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「自国では満足できるほどに民主主義が機能しているか」世界の人に聞いてみた

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 民主主義国家の代表国である米国でも実は…(写真:アフロ)

国民の意見を直接・間接的に吸い上げて政治を執り行う社会的な仕組みである民主主義。今では世界の多くの国で採用されているが、人々はこの仕組みに満足しているだろうか。米国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した調査報告書「Globally, Broad Support for Representative and Direct Democracy」(※)からその実情を確認する。

次に示すのは「回答者の母国において民主主義が満足できるほどに機能しているか」と尋ね、「大変満足」「満足」「不満」「大変不満」の4選択肢を提示して回答者の認識を選んでもらい、前者2つを満足派、後者2つを不満足派として計算している。

↑ 自分の国では民主主義が満足できるほどに機能しているか(「大変満足」「満足」「不満」「大変不満」の4選択肢。「大変満足」「満足」を満足派、「不満」「大変不満」を不満足派)(2017年春)
↑ 自分の国では民主主義が満足できるほどに機能しているか(「大変満足」「満足」「不満」「大変不満」の4選択肢。「大変満足」「満足」を満足派、「不満」「大変不満」を不満足派)(2017年春)

全体では46%が満足、52%が不満足。意外なほどに不満足派が多い。地域別に見るとアジア地域がもっとも満足派が多いが、それでも韓国は69%もの人が不満足派。これは調査当時同国が朴槿恵・前大統領の汚職事件の渦中にあったのが原因と考えられる。アフリカ地域では民主主義が満足できるほどに機能しているとの認識が強い。しかし南アフリカやナイジェリアでは不満を持つ人がやや多め。

北米では米国の満足派の値が意外に低い。これは現大統領のトランプ氏就任以降顕著化した、リベラル派(民主党)と保守派(共和党)の対立が尾を引いているものと考えられる。ヨーロッパではスウェーデンやオランダ、ドイツでは満足派が多いが、フランスやイタリア、スペイン、ギリシャのような経済的に難儀している国で不満足派が多いのが目に留まる。

地中海沿岸や南米では不満足派が多い。特にレバノンやメキシコでは満足派が1割にも満たない結果が出ている。

報告書ではこれらの傾向について、党派性が結果に大きな影響を与えていると言及している。具体的には自分が支持する政党が政権を担っている場合は民主主義が機能している、満足していると考え、自分が支持しない政党だった場合には民主主義は機能していない、不満足であると認識する次第。

次に示すのは支持政党が政権を担っているか否か別で回答を仕切り分けし、満足派の差異を算出し、プラスが算出された国、つまり自分の支持する政党が政権を担っている人の方が、そうでない人よりも満足派の回答率が高い国を、その差も併せ列挙したもの。

↑ 自分の国では民主主義が満足できるほどに機能しているか(「大変満足」「満足」「不満」「大変不満」の4選択肢。「大変満足」「満足」を満足派、「不満」「大変不満」を不満足派とし、その満足派の値)(その国の現行政権の支持派による値から非支持派の値を引いた結果、ppt)(2017年春)
↑ 自分の国では民主主義が満足できるほどに機能しているか(「大変満足」「満足」「不満」「大変不満」の4選択肢。「大変満足」「満足」を満足派、「不満」「大変不満」を不満足派とし、その満足派の値)(その国の現行政権の支持派による値から非支持派の値を引いた結果、ppt)(2017年春)

報告書ではヨーロッパの国々で特に差異が大きく出る、つまり政権を担っているのが支持政党か否かで、民主主義が満足できるほどに機能していると認識しているか否かの違いが生じると説明している。ベネズエラのような特殊事情の国は別にしても、その傾向は強い、むしろ先進国と呼ばれる国々で多いように見える。

米国が好例だが、政治的意識が高まると、自分自身を民衆の代表と認識し、その意志が反映されていない政治体制は間違っている、民主主義に反しているとの考えが強くなるのかもしれない。

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※Globally, Broad Support for Representative and Direct Democracy

世界38か国に対して2017年2月から4月においてほぼ同時に実施されたもので、各国の調査対象母集団数は、RDD方式などで選択された18歳以上を対象とする各国約1000人ずつ。調査方法は対面調査や電話インタビュー形式。それぞれの国の国勢調査の結果を元に年齢や性別、学歴、地域などの各属性によるウェイトバックが行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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