高齢者にとって「数百メートルぐらい歩く」はどれほど困難なのか(2019年公開版)

↑ 年を取っても歩かねばならない機会は多い。数百メートルの距離は?(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

高齢者にとって2割近くは「数百メートルぐらい歩く」が難しい

日常生活を維持する、健康を確保するのに各種設備を利用する、就業のために自宅から移動するなどの際に、どの程度移動が可能かは大きな判断基準となる。高齢者にとって「数百メートルぐらい歩く」はどれほど困難なのだろうか。内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」(※)の結果から確認する。

次に示すのは日常行動における困難の度合いに関して、自身の実情を回答してもらった結果。対象事象は「数百メートルぐらい歩く」。距離の明示は無いが、数十メートルでは無く数キロの範囲でもない。成人ならば徒歩と自転車、どちらで行くか判断に迷う範囲の距離。

↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、男女別・年齢階層別)(2014年)
↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、男女別・年齢階層別)(2014年)

困難さを覚える人は全体で2割近く、約7割は「難しいと感じない」、そして1割ほどは判断留保の状態。男性よりは女性の方が困難率が高いのは、より歳が上な人が多いからだと考えられる(平均寿命は女性の方が上)。そして年齢階層別では、きれいな形で高齢ほど困難率が上昇していく。同時に判断留保率も増加していくのは、単なる距離だけでは区分できない状況との自覚が増えていくからだと思われる。

60代前半では困難率は1割にも満たない。それが70代前半では1割を超え、80代になると3割を超えていく。さまざまな事情はあるが数百メートルの移動に困難さを覚えるとなると、通院や普段の買い物にも苦労をすることは容易に想像できる。

世帯構成別で確認

今件を世帯構成別に区分し直して確認したのが次のグラフ。

↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、世帯構成別)(2014年)
↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、世帯構成別)(2014年)

本人と親の世帯では困難度が一番低いが、回答者本人にとっても困難な状態ならば、親を支える日常生活が非常に難儀してしまう(親は当然回答者よりも年上のため、歩行に難儀している可能性は高い)。他方子供や子供・孫と同居している世帯では、本人の困難度は高め。しかしこの場合、子供や孫が代行している、あるいは自動車などに同乗させてもらっている可能性はある。

気になるのは単身世帯。同居人がいない以上、基本的には日常生活は自分自身でやりくりをしているはずで、その状況下で2割ほどが数百メートルの歩行を困難だと回答している。移動には自転車やバイクは想定しがたく、自動車、あるいはいわゆるシニアカーの類を用いているか、タクシーなどの交通機関を用いているのだろう。または親族や介護の人に定期的に来訪してもらっているのかもしれない。いずれにせよ自由度、あるいはコストパフォーマンスは自身の歩行よりも低いものとなる。

昨今ではインターネットのサービスを用いてさまざまな注文を行い、自宅まで配送してもらうことが可能になった。もちろん自前で店舗に足を運び、商品を手に取り確認し、その場で購入できればそれにこしたことはないのだが、インターネットによる調達も有意義な手段には違いない。

歩行による外出の目的は買い物に限ったことではないが、今後高齢化と地域の過疎化が進むに連れ、中距離以上の歩行が困難な高齢者にどのような対応をしていくべきかも、インターネット通販の活用も合わせ、今まで以上の検証が求められよう。もっとも高齢者におけるインターネットの利用は、経験則を重視するがため新しいものを取り入れる意欲の不足、身体的なハードルなど、現役世代以上に難しいのが実情なのだが。

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※平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査

2014年12月4日から26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた日本国内に住む60歳以上の男女に対し、郵送配布・郵送回収形式で行われたもので、有効回答数は3893件。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。