近所づきあい、もしもの時に頼れる人、そして孤独死…シニアの「ぼっち」問題

↑ 高齢者の一人暮らしは増加中。色々と問題も。

高齢者の会話と近所付き合いの実情

先進諸国の中でも特異なスピードで高齢化が進んでいる日本において、シニア層の一人身世帯による孤立化か問題視されている。概して不健康な状態に追い込まれることとなり、さらに緊急事態が起きても他人の助けを得られず、手遅れになる場合が多々生じるからだ。コミュニケーション豊かな人ならば他人との接触機会も多く、何かイレギュラーなことがあればすぐに対応をしてもらえるが、交友関係が薄ければそれもかなわない。視界に入らないもの、接触機会の無いものは、気が付かれようもない。

それでは高齢者の対外的なコミュニケーションはいかなる状況なのか。内閣府が今年5月に発表した最新版「高齢社会白書」をはじめ、各種関連データを基に現状を探っていく。

まずは60歳以上を対象にした、会話の頻度。この会話には直接の口頭によるやりとり以外に電話、さらには電子メールを含めたもの。グラフ上では「毎日」「分からない」以外の、頻度が低めな人達の回答率をまとめている。この値が高いほど、会話の上で孤立感が強い。

↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(60歳以上)(該当項目以外は「毎日」「分からない」)
↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(60歳以上)(該当項目以外は「毎日」「分からない」)

夫婦のみ、その他の世帯も合わせ、全般的に男性の方が値が大きい。つまり、高齢者における他人との会話頻度は男性の方が低い。高齢者全体では「毎日他人と言葉を交わしてはいない」人は1割も居ないが、男性一人暮らしに限るとその割合は3割近くにまで増える。しかも7.5%は一週間に一度も会話をしていない。じっと黙っているか、あるいはテレビに話しかけているか、新聞を読みながら独り言を繰り返しているか。

昨今では高齢者の間にもデジタルツールの利用者が増えているため、現状ではもう少し状況は改善されているはず。しかし一方で、元より他人とコミュニケーションを取ることを苦手とする人が、その類のツールを用いて積極的に接触をするとは考えにくいのもまた事実ではある。

近所づきあいの観点でも、男性シニアの「ぼっち」状態が確認できる。

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↑ 近所付き合いの程度(60歳以上対象)
↑ 近所付き合いの程度(60歳以上対象)

一人暮らし、男性世帯における「近所付き合いの希薄さ」が目に留まる。男女では「親しく付き合っている」の回答率が約10%ポイントも異なる。さらに「親しく付き合う」の認識は個々で異なり、数量化による明確な仕切り分けは難しいことを考えれば、男女の差異はさらに開いているのが現実かもしれない。

年齢階層別では70代後半までは歳と共に近所付き合いが良好化している。世代による付き合いの考えの違いか、あるいは60代では定年退職を経て生活様式が変わったばかりで、新たな世界観における近所づきあいに慣れていないのか。

居住形態別では世帯構成員・世代数が多いほど、近所づきあいも良好なものとなる。一人暮らしでは1/4程度しかない「親しく付き合っている」も、子供に孫もいる世帯では5割近くにまで増加する。高齢者本人だけでなく、配偶者や子供、孫を介しての近所づきあいの機会が得られるのが理由だろう。

頼れる人がいない、孤立状態と孤独死と

近所づきあいが少なく、会話の機会もあまり無い。地域社会から半ば孤立したような状態となれば、当然何か困った時に頼れる人がいる確率も低くなる。案の定、男性シニアの一人身世帯では5人に1人が「頼れる人が居ない」と回答している。

↑ 困った時に頼れる人がいない人の割合(60歳以上対象)
↑ 困った時に頼れる人がいない人の割合(60歳以上対象)

同じ一人暮らしでもコミュニケーションの上で男女で大きな差が生じ、それが「ぼっち」状態となるか否かの大きな分かれ目となる。女性は高齢者に限らず対外コミュニケーションを好み、長ける傾向があり、これが功を奏している可能性は高い。そして他人と積極的に交わり、時間を過ごすことを大切にする心構え(あるいは本能)が、「ぼっち」状態から脱し、結果として、あるいは間接的に、女性が男性と比べて長生きする秘訣となっているのかもしれない。他人との交流を経た社会生活は、健康的な人生を営むには欠かせない。

男性、特にシニアの一人身世帯においては、孤独感を楽しむのも選択肢の一つだとする主張もある。それはそれで正しいのだが、リスクを考えると個人の趣味、主義だけで無人島にいるような孤立感を維持するのは危険以外の何ものでもない。

その「危険」の具体例の一つが孤独死。何かトラブルが生じた時に、それに気が付いて対応する人が周囲に居ないと、事態の悪化に任せるばかりとなり、死に至ることもありうる。夏場における一人暮らしの高齢者による室内で生じた熱中症による死亡事例は耳にしたことがあるはずだ。

次のグラフは東京23区内における、自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者の数を示した図だが、確実に人数は増加している。また65歳以上の一人暮らし死亡者総数のうち、自宅での死亡者数割合は3/4前後を維持している。孤独死のリスクは大きな変化は無く、高齢者そのものの増加で、孤独死を迎える人の数が増えている状況も確認できる。

↑ 東京23区内で自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者(人)(高齢社会白書(2016年版))
↑ 東京23区内で自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者(人)(高齢社会白書(2016年版))

事実、一人暮らしの高齢者の多く(5割近く)は、「孤独死(孤立死)」を身近な問題だと感じている。

↑ 孤独死を身近な問題と感じている(60歳以上対象、高齢社会白書(2016年版))
↑ 孤独死を身近な問題と感じている(60歳以上対象、高齢社会白書(2016年版))

夫婦世帯などと比べれば一人暮らし世帯における危機感の大きさは一目瞭然。

今後はこのような「一人暮らしの高齢者」に対する社会の対応も、切実な問題として認識されると共に、対応が求められよう。

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