技術の発展は自分の仕事にいかなる影響を及ぼしているのか、米国就業者の認識を学歴別にさぐる
新技術の開発と普及により、仕事は大きな変化を遂げる。新技術は仕事にどのような影響を与えていると人々は考えているのか、プラスになると実感しているのか、それとも足を引っ張るとの認識を持つのか。米国事情を学歴別に、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査結果「Automation in Everyday Life」(※)を元に確認する。
次に示すのは昨今ではごく当たり前に普及している、あるいは浸透過程にある新技術に関して、その導入が自分の仕事に貢献している、さらには自分自身の昇進機会にプラスとなるか否かを尋ねた結果。選択肢には「プラス」「マイナス」「影響なし」が用意されており、グラフにはそのうち「プラス」と回答した人の値が示されている。たとえばワープロや表計算ソフトで高卒以下は45%とあるので、就業者のうち高卒の人は45%の人が、ワープロや表計算ソフトがあるおかげで、自分の仕事が楽になったと感じたり、自分自身の昇進機会には有益であると判断している。
大よそグラフの横軸項目の並び順に有益判断が高くなっている。もっとも工業用ロボットやカスタマーセルフサービスは、利用できる業態が限られているため、その存在が自分の仕事にプラスとなるとは思えない人も多分に及ぶだろう。例えば漫画家が、工業用ロボットを導入しても仕事が楽になるとは思えない。
各技術の中では身近な、仕事だけでなく私用でも大いに役立つものが有益だと思われている率は高い。他方、学歴別では明確に、高学歴ほど有益だとの判断が高い結果が出ている。
この傾向はいくつかの解釈ができるが「高学歴ほど新技術を大いに用いる業態で働いている」「高学歴ほど新技術を有効に使いこなし、その便益を享受している」などが考えられる。恐らくはそれら複数の結果の積み重ねによるものだろう。私用でも多数の人が用い、その便益を満喫しているスマートフォンでは、低学歴でも高い値、特に高卒ではワープロや表計算ソフトよりも高値をつけているのが良い証ではある。要は自分自身が使いこなせなければ、その業態で有益だとしても、回答者自身にはプラスにならない次第。
高学歴ほど新技術の便益をより大きく享受している(と自覚している)。この傾向は新ぎゅつ全体へのとらえ方でも明らかになっている。
高い学歴を持つ≒新技術を使いこなせる能力を持つ、新技術が使える業態で働いている人ほど、新技術で昇進機会を得られると自覚し、また仕事の活力が沸き上がると実感している。
技術の進歩でそれを使える人と使えない人の間に生じる技術格差から生じる隔たりは、あらゆる場面で生じえる。身近なところではスマートフォン、さらにはインターネットの利用が良い例。仕事におけるやり甲斐や昇進機会もまた、同様なのだろう。そしてこれは米国に限った話ではないのかもしれない。
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※Automation in Everyday Life
調査専用の調査対象母集団(RDD方式で選択された固定電話・携帯電話の電話を有するアメリカ合衆国の18歳以上を対象に選択)を対象に2017年5月1日から15日にかけて実施されたもので、有効回答数は4135人、うち就業者は2510人。国勢調査の結果を元に性別、年齢、学歴、人種、支持政党、地域、就業中か否かなどの属性でウェイトバックが実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。