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主要テレビ局の直近視聴率をさぐる(2018年3月期上半期)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 家族団らんに欠かせない存在のテレビ。その視聴率は(写真:アフロ)

全日もゴールデンも日テレがトップ

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が(世帯)視聴率。キー局における最新となる2018年3月期上半期の視聴率を確認する。

各種データはTBSホールディングス・決算説明会資料集ページ上に2017年11月2日付で発表された「2018年3月期第2四半期決算資料」(第2四半期とは上半期のことである)からのもの。なお「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、良い機会でもあるので合わせてグラフに収める。

↑ 2018年3月期・上期視聴率(2017/4/3~2017/10/1、週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)
↑ 2018年3月期・上期視聴率(2017/4/3~2017/10/1、週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているが、他の4局と比べれば放送内容の特異性(番組構成の上で経済関連の比率が高い)上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが一段低く、TBSとテレビ朝日、NHKがやや低め、日本テレビが高めのポジションについており、3階層状態となる。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19時から22時)とプライムタイム(19時から23時)。その時間帯で10%超えはNHKでゴールデンタイムのみ、そして日本テレビがゴールデンタイムとプライムタイム双方となる。

NHKを除くとゴールデンタイムとプライムタイムの視聴率の差はあまり出ておらず、テレビ朝日以外はゴールデンタイムの方が若干高い程度。他方NHKに限れば大きな差異が生じている。つまりNHKは他局と比べ、プライムタイムが弱いと判断できる。

これは以前からの傾向で、ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、その違いとなる時間帯、22時から23時における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっていることになる。もっともこれは各テレビ局の番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方のない面もある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると、トップは日本テレビ、次いでNHK、そしてTBS、テレビ朝日、さらにはフジテレビが続く。プライムタイムで比較すると、日本テレビがトップにつき、次いでTBS、テレビ朝日、NHK、フジテレビの順となる。NHKのプライムタイムでのいまいち度合いは直上にその理由を記した通りだが、プライムタイムではテレビ朝日がキー局で唯一、ゴールデンタイム以上の値を示しているのは意外に見える。22時から23時の時間帯で放送される各局の人気番組のすう勢が、そのままこの差に表れるともいえる。テレビ朝日は主に「報道ステーション」が22時から23時の視聴率をけん引しているのだろう。

前年同期からの変化を確認

視聴率の変移を前年同期(2017年3月期上半期)との比較で表すと次のようになる。

↑ 2018年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)
↑ 2018年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)

元々テレビの局単位での視聴率は、特番や特定の番組、さらにはイベント的な放送に大きく影響されるところがある。例えば社会現象を引き起こすほどの人気を博したNHKの「あまちゃん」、TBSの「半沢直樹」が好例。

今期では特にNHKの下落ぶりが目に留まる。下げ幅が一番大きいのがゴールデンタイムであることから、19時から22時台の時間帯における番組が足を引っ張ったものと推測されるが、これは前年同期においてさまざまなムーブメントを起こした大河ドラマの「真田丸」や2016年8月に開催されたリオデジャネイロオリンピックが視聴率を大きくかさ上げし(ゴールデンタイムで前年同期比プラス1.6%ポイント)、その反動が生じた結果によるもの。

前年同期の好調さからの反動による下げとの事情がなく、大きな下げ幅を示したテレビ朝日。特に全日では変動がなく、ゴールデンタイムとプライムタイムで大きく下げていることから、主軸となる番組のつかみが今一つだったことがうかがえる。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの下げ幅が大きいことから、とりわけ22~23時台の番組がネックとなっていることが推測できるが、上記にある通りこれもまた「報道ステーション」の可能性が高い。なぜ下がるような事態となったのか、昨今の放送内容を思い返せば分かるかもしれないが。

下げ幅こそ大きくはないものの、中長期的な低迷が続いているフジテレビ。持ち株会社のフジ・メディア・ホールディングスの経営は堅調で、都市開発事業では大きな利益を上げている(直近半期では前年同期比で利益を大きく上乗せしている)。肝心の放送事業では売り上げは落ち(≒視聴率の低迷で広告費が減退)し、番組制作費や販管費の削減でも追いつかず、減益となってしまっている。

経費を投入すれば良いもの、視聴率が取れる番組を制作できる確約はないものの、経費削減をすればそれだけタガが緩み、品質は劣化せざるを得ない。その影響は因果関係としての数量化は難しいものの、モノの道理としては納得のいくものに違いない。現状ではマイナススパイラル状態に陥っているようにも見える。

この数年は各局ともターニングポイントを迎えている気配を示している。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が継続している。単発のヒーロー的番組やイベントのおかげで一時的な盛り返しを見せることはあっても、根本的な体質、視聴者への姿勢の部分がしっかりとしていないと、次第に低迷さが顕著になる。

中にはそのドーピング的効果に味を占め、魅惑に取りつかれ、繰り返しその効果を望んでいるような行動を示す局も見受けられるが、「待ちぼうけ」の歌にある通り、常に切り株にうさぎがやってくるとは限らない。それを期待するどころか、切り株を増やすべく樹の伐採を繰り返し、かえって地道な努力の成果である果実の収穫量を減らすような動きすら見受けられるのは残念な話(昨今の「報道」番組では特にその傾向が見受けられる)。

4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ一方、その力に翻弄される面も見せている。そのような状況下で、各局がいかなる姿勢を見せ、その姿勢が視聴率の動向にいかなる成果として結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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