり参考にならないが。また内部的区切りとしての「うち新聞デジタル」など4マス由来のデジタル広告費は2018年分から新設公開された区分のため、2019年時点では2前年比は存在しない。

↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2019年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2019年)

やはり紙媒体の軟調さは本物のようだ。特に雑誌や折込(広告)、フリーペーパー・電話帳の下げ幅が著しい。

続いてこれを前年比ではなく、金額ベースで示したのが次のグラフ。

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2019年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2019年)

従来型大手媒体(4マス)、中でもテレビメディアが大きな広告費を占めているのが一目瞭然。個別項目では太刀打ちできず、プロモーションメディア広告費を全部合わせてようやく追い抜くことができる状態。また、インターネット広告費全体がテレビメディアを追い抜いている実情も確認できる。これは2019年で初めて生じたもので、2019年から新規追加された区分「うち物販系ECプラットフォーム広告費」を除いても同様の結果となる(除くとインターネット広告費は1兆9984億円となり、テレビメディアの1兆8612億円より上)。

メディア動向として少なくとも広告費の観点では、インターネットが新聞を抜いているのはもちろん、テレビメディアすら抜いている実態を改めて認識させるものである。

■関連記事:

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新聞広告費とインターネット広告費の金額はどちらが上なのか(2019年3月発表版)

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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