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平均年齢は64.4歳…何歳までお金をもらえる仕事をしたいか、その実情をさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
働く高齢ビジネスマン。何歳まで収入を伴う仕事をしたいと考えているのか(写真:アフロ)

何歳までお金もらえる仕事をしたいか

内閣府は2024年3月に「生活設計と年金に関する世論調査」(※)の調査報告書を発表した。この報告書を基に、「この年齢までは収入を伴う仕事をしたい」とする年齢の実情を確認する。

次に示すのは何歳まで収入を伴う仕事をしたいか・したかについて、年齢区切りで選択肢を提示して答えてもらった結果を基に、各属性別の平均値を算出したもの。「したいか」ではなく「したいか・したか」となっているのは、回答者がすでに職から離れて引退している場合もあるため(年齢階層別に引退したか現役かは問われていない)。例えば男性は65.8歳と出ているので男性全体では65.8歳まで収入を伴う仕事をしたいと考えている、あるいは仕事をしていたことになる。この仕事には正社員、非正規社員の別を問わない。またボランティア活動などのような対価が原則発生しない仕事は該当しない。

↑ 何歳まで収入を伴う仕事をしたいか・したか(就労経験者・希望者限定、概算平均、歳)(2023年)
↑ 何歳まで収入を伴う仕事をしたいか・したか(就労経験者・希望者限定、概算平均、歳)(2023年)

全体平均では64.4歳。これが男性では65.8歳、女性では63.2歳となり、男女間で2.6歳分の差が開くことになる。男性は世帯の大黒柱となる場合が多いことから、少しでも長く働き続け収入を得たいとの思いが強いのだろう。

年齢階層別では男女とも年齢が下ほど低く、年が上ほど高い値となる。もっとも70歳以上の場合、該当属性の回答者はすでにその年齢を超えているため、平均値の上では原則的に「収入を伴う仕事をしていた」ことになる。

なぜその年齢まで働きたいのか、その理由

それではなぜその年齢まで働きたい、働いていたのか、その理由について、例示した選択肢の中からもっとも当てはまるもの1つを選んでもらった結果が次以降のグラフ。選択肢の並びは質問票に書かれている順番をそのまま用いている。

↑ その年齢まで働きたい・働いていた理由(択一回答、男女別)(2023年)
↑ その年齢まで働きたい・働いていた理由(択一回答、男女別)(2023年)

もっとも多くの人が回答した理由は「生活の糧を得るため」で75.2%、次いで「いきがい、社会参加のため」で36.9%。何かが足りないためとの観点では両者同じだが、前者は生活費が、後者はいきがいが足りないという次第。続いて「健康にいいから」の28.7%、そして「時間に余裕があるから」が14.6%で続く。

男女別では上位陣はすべて女性の方が高い値で、最上位の男性の方が高い値の項目は「定年退職の年齢だから」となる。女性は専業主婦でもともと定年退職が無い人も多いのだろう。

男性は生活の苦しさへの意見が女性より高い値で、女性はゆとりを求めた上での仕事との意見が男性より高い値。意外なのは社会との繋がりの観点で男性よりも女性の方が高い点。

これを年齢階層別に区分したのが次のグラフ。

↑ その年齢まで働きたい・働いていた理由(択一回答、男女別・年齢階層別)(2023年)
↑ その年齢まで働きたい・働いていた理由(択一回答、男女別・年齢階層別)(2023年)

男性では「生活の糧を得るため」は40代まで年齢とともに漸増し、40代をピークとして以降は漸減する。女性でもピークの年齢階層は同じだが、70歳以上以外で男性よりも高い値。40代でピークとなるのは、住宅ローンや教育費など、家庭内で金銭問題に頭を抱える人が多いからだろうか。女性の方が、「生活の糧を得るため」に働きたいとする認識は強いのだろう。

「いきがい、社会参加のため」は男性ではさほど違いは生じないが、女性では60代をピークとするまで、漸増していく。収入を伴う仕事に対するいきがいは、女性では定年退職に至るまで漸増していくようだ。「健康にいいから」も男性より女性の方がおおよそ高い値が出ており、男性より女性の方が、収入を伴う仕事へさまざまな意義を見出しているようにも見える。

一方で「職場に頼まれて」は70歳以上で男女ともに2割を超える。「(将来は)職場に頼まれて働きたいと思っている」という回答はあまり自然ではないので、回答者のほとんどは「職場に頼まれて現在働いている」「職場に頼まれてかつて働いていた」のいずれかだろう。興味深い話ではある。経験や人脈を買われているのか、後継者が育っていないのか。

「時間に余裕があるから」は収入を伴う仕事でなくともよく、「定年退職の年齢だから」は避けようがない。「いきがい、社会参加のため」「健康にいいから」は内面的に「ついでにお金が得られるから」も含まれているものと考えられる。「いきがい、社会参加のため」「健康にいいから」はお金を必要としないのであれば、ボランティアなどでも十分に充足できるからだ。他方「生活の糧を得るため」は切実な問題。この選択肢の値が他と比べて高い実情に、現状の高齢者生活の厳しさを認識する人も少なくあるまい。

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※生活設計と年金に関する世論調査

2023年11月2日から12月10日にかけて日本国内に居住する18歳以上の日本国籍を持つ男女から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人に対し、郵送法によって実施されたもので、有効回答数は2833人。男女比は1336対1497、年齢階層比は18~19歳52人・20代227人・30代309人・40代400人・50代498人・60代540人・70歳以上807人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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