「もし完全自動運転車が普及したら」米国の人達の思いをさぐる
現状では安全性に不安を覚える人が多い完全自動運転車だが、将来はその信頼性も向上し、一般に販売されるようになるだろう。その未来に向けて米国の人達はどのような思いを抱いているのだろうか。米国における認識を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査結果「Automation in Everyday Life」(※)を基に確認していく。
今調査対象母集団では完全自動運転車に乗ってみたいと考えている人は44%に留まっている。安全性への不安が大きな懸念となり、乗りたくないとの意見が多い。
それでは完全自動運転車が普及するような時代が来たら、自動車の事故は減るのだろうか、それとも増えるのだろうか。どのように考えているのかを尋ねた結果が次のグラフ。
減るとの考えは39%、増えるは30%、変わらないは31%。いくぶん減るとの認識は多いものの、実質的には増える・減るの意見は均衡しており、予想がつきにくい状態であるのが分かる。
それでは完全自動運転車(運転手無し)の一般社会への展開に際し、どのようなルールが必要と考えられているのか。安全性の観点で仮のルールを設定し、それに賛成するか否かを強い賛成・賛成・反対・強い反対の4択から、自分の考えに一番近いものを選んでもらった結果が次のグラフ。
「学校の近所などは完全自動運転車(運転手無し)は走らせないようにする」は現実性の問題や便宜性からいくぶん反対派の意見も多いが、それでも7割近くは賛成派。専用レーンでのみの走行は8割強、完全自動運転車でも運転手無しの車両は採用せず、運転手を常に乗車させ、必要時には運転手が手動運転できるようにするとの意見は9割近くが賛成派。
現状では完全自動運転車の問題は、その安全性が信頼に足るレベルに達していない点にありそうだ。見方を変えれば安全性を十分に確保できれば、一気に普及する可能性は否定できない。
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※Automation in Everyday Life
調査専用の調査対象母集団(RDD方式で選択された固定電話・携帯電話を有するアメリカ合衆国の18歳以上を対象に選択)を対象に2017年5月1日から15日にかけて実施されたもので、有効回答数は4135人、うち就業者は2510人。国勢調査の結果を基に性別、年齢、学歴、人種、支持政党、地域、就業中か否かなどの属性でウェイトバックが実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。