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高齢者が仕事を辞めた時、いかなる理由があったのか、その実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「まだ仕事を続けたい」思いは強くとも身体がそれを許さないことも。(ペイレスイメージズ/アフロ)

離職する機会にはいつでも遭遇しうる。定年退職やトラブルでの辞職、健康がすぐれずに辞めざるを得ないこともある。高齢者はどのような理由で離職しているのか、その実情を厚生労働省が2018年11月に発表した中高年縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)(※)の第13回分の結果から確認する。

次に示すのは調査対象母集団において調査時に離職経験がある人に限定し、最後に辞めた仕事の離職理由を複数回答で答えてもらった結果。複数回離職経験がある人は、最後の離職についてのもののみの回答となる。また回答時点では無職か、別の職に就いているかは問われていない。

↑ 離職経験がある人の最後に辞めた仕事の離職理由(62~71歳、複数回答、男女別)(2017年)
↑ 離職経験がある人の最後に辞めた仕事の離職理由(62~71歳、複数回答、男女別)(2017年)

男性でもっとも多いのは「定年のため」で3割強。次いで「契約期間が満了した」で2割近く。それぞれ現役時代からの就業が終わった時の離職、定年退職後に再就職した先での契約期間終了による退職を意味するものと考えられる。

一方で「健康がすぐれなかった」との理由も1割強と多め。本人としてはまだ働きたかったものの、身体の実情がそれを許さなかったのだろう。また「年金を受給し始めた」との回答は6.1%。多分に定年退職後に年金受給までのつなぎ的な再就職をしていたものと思われる。

「解雇された」「労働条件が不満になった」「人間関係が上手くいかなかった」などのトラブル的な理由によるものも数%ずつ見られる。「倒産した」も1.8%。

女性の場合は「定年退職」がトップなのに変わりは無いが、続いて「健康がすぐれなかった」が続く。男性と比べて「契約期間が満了した」と順位が入れ替わっている実情を見るに、働き続けたくても自由がきかなくなったので仕方なくという女性の実情が見えてくる。また女性は「家族の介護・看護のため」「子・孫の育児のため」のような、世帯内の構成員へのケアを理由として辞める(多分に辞めざるを得なくなる)例が多いこともうかがえる。

高齢者の離職理由としては「定年のため」「契約期間が満了した」「健康がすぐれなかった」などが容易に想像でき、結果もそれらが上位に連なっているものの、他にも多様な事情があることが確認できよう。

ちなみに回答時点で仕事をしていない人に限定して計算をし直した結果が次のグラフ。

↑ 離職経験がある人の最後に辞めた仕事の離職理由(62~71歳、複数回答、現在仕事をしていない人限定、男女別)(2017年)
↑ 離職経験がある人の最後に辞めた仕事の離職理由(62~71歳、複数回答、現在仕事をしていない人限定、男女別)(2017年)

「離職理由不明」が多いのは、最後に離職した時から時間が経過して忘れてしまっていることが考えられる。あるいは元々職に就いたことが無い人もいるかもしれない。また「健康がすぐれなかった」は男女とも単純な離職理由の回答より高い値を示しており、一度健康を崩してしまうと再就職が難しくなる、非可逆的な状態となりやすい実情が透けて見える。

他方、女性の「家族の介護・看護のため」「子・孫の育児のため」も単純な離職理由の回答より高い値を計上している。健康とは別に、介護や育児もまた、職に戻れるような状況に回復することが難しいようではある。

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※中高年縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)

団塊の世代を含む全国の中高年者世代の男女に対する追跡調査で、2005年以降毎年1回、同一人物を対象に各種質問が行われている。直近分となる第13回分は2017年11月1日に郵送調査票の送付と郵送返送方式で実施されたもので、第11回・第12回調査で協力を得られた人2万2253人を対象としている(回答数は2万1168人)。第1回から第13回調査まで連続して回答している人は1万8819人。対象者年齢は第13回調査時点で62~71歳。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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