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都道府県別に一般労働者の残業時間の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 残業が続く今日この頃。地域で差異は生じているのか。(写真:アフロ)

・2017年における男性の平均残業時間は一か月あたり16時間、女性8時間。

・都道府県別では残業時間は男性では20時間が最長、11時間が最短。女性は最長10時間、最短6時間。

・残業時間に関する際立った地域性は無し。男性は大都市圏そのものでは無く、その周辺・近郊都市圏でやや高めのように見えるぐらい。

社会慣習や企業形態の差異など多様な条件の違いで、同じ業界の職場でも、地域によって残業動向は小さからぬ違いが生じる。自らの就業状態が全国ではどの程度の範囲にあるのか、他地域では違いがあるのか否か、自分の生活に何か影響が生じるわけでは無いが、気になる話には違いない。今回は厚生労働省が2018年2月に発表した、賃金関連の情報を調査集積した結果「賃金構造基本統計調査」の最新版「平成29年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」の報告書を基に、都道府県別の平均的な、残業時間に相当する超過実労働時間数について確認する。

次に示すのは月あたりの平均超過実労働時間数。これは就業場所の就業規則などで定められた所定労働日における、始業時刻から終業時刻までの時間「以外」に実際に労働した時間数、及び所定休日において実際に労働した時間数を指す。

また今件はフルタイム労働者を指す「一般労働者」を対象としたもので、フルタイムなら契約社員や派遣社員も該当する。ただしパートやアルバイトは「一般労働者」では無く「短時間労働者」なので、検証対象外となる。

産業形態によって大きな差異が生じるが、今回はすべての産業を合わせた総合値を見ていく。当然、残業が多い産業での就労者比率が高い地域の方が、残業時間数は多くなる。また、男女差が大きく出る値でもあるため、男女別々にグラフを生成する。

↑ 超過実労働時間数(2017年、一か月あたり、時間、男性、一般労働者)
↑ 超過実労働時間数(2017年、一か月あたり、時間、男性、一般労働者)
↑ 超過実労働時間数(2017年、一か月あたり、時間、女性、一般労働者)
↑ 超過実労働時間数(2017年、一か月あたり、時間、女性、一般労働者)

まず男性。全国平均では16時間/月。大よそ1日あたり1時間の残業。最も残業時間が長いのは愛知、三重、兵庫の20時間。次いで群馬の19時間が続く。他方最も短いのは高知で11時間。意外にも東京も13時間で少ない領域に含まれる。地域別傾向は特に見られないが、大都市圏そのものでは無く、その周辺・近郊都市圏でやや高めのように見える。

一方女性だが、最長時間は栃木、東京、愛知の10時間。最短は秋田、山口、徳島、愛媛、高知、宮崎、鹿児島の6時間。例えば高知は男性でも最短、愛知は最長に位置しており、男女ともに同じような動きを示していることから納得できる結果といえるが、東京は男性では短い領域である一方、女性は最長を計上しており、奇妙さを覚えるものがある。

女性は男性と比べて残業時間そのものが短めなために、一層地域別傾向はつかみにくい。あえていえば関東と近畿圏でやや長い傾向があるように見受けられる。

今調査は事業所に対して行われた調査の結果を元に集計しているため、いわゆる「サービス残業」の類は今件各値には反映されていない。地域別にサービス残業の長さ、比率が異なるか否かまで確認できる統計データが無く、推計による実残業時間の算出もかなわない。その点には注意をしておくべきである。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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