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パート・アルバイトは増加継続…非正規社員の現状をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ スーパーのパートも非正規社員としてのもの。その実情は。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・直近の2017年ではパート・アルバイトは前年比で11万人の増加。正規社員は56万人の増加。

・2017年時点で雇用者全体の62.7%が正規社員、37.3%が非正規社員。

・非正規社員の増加は中堅層の女性や男女高齢層で大きなものに。

労働市場に関わる状況の変化において、注目を集めている事象の一つが非正規社員問題。先日総務省統計局から発表された労働力調査の2017年分の結果を基に、現状を確認していく。

まず最初に取り上げるのは、雇用形態別で区分した、非正規の職員・従業員(非正規社員、非正社員)に関する直近と近年の人数推移。直近分となる2017年においては、景況感を受けて企業側による労働リソースの需要が拡大する一方で、コスト増への懸念や必要な労働力の柔軟化、閑散期と繁盛期の差が大きい第三次産業比率の拡大の動きが見受けられる。また主婦をはじめとした就業時間の柔軟性の高い点を評価した上での需要拡大と、正規雇用が困難な事例が増えている昨今の労働市場の状況は継続。

結果としてパート・アルバイトと派遣社員は増加、前年2016年では前年比でプラスマイナスゼロだった契約社員・嘱託も増加する形となった。ちなみに直近2017年では前年に続き、正規社員数も前年比で増加の動きを示している。

さらに詳しくは別の機会で触れるが、団塊世代の定年退職や早期雇用退職制度適用者による非正規社員としての再雇用の機会が多数創出されている。これもまた、非正規社員数全体を大きく底上げする形となっている。

↑ 雇用形態別、非正規の職員・従業員数(万人、2017年)
↑ 雇用形態別、非正規の職員・従業員数(万人、2017年)
↑ 雇用形態別、非正規社員数の推移(万人)
↑ 雇用形態別、非正規社員数の推移(万人)
↑ 雇用形態別、職員・従業員数の対前年増減の推移(万人)
↑ 雇用形態別、職員・従業員数の対前年増減の推移(万人)

派遣社員の減少は「派遣叩き」の影響が出始め大きく値を減らした2009年、そして2010年と続き、ようやく2011年にはプラスマイナスゼロの領域まで回復した。この期間には同時にパート・アルバイト、契約社員・嘱託が増えているところから、単に労働力が過剰で非正規社員が減らされたのでは無く、「派遣社員がバッシングで雇用し難くなったのなら、同じような作業はアルバイトや契約社員に任せよう」との意図を企業が実践していたことが分かる。

2013年では労働力そのものの不足に加え、景況感の回復に伴い労働市場の活性化が生じ、さらに団塊世代の定年退職を受けて高齢層の非正規雇用希望者としての供給が大幅増加。その上、それら高齢層の離職の穴を埋めるための非正規雇用としての求人も増え、いずれの形態でも非正規社員は大きく増加した。ただし雇用者全体数は微増しているが、正規社員は減少し、その分非正規社員は増加していることから、労働の様式そのものの変化(非正規化へのシフト化)が進んでいる現状が改めて見て取れる(正規社員の高齢者が定年退職して非正規として再就職するのだから当然の話なのだが)。

2014年においても、2013年ほどの大幅増加では無いものの、非正規社員は増加を示し、雇用者全体の数を底上げしているが、代わりに正規社員は減少している。詳しくは別の機会で精査するが、年齢階層別に詳細を見ると、若年層では正社員数が増え、中堅層以降では正社員は減り、それ以上に非正規社員数が増加していたことから、中堅層以降、とりわけ高齢層の退職と非正規としての再就職、さらには中堅層以降の女性によるパート・アルバイトによる就労機会の増加が、非正規社員数の増加をもたらした主要因と見ることができる。

2015年以降は正規社員でも前年比で増加の動きを示しており、同時に非正規社員も増加を継続している。労働市場の回復ぶりや内部構造の変化に加え、企業側の求人内容の変化が生じている実態がつかみ取れる。

2017年時点では雇用者全体の62.7%が正規社員、残りがパートや派遣、契約などから成る非正規社員との計算になる。もっとも非正規社員は、兼業主婦によるパート・アルバイトが多分に含まれていることに注意しなければならない。各算出値はあくまでも老若男女すべてを合わせた結果である。

↑ 雇用形態別、雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)
↑ 雇用形態別、雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)

このグラフを見ると、単純に非正規社員の割合が増加の一途をたどっているように見える。しかし、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正社員数は横ばいか微減」「非正規社員は増大」との構図、言い換えれば企業は「景気拡大期は非正規社員の増加で、業務拡大に対応していった」のが大きな流れであることが分かる。

現在は景気後退・低迷期を抜け出て景況感の回復のターンのさ中にあるともいえるが、労働市場の内部構造の変化は続いており(上記に挙げた第三次産業比率の増加もその一要素)、効率的な企業経営の中で正社員が必要とされるポジションが増えることは無く、柔軟性に富んだ非正規社員の需要が増加している。ただし非正規社員枠ではまかないきれない職務領域の拡大や、非正規による求人では人的リソースを埋めきれない状況が増え、それとともに正規社員の求人も増加し、就業できるケースが増えている(労働市場の回復過程は概して「非正規雇用の増加」「正規雇用の増加」の順となる)。

また、定年退職者の再雇用や早期退職制度の適用、リストラによる中途退職者の増加も、昨今の労働市場においては重要な要素の一つ。繰り返しになるが、非正規社員の増加数では若年層よりはるかに多い中堅層以降の増加が確認されている。

↑ 年齢階層別、非正規社員の対前年増減数(2017年)(万人)
↑ 年齢階層別、非正規社員の対前年増減数(2017年)(万人)

とりわけ高齢者と女性中堅層の増加が著しく、小売業などでの女性のパート・アルバイトの需要、定年退職者の再雇用が大幅に増加したものと見れば道理は通る。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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